à la recherche de l'amour 


 ~愛を探すひと~番外編 ③ 



 書き下ろし 




前回の番外編その②はこちら。





 今、アメブロの方で、この小説の本編長編作(à la recherche de l'amour ~愛を探すひと~番外編 ③書き下ろしから半年間連載していました)を、改正、加筆修正して、イラストも描き下ろしで描きまして、連載中です。




 恋愛小説として、ありがたい事にランキングも最高8位まで上がり、本当に感謝しております(._.) 





 その!



 à la recherche de l'amour ~愛を探すひと~番外編 ③ 



 今回も書き下ろしで、 



 スーパーモデルのオスカルと、savon職人のアンドレが帰って来ました💖 



 ストーリーは恋人同士になった頃の、2人の蚤の市での1日です💖 


 私も蚤の市は、高校生から最近までずっと通っていました。

 和食器は、プロに付いて色々教えてもらったり、海外のアンティーク雑貨や、アクセサリーも昔は集めていました💖



大好きなカオスな場所です💖


 私も体験した蚤の市での1日を、


 ラブラブなAO2人が、のんびりとした空気感と、世間知らずで、ちょっとずれてるオスカルと、オスカルの為なら何でもしたいアンドレのストーリーをちょっと書きたくなり、



番外編その③(笑) 

として、今回、書かせていただきます。




 では、どうぞ〰️✨💖 



 ~🌹~🌹~🌹~🌹~🌹~🌹~🌹~🌹~






本日は日曜日。 



 パリは快晴。



 昨日、土曜日は、パリ14区にある 


ヴァンヴの蚤の市に出店した。


 ヴァンヴは、他の蚤の市と違い、様々な高級ブランド品やビンテージの品揃えが豊富で、客層も富裕層が多く、富裕層狙いのヴィンテージな品がたくさんあって、品質が良い。 



 アンドレのキャンピングカーのsavonの店bouquet de savon も、高級な材料で作った、値段の高めのsavonが人気だった。 



 今日は、サントゥアン蚤の市(クリニャンクール蚤の市)に出店。庶民的で解放感のある蚤の市だ。人で、ごった返している。


 カオスな蚤の市。


 ヴィンテージなアクセサリーや、帽子、アンティークな洋服や、美しい生地。他にも魅力的な品々が豊富に揃っている。


 食べ物や飲み物も豊富だ。



 6月の気持ちのいい日曜日。


 パリで一番大きな蚤の市が朝から始まっている。 



 アンドレは、その一番端に、移動式店舗のキャンピングカーのドアを開け、作品を並べながら、顧客が来ればオーダーされた商品を渡す。



 チョークアートの店名看板を飾り、丸テーブルを2つ店の前に置き、椅子は丸椅子4つ。 



 テーブルは綺麗なイエローと、パープルの布を敷き、少し品物をディスプレイする。




 そうこうするうちに、時間がきた。



 「忘れてた、お湯沸かさなきゃ」

 アンドレは、慌てて電気ケトルを探した。



 「アンドレ」

 キャンピングカーの中から、小さな声が聞こえる。変装しているスーパーモデルのオスカル・フランソワだ。


 先月から、ひょんな出逢いでアンドレのアパルトマンに居候している。 


 そのまま2人は、出逢いからすぐ、意気投合し信頼関係を作り上げ、まだ進展はしないが、とある事情で一緒のベッドで寝ていた。



 それが、全く違和感がない2人の関係。




 出逢って、そんなに日にちも経っていないのに。 

この安心感は、一体なんだろう? 


2人は、そう思いながら楽しく日々を笑いながら過ごしていた。



 ぼんやりオスカルに見惚れていると 

 「アンドレ」と、もう一度オスカルが呟く。「ん?なに?」

 「お湯はもう沸かしてる」

 「ああ!ありがとう!助かった!」

 「ケトルくらいで、大袈裟だな」 


 そんな口振りで少し顔を上げるオスカル。

 でも。


 いつも、どんな時も、笑顔で小さな感謝も逃さない彼の性格が、大好きなオスカル。


 初めてみる人種だと最初は不思議に思っていたが、ささやかな言葉で、相手を幸せな気持ちにさせる彼の性格は、素晴らしいと思っていた。



 自分が身を置く世界(モデル業界、芸能界)には、そんな人間、いなかったから。



 彼の店は、昼から忙しくなる。


 顧客は結構、遠方からも、待ちに待って来て下さるのだ。ありがたい。 

と、オスカルが沸かしてくれたお湯でハーブティーを作る。 



 「なあ、アンドレ」 


 「なに?…あ!サングラスは掛けてくれよ?」言われたオスカルが、Tシャツに挟み込んでいたサングラスを慌てて掛ける。


 「オスカル、どうかした?」 


 「今日は、蚤の市で買い物してもいいか?」


 オスカルは、キャンピングカーの中から、黒のスパンコールのがま口バッグをチラチラ見せて、アンドレを見つめる。


 「ウィッグもちゃんと持ってきた?」


 アンドレが聞く。オスカルが頷いて、アンドレの顔をじぃっと見つめながら、ブラックのボブウィッグを即座に被った。 


その仕草が少女のようで、可愛い。

 「それなら大丈夫だよ。あまり遠くに行かないように。気をつけて行っておいで」

 「アンティークアクセサリーの店と、この服に似合うような、スパンコールのバッグを探してくる」 


 今日のオスカルのワンピースは、刺繍レースの透け感ある某ブランドのワンピースで、中に黒いスパンコールのタンクトップと、黒いスキニーパンツ、そしてヒール15センチのレザーブーツを履いていた。 



 目立つ格好はやめた方がいい、と忠告したのに、蚤の市に行く時は、しっかりおめかしをしてくる彼女。

 さすがはスーパーモデル。 


 「いやいや。バレなきゃいいけど…」

 蚤の市の人混みの中に消えていく変装したオスカルを見送った。 




 「アンドレさ~ん!!来たわよ~!オーダーしたsavonあるかしら?」 

 常連客の女性が声を掛けてきた。

 「おはようございます!出来てますよ、マダム」 

 アンドレは、慌ててキッチンカーに戻って行った。 


 オスカルと言えば。15cmの高さのレザーブーツを履いているので、人混みの中で、頭ひとつ上に抜け、黒いボブウィッグを揺らしながら、まるでバレーボール選手の休日のように見えた。 



 「お姉さん、背が高いねえ」

 出店しているおじさん、おばさま達から声を掛けられる度に 


 「merci♥️」と、

真っ赤なルージュの口元が、にこりと微笑む。




 色んな所から、客寄せの声と、いい香りがしてくる。




 アンティーク雑貨のブースに足を進めていたオスカルのお腹が、いい香りにつられて鳴いた。


 「お腹空いたな…。でもランチはアンドレが作ったサンドウィッチがあるけど……。ま、いいか。軽く食べようか…」 



 オスカルは、いい香りのするキッチンカーに足を向けた。見ると、甘く美味しそうなスイーツが美しく並べられている。しかも、初めて見るような、それでいて、懐かしいような香り。


 「マドモアゼル。どれにしましょうか?」


 キッチンカーの同世代の女性がオスカルに声を掛けた。


 「どれも美味しそうですね。一人じゃ選べられないくらい。彼にもあげたいな」

 「まあ、それは嬉しいわ!!じゃあ、お連れの方はいるの?」 

 「savonで出店しています」

 「あら、もしかして…アンドレさん?」

 「ええ、そうです」

 「私もオーダーしているのよ。蚤の市では私もキッチンカーで販売しているから、買いにいけないから、ネットオーダーしているの」 

 「そうなんですか?アンドレに伝えます。喜びますよ…ああ、これ珍しいのですか?とても美味しそう」 

 「ああ、これ?今、流行りのクルッキーよ。クロワッサンとクッキーを一緒にしたような食感で、今、人気なの。アンドレさんにも持って帰る?お安くしとくわ」 

 「いいんですか?…ありがとう!」

 「いいのよ。いつもお世話になってるんだし。あ、これも気になる?」 



 オスカルは、もうひとつのスイーツをしゃがみこんで見ていた。 

 「美味しそうでしょう?」

 「…あ…。すみません。これも気になってしまって…」 

 「こっちは、フランキーと言って、フラン(カスタードクリーム)とクッキーのスイーツよ。最近では、パリっ子から大人気なの。これもアンドレさんに食べてもらう?」 


 オスカルは、思い切り首を縦に振った。


 珍しいスイーツは、2人とも大好きだったから。


 2人分として多めに買い込んだ紙袋を抱き締め、

 オスカルは、衣料雑貨のブースに足を向けた。




 狙いは、スパンコールのバッグだ。




 が。その前に。目の前の出店スペースに、気になるものが2つあった。



 剣を持った青獅子の紋章が、ビーズで丁寧かつ、美しく施されたかなり古い総ビーズの小さなバッグ。 


チェーンは、純金で鎖のようにデザインされている。


 オスカルは、ふと思った。


 (剣を持った青獅子…どこかで見たことがある…どこだろう…懐かしいような…昔の記憶か…?よく思い出せない昔の記憶の中にあるような…気がする…) 


 そして、そのビーズバッグの奥に、 

20cm四方の、くすんだ小さな絵があった。 



その絵の中にいる子供たちが、オスカルを見ているような気がした。



 絵の中には、ウエーブした軽やかなブロンドが、首もとまで伸び、薄桃色の肌に、さくらんぼの様な可愛らしい唇をした、サファイアの瞳をした子と、


 その隣には、癖毛と瞳がキラキラした、黒髪の子。まるで、天使のように。少し微笑みながら、寄り添う2人。さながら、双子座のカストルとポルックスのような。



 (黒髪の子……。アンドレに似ている…。子供の頃のアンドレはこんな感じの子だったのかも…)



 「お嬢さん。その絵が気に入ったのかい?」

 声を掛けてきたのは、その店の店主おぼしき小さくて可愛い老婆だった。 

 オスカルは顔を上げた。 


 「あ…。可愛い絵ですね」 

 それはねえ、と老婆は腰を上げた。

 「うちに代々伝わってる絵でね、18世紀位に、さる大貴族から頂いた絵らしいんだけど…。

うちも、家族がもうみんないないし、身の回りの整理をしようと思ってね、

今日はその時代からずっと管理してきたものばかり売ってるんだよ。



その絵は、ブロンドの子が貴族のご令嬢だそうだけど、男の子の服を着てるだろう?不思議な絵なんだよねえ。隣の子は、うちの親族の男の子で、その貴族の屋敷に引き取られた平民の子さ。


絵の裏を見たら、オスカルとアンドレの友情に捧ぐ、と書いてあったよ」 


 「オスカルとアンドレ……?」


 オスカルは、心臓がドキドキしてきた。同じ名前の2人…。そして、私たちの子供の頃の顔に似ている…?なんだ?これは…?18世紀? 


どういう事…?オスカルは、もう1つ気になっていた、剣の青獅子のビーズ獅子を施した古い小さなバッグについても聞いてみた。 


 「マダム…。これも、その大貴族から頂いたものですか?紋章が貴族の…ですよね?」


 「ああ、そうだよ。きっとその大貴族様の奥様が愛用されていたバッグかもしれないねえ。チェーンも純金だし。それは高いよ?」 

 と、老婆が指で数字を出した。純金チェーンだから、そうだろう。 




 「マダム。その絵と、このバッグを買います。値段はいくらですか?」 



 「え?両方かい?じゃあ、まけとくよ。これでいいかい?」

 指で数字を見せた。 


オスカルは即座にオッケーをして、スパンコール財布に、ぎゅうぎゅうに詰めたお札を、言われた枚数出し、老婆に渡した。 




 「ありがとう。マダム。この紋章は私の家の紋章と同じなんだ。何か縁を感じます。絵も」 


 老婆は2つを紙袋に入れてオスカルに渡した。


 「そうなのかい?うちも助かるよ。私ももう歳だからね、人様に迷惑を掛けないうちに、施設に入ろうと思ってて、ご先祖様から預かったものを、仕方なく売ってるんだよ」 





 「この品物を?全部?」


 見れば、テーブルに18世紀位のアクセサリーや、帽子、いかにも古くて、でも美しい刺繍の布の端切れ、小物入れ、美しいグラス、重厚な聖書、色んな古書、アンティークな香水瓶など、ざっと30点近くある。 

 これが全部売れたら、マダムは安心して施設に入れるのか…。 



 「マダム…。ちょっと待ってて貰えますか?全部買います。お金を持ってくるから、少し待ってて」 


 「ええ!?ホントかい!?ありがたいよ」


 「すぐ戻ってきますから!」 


 オスカルは、絵とバッグの入った紙袋を抱いて、アンドレの店に戻って行った。(冷蔵庫の奥に、金塊を2つ入れておいたんだ。あそこなら、誰にもバレないから) 




 「あ、お帰り。オスカル……どうした?息を切らして」 

 「アンドレ、この紙袋をキャンピングカーに置かせて。ちょっとたくさん買い物したいから、お金を持って、また行ってくる。あ、キャリーカートを借りるぞ」

 「あ、ああ。何買ったの?」 

 大きめのキャリーカートを引きながら、オスカルは振り向かず、


 「店ごと!!」と言いながら、走った。



 遠くでアンドレが、「ええ〰️!?」と大声を上げていた。 








 戻ってきたオスカルが汗をかきながら、カートに山積みされた、古い骨董品を嬉しそうにキャンピングカーの倉庫に入れる。


 少し暇になったアンドレが、オスカルの手伝いをしながら呆れていた。


 「凄い量だね……」 


 「ああ。これが全部売れたら、店主のおばあちゃんがそのお金で、出店はもうやめて、老人施設に入るって言うから、まるごと買ったんだ」


 「…え!?そんな事してたらきりがないけど…。まあ、オスカルらしいな。俺もお金を持ってて、そう言われたら、買ってしまうな」


 「よし、…と、積んだ!アンドレ、ありがとう!それよりコレ見て」 



 オスカルが紙袋から絵を出した。

 「……え……?これ…俺の小さい頃に似てる…」オスカルは、ニコニコ笑い 



「そうだろう?そして、金髪の子は私の子供の頃にそっくりだ」 


 「なんでこんな絵があるんだ?しかもかなり古いけど…」 


 「わからないんだが、店主のご先祖様が、大貴族から受け継いで、ずっと守ってきた家宝だそうだ。…18世紀位って言ってたかな?それより、裏を見て」 



 アンドレは、額縁を裏返した。

 そこには、


 Dédié à l'amitié entre Oscar et André


 オスカルとアンドレの友情に捧ぐと、

書かれていた。 



 「オスカルとアンドレ…って…?この2人の名前?え?どういう事?」 



 「18世紀に描かれた絵で、ブロンドの子は大貴族の子だそうで、隣の黒髪の子は店主の親族のご先祖で、幼い頃にこの大貴族の屋敷に引き取られた平民の子だそうだ。しかも、一緒に買ったバッグに刺繍された紋章の、剣を持つ青獅子は、私の家の紋章と同じなんだ。同じ紋章を持つ家は多分…ないと思うんだけど…」 


 「じゃあ、このブロンドの男の子は、オスカルのご先祖?そして、同じ名前って事?」


 アンドレは興味津々な顔つきで、小さな絵を眺めた。 



 確かに、目の前にいる現代のオスカルにそっくりで…。 



 「ブロンドの子は男の子じゃなくて、女の子。ご令嬢だ」 


 「え?でもドレスを着てないし、俺の子供の頃にそっくりなこの少年と似たようなブラウスを着てるよ?」 



 「似たようなブラウスだけど、絵の描き方が少し違う。ご令嬢は、シルクのブラウスだろうな、艶感がある」


 「ホントだ」 


 「仲が良かったんだろうな。肖像画として身分を超えて描かれいるなんて……」 



 と、その時。オスカルは重大な事を思い出した。 




 「忘れてた!! スイーツを買ったんだった!アンドレ…」 


 「え?何処に置いて来たの?」 



 「さっきのおばあちゃんのトコ!」

 「一緒に行ってみよう、オスカル」 


 アンドレは、看板に「休憩中」の札を置いて、オスカルと向かった。




 が。おばあちゃんが出店していたスペースは、別の出店者がのんびりあくびをしていた。 




 「あの…すみません。ここに背の低い、声の大きなおばあちゃんが出店していたと思うんですが…」

 「え?おばあちゃん?」 

男性の店主があくびを飲み込んだ途端、むせた。 


 「はい。ここでさっき、18世紀の貴族の持ち物とか……私がたくさん買って…。で、スイーツの入った紙袋をここに忘れて来たので、取りに戻ってきたんです」 

オスカルがそう言うと、出店している中年男性が、少しビックリした顔でオスカルを見た。



 「そりゃホントかい?……嘘だろ?あのおばあちゃんは、以前は出店してたけど、先月亡くなったんだよ?それまではここのスペースで、ご先祖様が、貴族から受け継いできたって言う高い色んな品を出してたけど…全然売れなくてさ…。そのおばあちゃんから買ったってのか?今日?」 


 オスカルは、アンドレを見上げて 


「先月亡くなった…って…」

 と、固まってしまった。 

 一体どういう事なんだろう? 

幻でも見たのか? 

 いや。品物はちゃんとキャンピングカーの倉庫に入れた。 


手で触った感触もちゃんとある。



 なのに…? 

おばあちゃん店主は、先月亡くなった…? 


 訳が分からなかった。


 「あと、スイーツの入った紙袋なら、2人の子供たちが俺に預けて帰ったよ」


 アンドレが聞いた。 


「あの…2人の子供たちって…」


 店主が、紙袋をアンドレに渡しながら、首を傾げる。



 「初めて見る子たちでさあ。ブロンドの巻き髪の綺麗な子と、黒髪の癖毛の目がクリンとした子でさ。8歳~9歳位かなあ…。あ、着ている服が絵画に出てくるようなレトロな服だったんだ」 



 オスカルが呟く。洋服の歴史には仕事柄詳しい。 


「それって……もしかして…白いブラウスに、キュロット…」 


 「そうそう。18世紀位の洋服を着てて、あんたたちの子供時代みたいな顔立ちの綺麗な子たちだった。その2人の子供が、

 (背の高い女の人がこの紙袋を取りに来るから、必ず渡して欲しい)ってニコニコ笑いながら渡されたんだ。



 さっきだよ?で、気がついたらいなくなってたんだ」 


 オスカルはアンドレが抱えていたスイーツの紙袋を受け取り、中を開けて見た。



 「アンドレ、何か手紙がある。読んでみて」 


そういって、スイーツを買った時にはなかった、蝋で封印された封筒を渡した。


 アンドレは、店主からハサミを借りて、封を切る。 


 中から、茶褐色に色褪せた手紙が出てきた。


 色褪せた紙なのに、インクの匂いだけは、真新しかった。 






 「未来のオスカルとアンドレへ。私たちの思い出全てが、オスカルの手元に戻る事が一番ふさわしいと思う。そして、未来のアンドレと出逢ってくれてありがとう。オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ」 



 2人で手紙を読んで、絶句した。


 名前が同じだったから。



 アンドレの店に戻り、閉店までの時間。






 オスカルは、キャンピングカーの中で、あの絵画を眺めていた。 



 先ほどより、絵の中の2人が生き生きとして見える。 



 「オスカル、帰るよ?」 

 外のディスプレイを片付けていたアンドレが、キャンピングカーを覗き込み、オスカルに言った。 


 「あ、ああ…」 


 「まだ見てるのか?それ」


 「うん…。見てるとだんだん絵の中の2人が笑ってきて、輝いて見えるんだ。そして、なんだか私達の子供のころの肖像画じゃないかと思うほどにな…」 


 「そうだな。あ、おばあちゃん店主から買ったって言う荷物、車の下の荷物入れにちゃんと入ってたぞ?……なんだか不思議な事が起きたなあ」 

 オスカルは、小さな肖像画を見ていた蒼い瞳を、アンドレに向けた。


 「アンドレ……。もしかして、だけど」

 「うん」 

 「これは本当に18世紀の私達で、生まれ変わって、また再会したのかも知れない…私はそう感じた」



 キャンピングカーに乗り込んだアンドレが、簡易ベッドに座るオスカルの横に腰掛ける。

 そっと、彼女の手に触れた。 


 「俺たち出逢いは突然だったけど、そうかも知れないな…偶然じゃなく、必然」 


 「うん…」

 アンドレがオスカルの額に軽くキスをする。




 「さあ、帰ろう。お腹ペコペコだ」


 アンドレは車のエンジンを掛け、笑った。


 「今夜は、あの南プロバンスのレストランに行こう、アンドレ。その後に、今日買ったスイーツを部屋で楽しもう」


 「了解!!」 



 オスカルは、キャンピングカーの窓辺にあの小さな天使の肖像画を立て掛けた。



 車が走ると、時折、夕焼けのオレンジ色が、肖像画を明るく彩る。 


 天使達がキラキラと太陽の光で輝いた。 




 「……あ……!」



 ずっと眺めていたオスカルが、目の錯覚かと驚く。オレンジ色の夕焼けの中で輝く、肖像画の天使達が… 




 クスクスと笑いながら 



 キスをしたように見えたから… 



 ~ fin ~ 





 à la recherche de l'amour 

 ~愛を探すひと~ 番外編 ③ 



 2024年4月25日書き下ろし