『ウルトラマンA』(1972)【作品】

1954年（昭和29年）、ゴジラ放映開始。1966年（昭和41年）に始まったウルトラシリーズはゴジラの影響による怪獣ブームを受けて始まり、ウルトラＱ、ウルトラマン（1966）、翌年のウルトラセブン（1967）がそうだった。
帰ってきたウルトラマン（1971）とウルトラマンレオ（1974）ではスポ根ブームの影響で、主人公が変身前に特訓する描写があった。また、ケンちゃんシリーズに見られた家族ドラマのブームも背景にあり、ウルトラマンA（1972）とウルトラマンタロウ（1973）ではウルトラの父・母・ウルトラ兄弟の設定が形成され、レオ・アストラ兄弟とウルトラ兄弟の協力や対立に発展した。
ザ☆ウルトラマン（1979）は日本サンライズの協力によるアニメ作品で、これは「宇宙戦艦ヤマト」のブームが背景にあり、またCGが未発達で特撮とアニメのそれぞれに長所と限界があったことも考えられる。アイゼンボーグやアステカイザーのようにアニメと実写が混在する番組もあった。これはのちにCGの発達で結実した。
📺ウルトラマン80（1980）は金八先生（1979）のような学園ドラマのブームに乗ったように見えるが、すでにレオの終盤でおゝとりゲンがスポーツの教師をやっていた。

「ウルトラマンがいれば科特隊は不要ではないか」という問題提起は初代ウルトラマンの時代から存在した。
レオでは主人公も隊長も異星人だったので、防衛隊MACの個性が中途半端になり、話の途中で全滅してしまった。モロボシ・ダンを演じた森次晃嗣氏も、セブンの話ではウルトラ警備隊の隊員の個性から話が始まったのに、レオではMACが軽く扱われ戸惑ったと言っていた。もっともその一因は森次氏がレオに出るとき、初めは別の役の予定だったが、ダンの役で出たいと言ったからでもあっただろう。「レオ」ではウルトラマンレオがいるから怪獣や宇宙人が攻めてくるのではないかというヒーロー否定論に対する答えも示された。「80」の最終回ではUGMが80とユリアンの変身に頼らず、等身大の人間の力で怪獣を倒し、「タロウ」から久しぶりに地球防衛隊の意義を示した。
ウルトラマンAの場合、北斗星司と南夕子の合体変身が売り物だったが、子供たちがウルトラマンAごっこ遊びをするとき、女の子が変身後に仲間外れにされたりしたようで、第28話「さようなら夕子よ、月の妹よ」で路線変更。「南夕子は月星人」という記事が当時の子供向けの雑誌に載っていたと思う。
柳田理科雄氏は「空想科学読本」シリーズで超人バロム1の少年2人の変身とともにエースの変身の問題点も取り上げ、さらに「夕子は月星人」という設定に突っ込みを入れていた。夕子は月で何を食べていたのか？モチロンはモチを食べ、ルナチクスは月のマグマを食べる。夕子はモチロンとルナチクスを食べていたのか？というもの。
改めて動画を見ると月のマグマが怪獣に食べられたので月が死の星になり、月星人は冥王星に逃れたらしい。だから夕子は月でなく冥王星に帰ったはずだが、のちの再登場を考えると月にいた可能性もある。しかも月が死の星になったから冥王星に逃れても冥王星の方が環境が過酷であろう。

ウルトラマンメビウス（2006～2007）では、北斗と南が再会、また矢的猛もかつての教え子たち（人によっては俳優は別だったかもしれないが）と再会した。
メビウスは円谷プロがエースと80の「路線変更」の「後始末」をする場だっということだろう。

補足

また、柳田氏は「バロム1」の少年2人による変身と「ウルトラマンA」による男女変身に関して分析。変身する2名がいつも一緒にいる必要があり、離れているときに怪人や怪獣が現れたら大変で、こういう変身システムを選んだ異星人の判断が問題。しかも「ウルトラマンA」では途中から北斗星司が1人で変身するようになった。それなら初めから1人で変身できるようにすればよかったという評論であった。

高峰圭二の考えによると「ウルトラマンA」の南夕子降板は時間の尺の問題と思われるらしい（「ウルトラ裏話♪オオトリ高峰圭二さん☆」）。2人分のドラマを描くのが大変だったということ。そうなると「ウルトラマン80」の教師編が終わった理由と似ている。これも30分番組で「ヒーロー対怪獣のドラマ」と「学園ドラマ」を描くのは無理があったということだ。

南夕子の降板は「実は月星人」という驚きの設定で「説明」されたが、ウルトラマン80の学校編「打ち切り」の路線変更は本編で理由が語られなかったようで、これは四半世紀の歳月を経て「メビウス」で説明された。

テレビ業界の事情に出演者も視聴者も翻弄された形だったがが、「メビウス」で描かれた続編は、ウルトラシリーズが40年続いたからこそ可能だったのだろう。

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〔令和3年5月〕