『巨人の星』の中で悲劇のもとになった脇役は誰か

「巨人の星」の牧場春彦は善人のようで飛雄馬を何度も苦境に追い込んでいる。牧場に悪気はないのだろうが、人の好さが裏目に出て、うっかりライバルに情報をもらしたり、飛雄馬を動揺させる材料を与えたり、飛雄馬の悲劇を目の当たりにすることが多い。

 

へそ作戦(「星一徹のへそ作戦」)
牧場が飛雄馬と初めて出会ったのは一徹が青雲高校の監督を勤めたときで、推定1966年春または1967年春。飛雄馬は「へそ打法」で打ち込まれてしまった。星親子の姿を「獅子が自分の子を谷底に突き落とす姿」と形容したのは、このときの牧場が最初である。実際のライオンはそんなことはせず、歌舞伎の連獅子の傳説がアフリカのライオンと混同されたようだ。
およそ10年後の76年春、“ビッグ”・ビル・サンダーは歌舞伎の連獅子を観賞して星一徹の哲学に目覚め、阪神に入って巨人の星飛雄馬と闘う決心をする。

 

左門の生い立ちを話したこと(「おそるべきライバル」)
飛雄馬が甲子園に行ったとき、牧場が左門の生い立ちを話した。このせいで、飛雄馬は動揺し、涙で目がかすんで、左門の初打席は四球(「なみだの投球」~「血ぞめの親指」)。この試合で飛雄馬は左親指を負傷。

 

闇討ち事件と身代り退学(「伴の苦しみ」~「ざんねん会」)
星は決勝で花形との決勝戦で敗れる(「優勝旗をかけて」)。
それで伴大造が激怒し、野球部解散を宣言。これに激怒した牧場が大造を闇討ちしたが、飛雄馬が犯人として疑われ、牧場の経済的な苦境に同情した飛雄馬は青雲を退学(「伴の苦しみ」~「ざんねん会」)。
花形は血染めのボールを川上監督に贈るが、川上監督は一度は「星飛雄馬は不要」と言い放った。飛雄馬は巨人の入団テストを受けて、このテストには牧場も見学のために訪れた。1967年秋のことである(「スカウト合戦」「巨人軍入団テスト」~「打撃テスト」~「アウトかセーフか?」)。

 

スコアブック、うっかり口滑らし事件(「初登板」)
1967年日本シリーズ後、ター坊が見守る東映(現・日ハム)との二軍戦で飛雄馬はプロ初勝利。
牧場はこの試合のスコアをつけていたが、星一徹がそれを見て愕然。
68年の巨人軍自主トレで飛雄馬の台湾キャンプが決まったとき、牧場はうっかり、そこに来た左門に「スコアを観た星君のお父さんの顔が一瞬、青ざめた」としゃべってしまい、左門はそれをヒントに(アニメでは「報告新聞社」で資料を發見)飛雄馬の缺点を見抜いた。
これを牧場からのてがみで知った飛雄馬は台湾で落胆し、金田からの助言を求めたわけだ。
この時期、牧場は高校卒業間近だったようだ。
星飛雄馬が左門に打たれたとき、牧場は星の長屋に謝罪に訪れた。牧場によると飛雄馬は速達の葉書で牧場に「牧場さんのせいじゃない。気にせんでほしい」と書いて寄こしていたらしい。
これは68年春、シーズン開幕直後で、牧場は会社勤めで、漫画の修行中。

 

オズマを見送った空港で伴のトレード(「伴のトレード」)
星飛雄馬が大リーグボール2号を開發した69年のシーズン、牧場は漫画家になって、日本シリーズを客席で観戦。この時期、牧場は漫画家としてデビューしていた(「みんなが青春を!」)。
オフ期間の70年初め、飛雄馬と花形と左門は牧場とともに空港へ行き、オズマを見送った。そこで彼らは一徹から中日の伴のトレード構想を聴かされる。

 

後楽園で非公式の対決(「きのうの英雄きょうの敗者」)
70年冬の終わりから春の初めの自主トレのとき、牧場と掲載誌の編集者の提案で、星、伴、花形、左門が子供たちと後楽園球場で座談会。ここで花形と左門が星と伴に勝負を挑み、星飛雄馬は敗北を痛感する。
そして、伴は中日に移籍(「涙の決別」)。

 

終盤で飛雄馬の破滅を知る(「飛雄馬のひみつ」)
大リーグボール3号のとき、原作で牧場は雑誌の担当者に頼んで飛雄馬を尾行させ、そこで飛雄馬の左腕の秘密を知ることになる。アニメでは花形が会社の人間に命じて同じことをやった(第173話「壊れたピッチングマシン」~第174話「白い血の秘密」)。

 

鷹ノ羽圭子と飛雄馬を会わせる(「噴火の章」~「不死鳥の章」)
1977年に牧場は星飛雄馬に鷹ノ羽圭子を紹介するが、このせいで飛雄馬は圭子に惚れてしまい、ロメオ・南条、伴宙太との「四角関係」となり、オールスターを挟んで不調におちいった。

 

このように牧場がからむと飛雄馬にろくなことがない。
牧場は善人だが、善人であるがゆえに憎めないことから、「次々と飛雄馬に試練を与える役割」を負わされたのだろう。
つまり飛雄馬をいじめる敵役でなく、善人ながら悪いほうに話を進めてしまう役柄である。

 

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「巨人の星」の明子は父と弟の練習を木陰で見守って泣いているイメージが強いようだが、男たちを野球地獄に追い込む魔性の女のような側面もあり、作品全体で見ると二重人格的な女性である。

「巨人の星」の牧場春彦も善人のようで飛雄馬を何度も苦境に追い込んでいる。牧場に悪気はないのだろうが、人の好さが裏目に出て、うっかりライバルに情報をもらしたり、飛雄馬を動揺させる材料を与えたり、飛雄馬の悲劇を目の当たりにすることが多い。

 

 

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08年7/31 8/1

AmebaBlog>〔2008年(平成20年)7月21日~31日〕〔8月1日~4日

 

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参照

星明子(『巨人の星』)【人物】【スポーツ】

 

巨人の星』の「きのうの英雄きょうの敗者

2008-12-30 17:34:21〕

 

巨人の星(青雲編)第23話「スケッチブックの秘密①」野球侍SAKIのブログ〕

 

巨人の星(再放送)[第141~142回]|大リーグボール二号の危機&引き裂かれた友情 テレビドラマに夢中!〕

 

雑誌「昭和40年男」令和2年4月号「俺たち ど根性世代」


『巨人の星』(2008年8月以前)
スポーツ全般、梶原vs水島他(2008年7月~8月)