定期演奏会 演奏曲紹介第3弾
フィリップ・スパーク作曲「ドラゴンの年」(2017版)です
この曲は元々はブラスバンドの楽曲で、1984年イギリス・ウェールズの名門ブラスバンドであるコーリー・バンドの結成100周年を記念して作られました。
翌1985年吹奏楽編曲版が出版され、初版出版から32年後の2017年にシエナ・ウィンド・オーケストラの委嘱により、楽器編成とアーティキュレーションを見直した新編曲版が作られました。
2017年版の違いについてはバントパワーの記事にスパークの解説があります
タイトルのドラゴンは、ウェールズの象徴であり、国旗にも描かれているレッド・ドラゴンを指しています。
曲は
第1楽章「トッカータ」
第2楽章「インタルード」
第3楽章「フィナーレ」
の3楽章構成ですが、
当初は4楽章構成で作曲されており、演奏時間の都合で元々の1楽章であった「プレリュード」が割愛され、現在の3楽章構成になりました。
ちなみに割愛された元1楽章はロンドン序曲として出版されています。
曲はスネアドラムとトランペットの攻撃的な速いリズムから始まり、低音、打楽器の緊張感を孕んだリズムが続きます。
まさにトッカータらしく即興的に旋律、リズムが激しく交差しながら進んでいきます。
レッド・ドラゴン(ウェールズ)の戦いの歴史を表しているようにも感じます。
インタルードでは一転して重厚なハーモニーでゆっくりと曲が展開していきます。
レッド・ドラゴンの雄大な姿を讃えるように美しいコラールが奏でられます。
フィナーレでは木管の細かい動きと金管、打楽器のリズムの叩き込みから始まり、ダイナミックかつ、エネルギッシュに曲が進んでいきます。
曲のクライマックスではウェールズの誇りを讃えるように
祝砲と高らかにファンファーレが鳴り響き、
華やかに曲は終わります。
レッド・ドラゴンはウェールズの伝承に登場する大地の守護神で、
ブリトン人とサクソン人の戦いにおける、赤い竜はウェールズの象徴、白い竜はサクソン人の象徴と言われています。
赤い竜と白い竜の伝説には魔術師マーリンが登場したり、
アーサー王伝説につながっていたりと好きな人にはたまらない内容です
西洋ではドラゴンは邪悪な存在とされる事が多いですが、
ウェールズでは守護神であり、民族の象徴、誇りなんですね