『新約「巨人の星」花形』講談社コミックス第22巻を買って読んでみた。
2011年2月17日發行。
この巻の話の大半は星飛雄馬と花形の甲子園決勝であり、昭和の『巨人の星』ではKC第4巻、文庫の第3巻に相当する部分である。
つまり作者は飛雄馬と花形の高校野球編を終わらせるまで、原作の5倍以上のページ数を費やしたわけだ。あるいは原作とほぼ同じ4年半の連載機関の中で、『新約』の大半は高校野球編までだった。
原作のプロ野球編は講談社コミックス6巻から19巻まで、文庫4巻から11巻までだったが、『新約』」のプロ野球행は第22巻の最終話の前の回の終盤と最終話のみである。

 

とにかく絵が大きく話の進み方が遅い。
アニメ『巨人の星』の時間引き延ばしに近い。

 

原作で星飛雄馬は左門との準決勝で左親指を負傷、決勝ではスローボールを投げていた。
ところが『新約』では飛雄馬は負傷した状態で時速160km台の剛速球を投げ続けていた。
もしリメイク版で星飛雄馬の血染めのスローボールが大リーグボール3号になっていたら面白いとは思ったが、そうはなっていなかった。
原作で星がスローボールを連投していたことにイライラしていたこともあったので、『新約』では星飛雄馬の「勝負の鬼」としての部分が強調されていた。

 

また原作で花形がサヨナラホームランを打ってから飛雄馬の負傷に気づいたのに対し、『新約』では花形は決勝戦が始まったときにすでに気づいていた。
原作の場合、花形は血染めのボールが飛んでくるのを何度も見ているので、気づかなかったのが不思議ではある。
『新約』で花形は「星が負傷していても僕は手加減しない」と伴に語った。ここで主審も星の負傷を知ったはずだが、ドクターストップはかけなかったようだ。

 

また、この『新約』で重要なのは飛雄馬の先輩にして第2投手に格下げされた小宮である。

 

原作『巨人の星』で飛雄馬は試合前日の雨の日、小宮に「決勝で投げてみませんか」と言ったが、小宮は「何を言うんだ」「僕が出たら負ける」という趣旨の台詞を言い、飛雄馬は負傷をナインに言いだせなかった。
そして試合中、伴が飛雄馬の負傷に気づいたが、飛雄馬はこれを秘密にするよう求めた。おそらく小宮を含めた他のナインが飛雄馬の負傷に気づいたのは花形が川上監督に小包を送ったときであろう(もっともホームランボールを受け取り、花形に投げた客も血染めのボールを見ていたはずだから時間の問題でばれていた)。
試合中、飛雄馬が「小宮さんに代わったら負ける」と判断したのは小宮をかばっていたとも言えるが、小宮を見下していたとも解釋できる。

 

これについて『新約』では一塁を守っていた小宮が飛雄馬からの送球を受け、ボールに血がついているのを見て飛雄馬の負傷を知った(そうなることは充分予測できたはずだが、それを考えない飛雄馬もどうかしている)。小宮はタイムをかけ、飛雄馬に駆け寄り、「俺が出たら負けだ。星、投げ続けろ」という趣旨の台詞を言った。
これで小宮が星飛雄馬の続投を認めた形となった。

 

さて、この試合では伴大造が出てこない。観戦していたレギュラーキャラクターは別の人物である。
だから原作の野球部解散も牧場による闇討ちも『新約』では描かれていない。

 

星明子はガソリンスタンドでアルバイトしている。それで店長が「テレビの甲子園大会を観ないのか」と言ったが、明子は「どちらも応援できない」と言って仕事を続けていた。
明子がガソリンスタンドでバイトを始めたのは原作『巨人の星』漫画版では1969年夏、飛雄馬が大リーグボール1号をオズマに打たれたときからだったが、アニメでは飛雄馬の高校時代から明子がガソリンスタンドでアルバイトを始めていた。
この点、『新約』は昭和の『巨人の星』のアニメ版に近い。
明子はENEOSに似たENEOZという会社のスタンドで仕事をしていた。前の『巨人の星』のキャラクターは日石のCMに出ていたが、『新約』の明子は別の会社を選んだか。

 

『新約』では、その後、いきなり時間が経過して、星飛雄馬と花形満の対戦、花形が鉄球と鉄バットの特訓をした場面は回想シーンで描かれ、花形の大リーグボール1号を花形が打った。
これで『新約』は終わりである。
原作では1968年9月18日の巨人×阪神の試合がモデルとなり、王、長嶋、バッキー、権藤、藤本定義監督も登場したが、『新約』では実在の野球選手や監督がほとんど登場せず、西暦何年ごろの試合かわからない。左門は横浜ベイスターズで、巨人×阪神戦のチケットがヤフオク(ヤフーオークション)で数万の値がついていたようだから、21世紀初めだろう。また甲子園球場の壁のツタがないことからも2010年ごろの改修工事の時期だとわかる。

 

原作で花形が大リーグボール1号を打ったとき、捕手は森祇晶で、伴は川上監督とともにベンチで観戦していた。
ところが『新約』では花形が大リーグボール1号を打ったとき、捕手は伴であり、作品掲載当時の巨人の原監督も阪神も真弓監督も登場していない。
これは肖像権の問題によるものだろうか?

 

ところで『新約「巨人の星」花形』に星孝典選手は登場したのだろうか?
『ドカベン』にドカベン香川が出たかどうかわからないが新潟明訓出身の小林幹英が『ドカベン』と『あぶさん』に登場している。
『新約』では最終話の星飛雄馬と花形満のプロ対決でも出てくる選手は伴宙太を含めた架空の選手だけで、原監督も真弓監督も出てこない。西武へ移籍する前の星孝典捕手が星飛雄馬の速球を受ける話もあってよさそうなものだ。
どうせなら星飛雄馬と星孝典、さらに菊池雄星の対決なども漫画で描いてよさそうなものだし、西武に移籍したあとの星孝典と巨人の星飛雄馬の交流戦対決も漫画化してよさそうなものだ。そういう虚実の共演が梶原野球漫画の特色だったのだが、『新約』はそれを生かさないままで原作と同じ4年半の連載期間を終えてしまったようだ。
└→「巨人の星」が「西武の星」に?………星孝典選手が西武に移籍(Y!Blog)
└→「巨人の星」が「西武の星」に?………星孝典選手が西武に移籍(AmebaBlog)

 

じぇいじぇいさん (@JJ199X) / Twitter

バブルカンパニーのにっき (sblo.jp)

2009年02月18日 〔明子姉ちゃん2

え、これが今の巨人の星の秋子姉ちゃん・・・すごく栄養が足りてます

<平成25年>〔午後9:48 · 2013年6月14日

 

@kyojitsurekishi

星飛雄馬の姉は「秋子」ではなくて「明子」です。「新約」でも「明子」だと思います。「明星」を「星明」にしたのが飛雄馬の名前の候補でした。それが姉・明子の名前に残っているわけです。

<平成25年>〔午前1:09 · 2013年6月15日

 

「新約『巨人の星』花形」では甲子園での青雲高校と紅洋高校の決勝が始まった時点で紅洋の花形満が飛雄馬の負傷を見抜いており、青雲の第2投手・小宮も試合中に飛雄馬の負傷を知り、それでも飛雄馬にマウンドを任せていた。

<平成26年>〔午後3:39 · 2014年4月12日

 

#巨人の星〕 

新約は原作とほぼ同じ連載年数を費やしながら星飛雄馬、花形、左門のプロ入り以降が最後の2話(第191話と第192話)だけでした。今の漫画は見開きの絵が多くて話の進み方が遅すぎることも一因でしょう

<平成29年>〔午前9:05 · 2017年3月11日

 

#巨人の星☆ 〔星飛雄馬と星明子の名前〕   tweet(1)

<令和3年>〔午後5:43 · 2021年4月20日

 

『新約「巨人の星」花形(22)<完>』(村上 よしゆき,梶原 一騎,川崎 のぼる)|講談社コミックプラス (kodansha.co.jp)

<令和3年>〔午後2:31 · 2021年5月19日

 

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