短編小説「京のおんな」和宮物語<5> | 京こね☆ニュース

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前回までのお話は↓から。
 
 

※フィクションの部分もあります。あと、現代の言葉を使っています。

 ご了承下さい。

 

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和宮物語<5>

 

上様が亡くなられて数日後、私は部屋に置かれたままであった包みを眺めていた。 あの訃報の知らせと共に、届けられた上様からの贈り物。 私はこれを開けられずにいた。 

 

包みをおそるおそる開けてみると、そこにあったのは、色鮮やかな西陣織。

 

「宮様、京のお土産は何がよろしいですか」

 

そうだ、あの時のお土産・・・ 上様自ら選んでくださった私への贈り物・・・

 

私は、あの知らせから見ることができなかった湿板を懐から出す。 そこには、「宮様、お気に召して頂きましたか?」と微笑んで下さっている上様がいた。

 

私の頬には一筋の涙が流れた。 しかし、それは悲しみの涙ではなく、温かい涙であった。

 

 

 

今、私は湿板の上様と一緒に紅葉を眺めている。

 

上様が亡くなられた時より、徐々に私の心は軽くなっていったが、晴れることはない。 今は東京と名前が変わった江戸から、京に来て4年。 いろいろな人の力添えがあって京に戻ってきたが、私の居場所はここではないように感じていた。

 

上様と過ごした時間は、本当にわずかだったけれど、私には江戸が自分の居場所のような気がする。

 

「上様、上様の眠っておられるおそばに行ってもよろしいですか」

 

私は独り言のようにつぶやくと、湿板の愛しい君は、いつもの笑顔で返してくれた。

 
 私が江戸の地に再び踏み入れたのは、翌年のことです。

 

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さ~て、来週からの主人公は、またまた幕末の女性。

 

名だたる志士と関わりを持った芸妓「君尾」です。

 

 


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