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3話までです。(つまり、3週続きます)
※フィクションの部分もあります。あと、現代の言葉を使っています。
ご了承下さい。
藤原道綱母<1>
じりじりと暑かった夏も終わりに近づき、朝夕に涼しい風が吹くようになった頃、私は1枚の手紙を見て固まってしまった。
それは、夫が他の女性に当てた恋文だったのだ。
結婚してまだ1年。 ほんの数週間前に一人息子の道綱(みちつな)が生まれたばかり。
なんてこと・・・。
私は頭をガーンとなぐられたような気がした。
私が藤原兼家(ふじわらのかねいえ)と結婚したのは19歳のこと。夫は右大臣の三男という出世コースをひた走る超エリートの家柄であった。
私も当時は数人の男性から求婚はされていたけれど、どの男性にも惹(ひ)かれはしなかった。しかし、兼家と出会い、猛烈なプロポーズに負けてしまい、結婚することになったのだ。
この時代の結婚というのは、男女は別々に住まいがある。夫は仕事が終わると妻の家に通うのが古くからの習わし。
でも、通うところは何も1人だけではない。 そう、一夫多妻制というやつだ。
兼家も例外に漏れず、私と結婚する前にすでに妻が1人いた。
もちろん、2番目の妻だということは最初から分かっていたことだ。
しかし、私には自信があった。1人目の奥さんの家柄は、決して私の家柄とも劣らないし、いろいろな人から「すばらしい歌を詠む」と褒めていただいている。私が夫の愛情を独り占めにしてしまえば、何も恐れることはない。そう考えていたのだ。
なのに・・・。
息子を生んだ直後のこの絶望。
ずいぶん涼しくなった陽気にも関わらず、私の心に芽生えた嫉妬は赤々と燃え上がり、私は眠れぬ夜を過ごしたのだった。
つづく
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