日本記録が世界記録を上回っても世界記録とされないケース 

王貞治は日本野球界で通産868号本塁打。
大リーグのボンズ(Barry Lamar Bonds、1964~)は762号本塁打(Wiki)である。

 

ボンズが756号を記録したとき、王貞治は朝日新聞などで「自分の記録(日本でHR868本)が世界一だなんて誰も思っていない」とコメントした。
しかし、TBS『サンデーモーニング』で張本勲は「王さんが世界一だ」と主張していた。

 

 

さて、落合信彦は集英社文庫『そしてわが祖国』(1995年)111ページで「アメリカ人は、球場の大きさの違いなどを理由に、王貞治の本塁打数を世界記録と認めていない」ということを引き合いに出して、日本人が王を「世界一」とするのを「日本人のおこがましさ」としている。
ここで落合信彦は「王のHR数は世界一ではない」という「アメリカ人の考え」を紹介しているだけで、落合信彦自身がどう考えているかを述べていない。

 

つまり、人の意見を右から左に紹介しているだけで、自分の立場が缺落しているのだ。
球場の廣さに関しては、川崎球場でのHRを後楽園なら外野フライだと言っているようなもので、余り意味はない。甲子園にラッキーゾーンがあったころのHRを今から無効だと主張しても通らないだろう。

 

王貞治は日本国内では世界一、日本以外の世界では日本一ということになる。
アメリカが認めなくても日本人が王を世界一を認めればいいだけの話だ。
アメリカ人がどう考えるかはどうでもいい。アメリカも日本もそれぞれ一つの国にすぎない。

 

例えば、日本柔道での個人の勝ち数の最高記録を上回る記録が、アメリカの柔道や中国の柔道、ロシアの柔道で達成されたとした場合、それらの国では「日本を超えた。世界一だ」と言っても、柔道の本場を自称する日本が認めるかどうかは別問題である。

 

知識人の中には自分がどう考えるかを棚上げにして、どこそこの人がこう考えているという思想紹介屋で終わっている人が多い。マスコミが政治家の言動を批判する場合も、結局「近隣諸国が反撥する」「日米関係が悪化する」「選挙で勝てない」など、「誰かさんが怒るぞ」ということを強調する向きが多い。では、そう言っている人は賛成なのか反対なのか。

 

知識人、文化人が書いている文には単に人の意見の紹介を並べて、意図不明だったり、趣旨が矛盾しているものが多い。人の意見を聴いたり読んだりする場合、そこに注意する必要がある。

 

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2009年5/20 
 
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