短編小説「京のおんな」藤原道綱母<1> | 京こね☆ニュース

京こね☆ニュース

京都の小ネタ・ニュースばかりを集めた「京こね☆ニュース」!
2024年は ”京都こねたクイズ” 1日1問クイズに挑戦!!

本日から新しい小説が始まります音譜
 
前回までのお話は↓からお読み下さい。
 
 
 
さてさて、本日からのお話は・・・
 
藤原道綱母(ふじわらのみちつなのはは)です。
 
藤原道綱さんという方のお母さんで、残念ながら正式なお名前は
 
残っていません。
 
時代背景としては、紫式部より少し前の時代の人で、
 
「蜻蛉日記(かげろうにっき)」を記した人物おねがい
 

3話までです。(つまり、3週続きます)

 

※フィクションの部分もあります。あと、現代の言葉を使っています。

 ご了承下さい。

 

本 本 本 本 本 本 本 本 本 本 本 本 本 本 本 本

 

藤原道綱母<1>

 

 じりじりと暑かった夏も終わりに近づき、朝夕に涼しい風が吹くようになった頃、私は1枚の手紙を見て固まってしまった。

 

 それは、夫が他の女性に当てた恋文だったのだ。

 

 結婚してまだ1年。 ほんの数週間前に一人息子の道綱(みちつな)が生まれたばかり。

 

 なんてこと・・・。

 

 私は頭をガーンとなぐられたような気がした。

 

 

 

 私が藤原兼家(ふじわらのかねいえ)と結婚したのは19歳のこと。夫は右大臣の三男という出世コースをひた走る超エリートの家柄であった。

 

 私も当時は数人の男性から求婚はされていたけれど、どの男性にも惹(ひ)かれはしなかった。しかし、兼家と出会い、猛烈なプロポーズに負けてしまい、結婚することになったのだ。

 

 この時代の結婚というのは、男女は別々に住まいがある。夫は仕事が終わると妻の家に通うのが古くからの習わし。

 

 でも、通うところは何も1人だけではない。 そう、一夫多妻制というやつだ。

 

 兼家も例外に漏れず、私と結婚する前にすでに妻が1人いた。

 

 もちろん、2番目の妻だということは最初から分かっていたことだ。

 

しかし、私には自信があった。1人目の奥さんの家柄は、決して私の家柄とも劣らないし、いろいろな人から「すばらしい歌を詠む」と褒めていただいている。私が夫の愛情を独り占めにしてしまえば、何も恐れることはない。そう考えていたのだ。

 

なのに・・・。

 

息子を生んだ直後のこの絶望。

 

ずいぶん涼しくなった陽気にも関わらず、私の心に芽生えた嫉妬は赤々と燃え上がり、私は眠れぬ夜を過ごしたのだった。

 

                       つづく

 

本 本 本 本 本 本 本 本 本 本 本 本 本 本 本 本

 

 

↓クリックお願いします。


人気ブログランキングへ