「お母さんは小鳥が飼いたいわ」

と母は言うけれど、家族の誰も乗り気ではなくて冷たくスルーされていた。
実家は一軒家だが犬や猫は飼っておらず、
小学生の頃に鈴虫、クワガタ虫、ミドリガメを
飼育したことがあったが長生きはせず、
中学生の終わりに家族で飼い始めた金魚が最も長生きで、僕が高卒で実家を出て6年が経った頃もまだ生きていたが以後は知らない。
母と祖母の実家が彼女達が子供の頃に猫を飼っていたが、猫は死期が近づくと姿をくらますそうで、縁の下から亡骸を見つけて悲しかったからと猫は二度と飼いたくないと意見が一致。
僕は猫が飼いたかったが犬の方が良いと祖母が言い出しても、けっきょくは実現しなかった。

「お母さんネズミ嫌いなのよ!!」

「ネズミじゃないよ!ハムスターだよ!」

「ハムスターもネズミじゃない!!」


同級生が飼っているハムスターに子供が生まれ、
里親を募集していた時に母に相談したのは、
僕が高校にあがった年のこと。
生まれて初めてハムスターと触れ合ってみて飼いたくなったのだが、母はネズミが大の苦手だと知っていながらダメ元で相談してみたのだ。

~時は流れた~


「ハムスターのお尻可愛い」

「ハムスターのお尻にセクハラするために
ハムスター飼いたい」

突然何を言い出すんだ?この娘は?

もう10年位前だと思う。
当時ライブハウスに好きで観に行っていた
インディーズバンドでVOを担当していた女の子が、
Twitter(現:X)にそんな投稿をしているのを読んだ時、一瞬何を言っているのかわからなかった。

だけど!

「でもペットを飼うということは他の生命を預かるということだから、私には飼えない。」 

と投稿を繋げているのを読んだ時、ちゃんと考えているんだなと彼女を見直した。
オルタナティブロックと呼ばれる音楽をバンドでやっており、出番後にお酒を呑んで乱れている姿を見ていたから、意外に良い娘だなと。

ハムスターの話題を見かける時、御本人はもう忘れているかもしれない彼女の言葉を思い出す。