à la recherche de l'amour 



~愛を探すひと~番外編②

エピソード ゼロ




 原作無視の、現代版オスカル、アンドレたちの物語 



 去年2023年、


pixivで書いた長編で、最終回を迎えました



 「愛を探すひと」の番外編②です。



🔴 この物語は、本編①へと続く物語です。🔴


   ●フェンシングのオリンピック選手だったオスカルが、とある理由で引退し、


 17歳で単身パリから、セドナに逃げた彼女の、セドナでの出会いや、生き方を書きました● 



 アンドレは出ませんが… 


 始まりのはじまり、そんな物語です。



 本編の内容も…(笑) 



↓savon職人 アンドレの店名はブーケ ド サボンbouquet de savon です。 


 アンドレの恋人→結婚し、夫婦になったスーパーモデルのオスカル。 



2人のラブストーリーです。 

 是非ご一読くださいませ。


 pixivでは2023年4月から半年間、連載しまして、現在はアメブロで、改正、修正、追記しながら、また挿し絵も描き下ろしをしまして、連載は先日終了致しました。 



 小説内で2人が作るsavonは、


私が25年間savon職人をしていて、最終的に香りや使い心地を突き詰めた製造工程ですので、あまり詳しくは書いていません(._.)



企業秘密なので…すみません! 




 ~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨ 








 オスカル・フランソワが。 




 セドナに来たのは、17歳のまだ肌寒い春の日だった。 




 自身で密かに貯めていた、フェンシング選手時代の賞金や、両親が与えてくれていた宝飾品の数々をすべて現金に換え、


母が作ってくれていた、スイス銀行に口座にお金はある。 


しばらくは身を隠してもお金には不自由はしない。 


 着の身着のままで、ネットで見つけたパワースポット……セドナに逃げるように来たのだ。 



 そこで、シャーマンキャロル・ミュー・ダグラスと出会い、事情を話し、


 彼女の力で選手時代の辛い記憶を封印され、


 新しいオスカルがセドナで生まれた。


 辛かった選手時代の記憶を忘れ、彼女の家に住むようになり、シャーマンの仕事の手伝いや、ボルテックスの風景を見ながら、次第に心は解放され、 



 オスカルは明るく美しい少女になっていった。



 セドナに来て、1年と少し。


 彼女は18歳になった。



 もうすぐ夏至祭がセドナで行なわれるので、観光客も増え、町は賑わいをみせていた。 





 「キャロル、いってきます」 



 「行っておいで。夕方までには帰宅するんだよ?変な観光客に狙われないようにね。あなたはとっても美しいから」 


キャロルは、儀式で使うセージを自然乾燥させる準備をしながらオスカルにそう言った。 


 「大丈夫。変な観光客が寄ってきたら、周りの知り合いの店に逃げるから」


 そう笑うと、キャロルに手を振って出ていった。 





 「おはよう、オスカル」 


 「おはようございます。今日も忙しそうですね」

 メイン通りに出ると、セドナのお土産や、パワーストーン、絵、などを売っている観光地である。そこを挨拶しながら抜けると、セドナのパワースポット。ボルテックス(赤い山々)が見えてくる。 



 オスカルは、そのボルテックスを眺めるのが大好きだった。


 話しかけると、優しく答えてくれるような。

 まるで、親のような、親友のような。


 そんな光景をずっと夕方まで眺めている。



 ただ、大自然の雄大で、秒ごとに色が変化する、その美しさにオスカルは見惚れて、または、自身もこうでありたい。

 そう思いながら夕刻までずっと眺めている。

 そんな1日がとても充実して、大好きだった。



 毎日ではないが、時間がある限り、彼女はその事を優先していた。 








 とある日。



 いつものように、ボルテックスを眺めていると、数十m離れた場所で、若い男性がカメラを持ち、ボルテックスに向かってシャッターを切っていた。




 誰だ?……見かけない人だな…。 



 「ああ!…なかなか上手く撮れないなあ!」 


 男は半ばやけくそな呟きをこぼしていた。



 「ボルテックスを撮影しているのか?」 


 オスカルは近寄りながら、若い男に声を掛けた。その男は、オスカルに顔を向けると、驚いた表情で固まってしまった。



 「上手く撮れないのか?」 

オスカルは、にこりともせずカメラを覗き込む。 


 「良いカメラじゃないか。その歳で持つようなものではないな」




 男は思った。


 女神だ……。 

 女神が人間の姿で現れたんだ。

 このボルテックスの女神…。 




 「どうした?」

 訝しそうに男の顔を覗き込む。


 「……あ……。俺、アランと言います。友人の形見のカメラをもらったんで、趣味の、大自然をカメラに収めてるんです」 


 「友人の形見の…。そうか。聞いて悪かった」


 「いえ…。あ、あの、貴女の名前は?」 


 「オスカル。……オスカル・フランソワだ」


 「女神じゃないのか…」 

アランと言う若い男は、胸を撫で下ろした。


 「は?女神?わたしが?」

 オスカルは面白い、と白い歯を見せて笑う。 


 女神以上の美しさだ。 


 「だけど」 

「え?」 


 オスカルは赤いボルテックスを指さし 



 「セドナには神々はいる。見てみろ、一刻一刻とその色を変えるボルテックスや、大自然を」


 アランはボルテックスに目をやった。




 確かに。 


 雲間から太陽が現れ、ボルテックスを幽玄な色に次々と変えてゆく。 


 「アラン」 


 「え?」 


 「撮るなら今だよ」 


 「あ、ああ。ありがとう」 


 アランはレンズに目を当てると、その美しいボルテックスに何枚も何枚もシャッターを切った。


 無我夢中で。


 気が付くと。 

 オスカルと名乗った、美しい少女はそこには居なかった。



 「……やはり、女神なのか…?」

 アランは、最初に見つけたオスカルがいた場所に歩く。 


 「…あ…」 

 そこには、彼女が身につけていたのか木彫りの不思議な模様が刻まれているブレスレットが落ちていた。 


 アランはゆっくり手のひらに収めると、周りを見渡すがやはり彼女は居なかった。


 オスカルはセドナでは次第に有名になっていた。 



 名前を知らなくても 


 「あのオーラ全開の、ブロンドの少女」


 と言うと、オスカルの事だ。 


 そして。 

彼女が店に立ち寄ると、その後、その店はたちまちお客でいっぱいになるので、

 時々、店長やオーナーから、店頭にいて欲しい、と依頼を受けて、喜んで手伝う。


 そうすると、彼女見たさではないのに、観光客がどっと店内に押し寄せて、買い物を始める。


 「私は商売の運があるのか?」

 と、その光景を暫く見ながらオスカルは嬉しそうに店を後にした。 




 「オスカルは、人を引き寄せる力があるのよ」シャーマン キャロルは、夕御飯の片付けをしながらオスカルに笑って言った。 


 「私が?あまり人には興味がないし、踏み込まないようにしている私が?…あはは!」 


 「まあ、これは持って生まれた運命だからね。将来が楽しみね」 


 「キャロル、私はセドナから出たくない」 


 「あら、それは無理よ。貴女、将来、とても有名になる運命だし、素敵な男性と結婚するわ」


 「それは…視えるのか?」


 「ええ。そうよ。そして再び愛する人を連れて…セドナに現れる」 


 「……どんな人を愛するんだ?」 


 その問いにキャロルは首を振る。


 「楽しみがなくなるから。言わないわ。きっと判るはずよ」 



 今朝、キャロルと話したその会話を思い出しながらオスカルはいつも通る観光客向けのメイン通りを歩く。 




 あ…あの人は…あの時の…カメラマン…青年。 


 彼は、小さなレストランのテラス席のテーブルで、朝食を食べていた。 


 オスカルは歩み寄ると、小さく声を掛けた。


 「君…確か、あのボルテックスの見える場所で会った…」 


 そう声を掛けられた彼、アランは振り向き様にオスカルと目が合うと、口にほおばっていたサンドウィッチでむせた。 



 「あ!すまない!そんなつもりでは…」


 オスカルはテーブルに駆け寄る。



 「い、いや。ビックリしただけだ。また逢うとはなあ。…確かオスカルって言ったっけ?…もしかしてフランス人?」 


 「ああ。そうだ。まあ、訳あって男名だけどな」 


 「口振りも男みたいだけど」


 「何か言ったか?」 


 「い、いいえ!何も!…あ、そうだ。これ」 


 アランはポケットから、ブレスレットを取り出し、オスカルに渡した。 


 「これは…。どこに?探していたんだ」


 「先日、あの場所で会った時に、君が落としてたのを拾ったんだよ。大切なもの?」


 オスカルは受け取ると、手のひらに包んだ。


 「ああ。先日亡くなったセドナの長老から頂いた御守りなんだ。見つけてくれてありがとう、アラン」 


 「よかったよ。直ぐ橫は崖だったからな。崖から落ちてたら、見つからなかった」 


 オスカルはブレスレットを左手首に付けると、ちょっとした異変に気がついた。


 「アラン…もしかして、このブレスレットのゴム紐を直してくれたのか?」 


 「ああ。シリコンゴムが緩んでたから、そこのアクセサリー専門店で新しいのに取り替えてもらった。ゴムも同じ色だぜ」 


 「そうか…!ありがとう!アラン。食事が済んだら、またあのボルテックスが見える場所に行かないか?夕方まで居ると、刻一刻とボルテックスの色が変わるんだ。アランにも見せてあげたい」


 「ホントか?それは光栄だな。ちょっと待ってろ。すぐ食べ終わるから」


 オスカルはニコニコと笑いながら、同じテーブルに付いた。 


 「アランもフランス人なのか?英語がフランス訛りだ」 


 「はは!一応フランス人だけどな。高校を中退して、カメラ持ってあちこち旅しながら写真を撮ってるんだ。俺、自然を撮るカメラマンになりたくてな。いつかは賞を取ってやろうって思ってる」 


 「そうか。楽しそうだな」


 「あんたは?…あんたもフランス人だろう?セドナに住んでるのか?」 


 その問いにオスカルは一瞬顔が曇ったが、目を上げたときには、サファイアの深い瞳の色がキラキラと輝いていた。 


 「私は、私の運命の歯車が動き出すのを待ってるんだ。それはもうすぐだ」 


 「運命の歯車?…まあ…よく判んねーけど、じゃあ、オスカル。あの場所へ行こうぜ」


 「ああ。今日は曇りがかった天気だから、青天より素晴らしい風景が撮れるかもな」 


 薄いブルーのロングワンピース、首元にはエスニックなネックレスを身につけたオスカルは、Tシャツにジーパンのアランと、先日出会った場所に向かった。 




 ボルテックスが雲の流れに、色んな表情を表し、まさに刻一刻と変わる。


 アランは昼前から、ずっとレンズ越しに神々が作った風景の一瞬一瞬を捉えていた。


 その橫で、大きな石に座り、オスカルはずっと黙って風景とアランを交互に眺めていた。




 もうすぐ陽が傾く。


 夕暮れが近づく。


 赤々と輝き出したボルテックスに変わりつつある光景に、オスカルは立ち上がった。 




 「アラン」 



 ずっと黙っていたオスカルが彼を呼んだ。 


 「どうだ?良い写真が撮れたか?」

 呼ばれたアランは、立ち上がり 


 「ああ。この中から良い写真を選べそうだぜ」オスカルはにこりと笑いながら


 「アラン。アイディアがあるんだ」 


 「アイディア?」 


 「私と夕暮れの赤く染まったボルテックスを一緒に撮ってくれないか?」 


 「ああ。もちろん!良いアイディアだな」 


 「だろう?……じゃあ、私は生まれたままの姿になるから、アラン、暫くあっちを向いてくれ」


 「え!?ちょっと!!」




 オスカルは躊躇なく、美しいワンピースを脱ぎ、下着も、ためらいなく脱ぐと 

 「いいぞ。アラン。こっちを向いて撮ってくれ」と言うので、アランは振り返る。



 そこに立つ彼女は。真っ白く、真珠のような裸体の背中をこちらに向けて立っていた。 


 「オスカル…」 



 「どうだ?ボルテックスと私が対話するイメージだ。ちょっと恥ずかしいが…。今なら、いや、アランになら、撮られてみたいと思った」


 「……美しいよ…じゃあ、そのまま背中越しにこちらを少し見てくれないか?」 


 オスカルは身体をひねり、ゆっくりアランのカメラをみた。 


 「こうか?」 







 その時。 

 オスカルの遠く後ろにあるボルテックスの方から風が吹いてきた。 



 彼女の黄金色の髪が、美しくゆらめく。 




 かげろう、、の、ようだ。 


 アランは夢中でシャッターを切った。



 30分は経っただろうか。 



 「アラン。寒くなってきた。もう服を着てもいいか?」 

 そう告げると、近くの木の枝に引っかけていたワンピースを掴むと、上からバサリと着た。


 下着はポケットに。 


 「オスカル…とても神秘的だったよ。素晴らしい写真になりそうだ」 


 「そうか…よかった。あ、そうだ。何かコンテストがあるなら、提出してもいいぞ。もしかしたら、アランも私も何かが変わるかも知れない」 


 「コンテスト?」 


 「ああ。不思議だな。何故かそんな気がしたんだ」 


 「わかった。使わせてもらうよ。もし賞を撮ったら、賞金は山分けだ」 


 アランは彼女に近づいて、いま撮ったばかりの写真を見せた。


 「いい記念になった。お礼がいいたいのは私だ。だから、賞金はいらない。何かに使えばいい」

 オスカルは、暮れそうな太陽を浴びて、アランにそう言って、手を差し出した。 


 2人の強い握手。


 「ありがとう。ヌード写真は初めて撮影したが、まるで女神を撮っていると思ったよ。コンテストに出してみる」 


 「ああ。こちらこそありがとう。何かあったら知らせてくれ。私はシャーマンのキャロル・ミュー・ダグラスの家に住んでいる。HPもあるから、そこにメールを送ってくれ」 


 「了解!じゃあ、またなオスカル!きっといい結果が出るよ」 


 「うん、私もそう思うよ」


 アランは彼女に手を振り、走り去って行った。




 暫くその後ろ姿を見つめると、

暮れ始めたボルテックスに顔を向け 



 「神々よ…私は将来どんな大人になろうとも、私は誰にも媚びず、強く生きてゆきます。見ていて…」 


 そう呟きキャロルの家へと歩き始めた。








 その約半年後。


12月始め。 


オスカルがもうすぐ19歳になろうかと言う頃に。 


 アランから、HPアドレスに1本のメールがきた。 


 あのオスカルのヌード写真が、最高金賞に選ばれた事。 


その受賞式典の様子も見れるようにリンクをつけてくれた事。 


アランが、これでやっとカメラマンとして生きていく自信を持った事。


 オスカルは、自分の事のように喜んだ。 






 その後。 


 オスカル・フランソワは 



 ノエルの朝。 


 キャロルの家に、パリからやってきたスーツ姿の中年男性と対面した。



 アランが受賞した写真を見て、この子は原石だ!とセドナに来たと言う。 





 「オスカル・フランソワ。貴女はモデルになりませんか?」 





 彼女の運命の扉を開ける日となった。




 そして。翌年2月。 




19歳になったオスカルは、 

運命に導かれ、パリへと向かってゆくのであった。 






 まだ。 



 運命の男性と逢うまではもっと先の物語…。








 番外編②fin愛を探すひと


 本編①へと続く