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『博奕打ち 総長賭博』(1968年)

監督: 山下耕作
脚本: 笠原和夫



『仁義なき戦い』の笠原和夫が脚本というだけでも初めて視聴してみたが、三島由紀夫が絶賛したというのも納得な面白さ!!

公開から1年後の1969年、小説家の三島由紀夫が『映画芸術』同年3月号にて批評「『総長賭博』と『飛車角と吉良常』のなかの鶴田浩二」を寄せて流れが変わる。三島は「これは何の誇張もなしに『名画』だと思った」などと述べ、ギリシア悲劇にも通じる構成と絶賛した(この三島の批評は、現在では『三島由紀夫全集』や『三島由紀夫映画論集成』で読む事が出来る) 当時のヤクザ映画は笠原曰く「本当に傍流のそのまた傍流みたいな路線」であり、批評家は悉くその存在を無視していた。そこに碩学の三島が賛辞を送った事から、ヤクザ映画は初めて芸術面での評価を獲得し、市民権を得ることとなった。

Wikipediaより

時代設定は昭和9年。冒頭で当時の社会情勢を語らせて物語の伏線を見せる流れから引き込まれ、
役者が揃って悲劇の連鎖が始まって終わるまでの流れの美しさに平伏。

狡猾で嫌味な金子信雄、騙され操られて利用された果てに自惚れを悟る名和宏。
納得がいかぬことは許せない若山富三郎。
常に冷静で丸く収めようとするが、終盤で気持ち良くブッ壊れる主演の鶴田浩二。
主人公の妻を演じる桜町弘子の気高い美しさ。
俳優陣も素晴らしいが、冒頭に見せた伏線を引き金に登場人物達の関係がボタンの掛け違いの負の連鎖によって壊されていく構成が見事!!

鶴田浩二の抑えた演技が深い悲しみを感じさせ、
抑えたトーンで話す台詞が突き刺さる。
最後の金子信雄に対して台詞の説得力は凄味すらあるし、後の『仁義なき戦い』に通じるテーマを既に語らせていたことに驚愕!!

タイトルを見た時はなんだ任侠映画かとスルーしかけたが、予想外に期待以上の傑作だった。