みなさんこんにちは。前回からの続きです。
今年6月に限定で発売された「近鉄全線2日間フリーきっぷ」で巡った、近鉄沿線乗り鉄道中記をお送りしています。
佳境に入った旅の第2日目(2023年6月14日)。
念願だった「観光特急 あをによし」の指定を幸いに取ることが出来て、奈良から京都へ向っているところです。グーグル地図より。
さて、乗車している「あをによし」は「大和西大寺駅(同)」を出発して「京都線」へ入っています。すでに府県境を越えて京都府内です。
ところで「指定を幸いに」と記しておきながら言うのは憚られるのですが、乗車している先頭4号車(ツインシート)はがらがら、という。
さらにその車内の様子を見てか、西大寺から指定なしで乗り込んで来た外国人観光客も居たほど(隣で車掌さんとの会話でなんとなく理解)。
人気観光特急ながら、このがら空きさには意外な感もするのですが、その理由というのはひょっとすると、京都・奈良間の所要時間の短さなのかも知れません。近鉄ホームページより。
わたしもあまりの豪華な車内の設えに目が釘付けになっていたり、2号車の物販コーナーに足を運んでいるうちに「あをによし」は普通列車を待たせて、とある駅を通過。駅名標を確かめるともう「新田辺駅(京都府京田辺市)」!
新田辺は、京都・奈良の中間地点に当たるところ。よくよく考えると「あをによし」は京奈間を30分、ここまで15分あまり。もう道中は半分まで来てしまっています。なんと早いことか!
そうなりますと、ここからは車窓を愉しみたいと思います。新田辺を過ぎると列車本数も増え沿線にも住宅地が連続するのですが、徐ろに途切れて、巨大な田園風景が左側に広がります。
京都線の見どころが、幸いにここから連続します。まずは「巨椋池(おぐらいけ)干拓地」。
宇治市・久世郡久御山町にまたがる一大干拓地で、北端は京都市伏見区。もう京都市内です。グーグル地図より。
有史以前からこのあたりまでは大阪湾から海が続いていて、山に突き当たるこのあたりに「池(実際は湖)」が形作られていました。
長らく手づかずだったものを、いま北上している「近鉄京都線」を東端にして大規模な干拓事業が行われた結果、京阪神の一大農産物生産地となったことは画期的なことでした。
現在はその干拓地の中を「第二京阪道路」や「京滋バイパス」が通過。それらのインターチェンジが設けられるなど、交通の要衝ともなっています。
そういえば、このあたりには大きな物流センターなども増えて来たので景色は一変した感がありますが、合間のこの風景にはほっとします。
そして「あをによし」は干拓地北端に流れる「宇治川」を長い鉄橋で渡ります(◯)。
この緑色の鉄橋は「澱川橋梁(よどがわきょうりょう)」と呼ばれています。
全長162.4m、竣工1928(昭和3)年10月。「近鉄京都線」の前身「奈良電気鉄道(奈良電。近鉄の母体会社、大阪電気軌道と京阪電鉄の合同出資で設立された)」の手によるもの。
余談ですが近鉄は戦後、ともに相互乗り入れしていた京阪と奈良電の壮絶な買収合戦を繰り広げます。西三荘にて。
そのあまりの激しさに関西の財界有力者が仲介をした結果、近鉄に合併されたのは1963(昭和38)年10月。以降「近鉄京都線」となります。
本題に戻ります。
沿線で行われた、昭和天皇の御大典に間に合わせるべく、わずか半年間の工期で完成させたという、昭和初期の我が国を代表する、歴史的な建造物が「澱川橋梁」です。
ところで「宇治川」を渡っているのに、川の名前が違う?さらに「淀川」ではなく「澱川」とは?と、以前から不思議に思っていたのですが、先ほど触れたように、大阪湾からの巨大な海がここで池・湖となる(→水が澱む)から来ている…というのですが。諸説あるようです。
いまは列車に乗っている側からの眺めですが、鉄橋を全体から見渡すと、これだけの大規模な橋梁にも関わらす、橋脚が一本もありません。出典①。
橋自体は「単独トラス橋」と呼ばれるものですが、鉄骨の自重のみならず、列車の重量も加わりますので、橋脚がないがゆえに、見る度によくこれ、支えられているなと感心します。
建設時、この川沿いに旧陸軍の演習場があった関係で、鉄橋は架けても良いが橋脚は(出来る限り)作ってはならないという、大変特殊で困難な事情に応じたゆえの構造なのでした。当時の力関係がわかるエピソードです。同。
しかし、幾度見てもすごいものです。車中から、あれこれ述べているだけなんですが(汗)
ちなみにこの「澱川橋梁」周辺の鉄道網も、なかなか興味深い配置です。
「近鉄京都線」は南北に、そして橋梁を真横に「京阪宇治線」が東西に交差。すぐ西側では「京阪本線 中書島駅(京都市伏見区)」を境に、北東に進行方向を変えようとするところ。
つまりここからは歴史の深い、伏見の中心部へと列車は進んで行きます。
もちろん、見どころはこの先にもあります。
次回に続きます。
今日はこんなところです。
(出典①「フリー百科事典Wikipedia#澱川橋梁」)