今回も、マークシート方式を導入することによって削減できる作業について解説します。
以下は、東京都教育委員会が公表した「資料1:採点・点検の日数増の成果と課題」です。
この資料では、「従来どおりの採点を行った学校(左側のグラフ)」と「マークシート方式を導入したモデル実施校(右側のグラフ)」の採点・点検にかかった日数を比較することができます。
まずは、『①記号選択式問題:読み上げ方式による採点・点検が終了した日』から解説します。
上のグラフを見ると、「従来どおりの採点を行った学校(左側のグラフ)」は採点を始めて4日目の合否発表準備日(2月28日)に終了しています。それに対し「マークシート方式を導入したモデル実施校(右側のグラフ)」は、採点を始めて3日目の合否判定日(2月27日)に採点・点検が終了しています。
この結果を見ると『OMRとソフトによる自動採点を導入しても、たった1日しか短縮できないのか?』とお思いになるかもしれませんが、そうではありません。
「マークシート方式を導入したモデル実施校(右側のグラフ)」の採点・点検にかかった日数のほとんどは、自動採点にかっかた時間ではなく、自動採点後に行なった読み上げ方式による点検にかかった時間であると考えられます。
(※1)
平成27年度の入試からは、読み上げ方式による点検は行なわれませんので、今後は更なる短縮が期待できることでしょう。(※2)
次は、『②記述式問題:採点・点検が終了した日』をご覧ください。
こちらを比較すると、「従来どおりの採点を行った学校(左側のグラフ)」と「マークシート方式を導入したモデル実施校(右側のグラフ)」はどちらも、4日目の合否発表準備日(2月28日)に終了しています。(※3)
記述式問題の採点・点検に時間がかかってしまった理由は、東京都教育委員会が規定した基準どおりに採点できなかったことにより、誤字・脱字等の表記に関わる採点の誤りが増加したことが原因として挙げられています。
記述式問題の採点の効率化は来年度の課題として改善が検討されています。(※4)
次は、『③合計得点の照合が終了した日』をご覧ください。
これはOMR導入による差が大きく出ています。「従来どおりの採点を行った学校(左側のグラフ)」は採点を始めて4日目の合否発表準備日(2月28日)に終了したのに対し、「マークシート方式を導入したモデル実施校(右側のグラフ)」は、「記号選択式問題の得点」と「記述式問題の得点」の合計が自動的に行われるため、照合作業は不要でした。
OMRを導入すれば、これまでかかっていた合計得点の照合作業時間(4日分)をまるごと削減できるのです。
これらのOMRによる時間短縮の成果を受けて、東京都教育員会はマークシート方式で解答する問題を増加させる方針を発表しています。この発表を聞いて「マークシート方式が増えると学力を正しく見抜けないのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、心配はありません。
この続きは次回、都立高入試からわかるOMRの成果(7)~マークシートでも思考力をはかることは可能~で詳しくお話しいたします。
※1
「 都立高入試からわかるOMRの成果(1)前編 後編 」で解説しましたがOMRによる記号選択式問題の自動採点は1教科50分程度で終了しています。
※2
詳しくは、「都立高入試からわかるOMRの成果(5)~記号選択式問題の採点において照合作業は不要~ 」をご覧ください。
※3
マークシート方式を導入したモデル実施校の方は、「デジタル採点」と「記述式問題ごとに印刷した解答一覧を使った、採点後に結果をパソコンに入力する方法」を併用して実施。
※4
マークシートモデル実施校の教務担当主幹教諭等対象意見交換会では、『マークシート導入の効果の観点から、全て記述式である数学についても、数値や式で解答する問題をマークシート形式にすることが必要』『デジタル採点を効率良くするための改善策としては、部分点の基準の示し方を改善すべきである』という意見が出ています。
詳しくは、「資料2:マークシート方式の導入の成果と課題」をご覧ください。