以下は、東京都教育委員会が公表した「資料4:平成27年度に実施する都立高等学校入学者選抜における実施方針」です。
〇 記号選択式問題の中で思考力をみることができる出題を一層工夫し、マークシート方式の問題を増加
ここでのマークシート方式とは「記号選択式」のことですが、記号選択式は「暗記力しかはかれないのでは?」「当てずっぽうで正解してしまうのでは?」「受検者の能力が正しく判断されないのでは?」と思う方がいらっしゃるかもしれません。
今回はこの方針がうちだされた背景を解説しながら、「記号選択式の問題でも思考力をはかれるのか?」という疑問にお答えします。
まずは背景からご説明します。平成26年度の入試では、追加合格者を出すような重大な採点の誤りはありませんでした。しかし、人の目による評価を要する記述式問題の採点において課題が残りました。
以下は、東京都教育委員会が公表した「資料3:2系統による採点・点検方式の成果と課題」を拡大したものです。記述式問題の採点方法の課題について記載されています。
● 「誤って部分点を与えた」など、『記述式問題』の採点に課題
平成25年度240件→平成26年度:1,004件
※平成26年度の1,004件のうち、874件(約87%)が「誤字やスペルミスの見落とし」など、誤字・脱字等に関するもの
〇 部分点のある記述式問題について、都教育委員会が平成26年度実施の選抜において初めて詳細な基準を規定。規定した基準どおりに採点しきれなかったことにより、採点の誤りが増加
採点ミスが増加してしまった原因は、規定した基準どおりに採点しきれなかったことであると記載されています。
このように記述式問題は、「文法の正確さ」「創造性」などを見るためには有効な問題形式ではありますが、採点評価基準が徹底されていないと公平な採点結果が得られないというリスクがあることも留意しなければなりません。
この課題をうけて、平成27年度の入試では、記述式採点結果の点検を強化するとともに、採点結果に絶対の信頼性がおけるマークシート方式(記号選択式)の問題を増加させる方針となったのです。
記号選択式問題が増えるということは、「より正しい公平な採点結果で受検者の能力をはかることができる」ということです。
また、「暗記力しかはかれないのでは?」「当てずっぽうで正解してしまうのでは?」というご意見もありますが、そのような不安を抱く方は、マークシート方式(記号選択式)と聞くと、単純な4択などを思い浮かべているのではないでしょうか。
難関大学の入試や国家試験でもマークシート方式(記号選択式)が使われるケースはたくさんあります。設問数や選択肢数、出題方法を工夫することで難易度をあげることは可能です。
時間制限のある中で、多くの選択式問題を解いていくとなれば、単純な知識の有無だけでは高得点につながりません。問題内容を整理する力や、分析力、判断力も問われることでしょう。
都立高入試にマークシート方式が全面導入されることが決定されましたが、答案用紙がマークシートになるからといって、記述解答の問題が出せなくなるわけではありません。現在のマークシート採点システムは、マークシートのマーク部分はもちろん、記述解答部分も画像として電子データ化して、パソコンでデジタル採点できます。
答案用紙がマークシートになっても、記述解答をさせる設問を用意することは可能です。
マークシートは、記述式とマーク式を併用できる理想的な形ではないでしょうか。
マークシート自体に不安をお持ちになる方がいらっしゃるかもしれませんが、採点ミスのない入試を実現するための前向きな方針であることをご理解いただけることを願います。
今回の記事を持って、『都立高入試からわかるOMRの成果』の解説は終わりますが、引き続きこのブログでは、マークシートやOMRに関する情報を発信していきますので、今後ともよろしくお願いいたします。