続いてご紹介するのが…バレエ音楽「四季」より「秋」です
19世紀半ばから20世紀半ば、帝国ロシア末期からソビエト連邦初期を生きた作曲家アレクサンドル・グラズノフのバレエ音楽「四季」です。
「四季」に関するクラシック音楽といえば、まずはヴィヴァルディのバイオリン協奏曲集、チャイコフスキーのピアノ曲集、そしてハイドンのオラトリオといったところが有名ですが、この曲は何より四季の配列に特徴があります。ヴィヴァルディの四季が、春から始まって、夏、秋と進み、最後が冬で終わるのに対して、グラズノフの四季は、冬から始まり、春、夏と進み、最後は秋で締めくくられています。また、同じロシアのチャイコフスキーは律儀に1月から始まって12月に終わるので、これはグラズノフが描いた農事暦みたいなもので、収穫祭が最後に来ています。
また、この曲はバレエ音楽なので、当然踊りがついています。登場するのは、霜や氷、そよ風、麦穂といった自然現象や自然物で、他には妖精たちが出てきますが、人間は登場しません。 基本的に、何か事件や出来事の類を表現しているのではなく、風景や自然現象を一枚の絵画のように描写しています。
今回、京吹が演奏させて頂く「秋」は、冒頭で華やかなメロディーが出て来て、その変奏曲というスタイルで曲が進んでいきます。この初めの部分は「バッカナール」というテーマがあり、華やかで煌びやかな、お酒の神、バッカナ―ルを表現しています。次に、寒々しい冬になり、霜・氷・霰といったキャラクター達により冬の景色が表現されます。やがて、優しいそよ風が吹き、どこからともなく聞こえる小鳥のさえずりが春の訪れを感じさせます。そして、次に訪れる夏は一面に広がる稲穂をイメージさせるような雄大な雰囲気を出しています。華々しく始まる歓びの秋。待ちきれない金管楽器の急くようなリズムに乗ってバイオリンが高らかに収穫の喜びを歌い上げるところがこの曲のクライマックスでしょう。
この変奏の中で、特に美しいのが『Petie Adagio(小アダージョ)』と単独のタイトルがついている部分です。このPetie Adagioは、小さくて愛らしいものをバレエのデュエットで表現されており、アンダンテ・モッソ(なぜかテンポはアダージョではありません)のゆったりとしたテンポの中で、木管楽器や弦楽器が次々と綺麗なソロをつなげて行き、叙情的な雰囲気に充ちています。
そして、最後はまた賑やかなバッカスの礼賛が響きわたり、バッカナ―ルが再現されて、やがてまた冬が訪れる。そして、アポティオーズへと入り、星の輝きにより華やかでかつ、力強く終わります。
実は、この曲は演奏される際にカットされることが多い曲で、特に最後の秋のPetie Adagioの直後のLe satyreはカットされる場合が多いのですが、今回京吹は、我らの指揮者、滝本さんにより編曲されたものを演奏します。ご来場されるお客様は、このLa satyreの部分を楽しみにしておいて下さい
笑
もちろん、京吹はフル演奏
会場に来て頂く皆さまには、京吹らしい「四季」の世界観をお届けしたいと思っています
担当:まお(Trp)