NHK朝ドラ「舞いあがれ!」一週間を振り返る〜第20週「伝えたい思い」後編 | 「EXPO2025 大阪・関西万博訪問記」ありのまま生きてこう 自分を磨きながら

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みなさんこんにちは。前回からの続きです。




昨年10月から放送がはじまった、NHK朝の連続テレビ小説「舞いあがれ!」。

長崎・五島列島とともに、おらが街・東大阪がその舞台になっている作品です。


このドラマ、気づいたこと、印象的だったことなどを毎週、取り上げて述べてみようという企みを、第1週からお送りしています。



当週は第20週「伝えたい思い」編。記事前編はこちら↑



読売大阪朝刊特別版「よみほっと」2023(令和5)年2月12日付け 7面より。



それでは、この週の振り返り後編をお送りすることにいたします。




舞台は、2014(平成26)年6月。主人公・岩倉舞(福原遥さん)28歳の頃です。



「長山短歌賞」という、権威ある賞を受賞した幼馴染の貴司(赤楚衛二さん)。

貴司に対する、その本心に向き合ったらどうかと、共通の親友・久留美(乃木坂46・山下美月さん)に背中を押された舞。それに心中、激しく悩むところから、当週ははじまりました。


舞の苦悩というのは、短歌賞受賞から貴司が店主を務める古書「デラシネ」に、頻繁に出入りするようになった、歌人志望の秋月(八木莉可子さん)の存在でした。




家庭環境から、高校を中退して大阪へ出て来たという秋月。荒んだ心を、短歌を拵えることで乗り越えたいと、切々と話す秋月に、貴司は真剣に耳を傾けます。


ただ、貴司を私淑するあまり、これまで頻繁に足を運んでいた舞のことを、ライバル視するような状況になります。




ある日。秋月が「デラシネ」に居るのを気兼ねして、すぐに立ち去った舞を追いかけて、なんとこんなことを告げます。



このシーン…画像だけではわかりにくいのですが、どんな相手でも相づちを打ちながら、真剣にその話しを聞くのが、いつもの舞。


それがまったくなく、終始表情がこわばったまま。こんな舞は、見たことがありません。



よほど、これは舞にとってショッキングなことだったのでしょう。
それでも、短歌という同じ領域で話しが通じる秋月のことを、こう久留美に伝えます。



わたしは短歌が良くわからんから、手伝えることがわからないという舞に、久留美はこう激を飛ばします。さすが、小さい頃からふたりをよく知る久留美です。




そんな中、貴司を担当する編集者・リュー北條(川島潤哉さん)に、苦心して出来上がった短歌を確認してもらうという段になりました。

ただ、これまでのものとまったく変わり映えしない地味なものだと、きついダメ出しをされてしまいます。



しかし、先週に登場したリュー北條という、この編集者。のっけからけったいなので、ひょっとして貴司は喰い物にされるのか、と心配になっていたのですが…第18週より。





このやり取りを見るに、北條は、編集者として実に真っ当なことを考えているのだな、と感じました。




大手の出版社から歌集を出すということは、アマチュアではなく、プロとしての証。

言葉は荒っぽい北條ですが、大勢に伝わる歌、一人でも多くの人に伝わる歌を詠む(≒売れる歌集を出す)ということは、それだけ貴司自身の表現力や、さらに人間としての幅も広げられる、ということ。


作家の特性をよく把握し、それを二人三脚で延ばそうとするのが編集者の役目、という話しを以前、なにかで読んだことがあるのですが、これ、まさにそうなのではと感じました。




秋月と、舞の関係を北條はすでに読み取っていたようです。それならば、と「相聞歌(恋の歌)」を書いてほしい、と貴司に伝えます。



しかし、さらにそれでスランプに陥ってしまった貴司。舞に、悩みを打ち明けます。



それに、答える舞。

しかし、これは…貴司が拵える短歌が好きだ、というよりは、素晴らしい短歌を拵える貴司という人のことが好きだということでは。


貴司は、これまでの舞に対する気持ちに蓋をしていたことに、これで気づいたようでした。ただ、余計なことをいっさい割り込ませず、本当に自分が思っていること(秋月さんの役割)を純粋に伝えようというのが舞ならでは、というか。



しかし、その舞もどうしても、薄々は本心に気づいていながら、これまでの友人としての関係という殻を、どうしても破れないままでした。



そんな中、舞は秋月とばったり出会います。

秋月も、そんなふたりの微妙な関係をすでに見抜いていました。そして、自分は貴司に自分の気持ちをちゃんと伝えると、舞に告げます。




秋月はその足で貴司に、隣で支える灯火のような存在になりたい、と本心を告げます。

ただ貴司は、こう返事をします。



それならば、どうして舞に本当の気持ちを伝えないのか。貴司は期せずして、叱咤激励されることになります。



さらに後日。悩むあまり、どうしても恋の歌を詠めない貴司のもとにどうしてか、へべれけになった北條がやって来ます。こないしてでも、いや、こないでもしないと言えなかったのか。



北條からも、本当の気持ちを書けよ、と貴司は叱咤されます。貴司の舞に対する本心を、きっとはっきり、北條も知ってのことでしょう。


敢えて、隠すようにしていた恋の歌を書くことが、舞への本心を露にして、伝えることになることに、貴司はここに至ってようやく気づいたようでした。



ところで北條と秋月は、貴司が「デラシネ」を空けている時こんなやりとりをしていました。


貴司にリクエストした「恋の歌」について、北條が、いままで拵えたことがないからと、貴司の苦悩を慮るところ。



しかし秋月は、貴司が北條に出した300首の中にたった一首だけある、と気づいていました。

それは「君が行く 新たな道を 照らすよう 千億の星に 頼んでおいた」という歌。



実はこの歌、全国各地を放浪しながら旅している時、五島列島で拵えて、舞に贈ったもの。


めぐみが社長に就くとともに、パイロットへの夢を完全に断ち切り、ともに「IWAKURA」を再建しようと決意していた頃のこと。

まさに、新たな道を行こうとし始めていた舞へのメッセージでした。第16週より。


この短歌を、舞はとても気に入っていたようで自分のデスクに飾ったり、貴司とこの短歌について話しをする描写が、複数回ありました。

この時には、先ほど触れたように、舞の新しい人生の選択に向けて、ただエールを送っているものだとばかり、思っていたのですが…


そのような経緯があったとは、つゆにも知らない秋月。しかし、これが恋の歌だという理由は「本歌取りだから」だと続けます。



「本歌取り」とは、以前に詠まれた歌の一部を拝借し、新しい歌を作るという技法のこと。

さらに、言葉尻だけではなく、本来の歌の意味合いをも踏襲するということだそうです。高校の、古典の授業で習った記憶があるのですが…


貴司が拝借した本来の歌というのは「君が行く 道の長手を 繰り畳ね 焼き滅ぼさむ 天の火もがも」という短歌でした。日本最古の歌集「万葉集」にも収録されているものだそうです。

狭野茅上娘子(さののちがみおとめ)という、奈良時代の朝廷に仕えた女官によるものだそうで、ある時に越前国(現在の福井県)に流刑(処罰としての追放)されることになった夫に対しての激しい恋慕が記されている、と調べてみるとありました。


現代訳にすると「愛するあなたが行く(越前国への)流刑の道のりを、手繰り寄せて折り畳み、焼き払ってしまうような、天の神からの火がほしい」といったところでしょうか。


ニュアンスはだいぶ違いますが、愛する人に対する熱い心境は同じうもの、と解釈しました。

秋月の指摘のように「君=恋の相手」
ただ、その恋の相手が舞とは、この時は秋月も気づいてはいません。


ところで、現在の日本の元号は「令和」です。
2019(平成31)年4月1日、改元の1ヶ月前に発表されたことは、いまでもよく覚えています。



この「令和」が典拠にしたのは「万葉集」。
奇しくも、貴司が本歌取りした歌集と同じということに、はたと気づきました。朝日大阪夕刊 2019(平成31)年4月1日付け 9面より。余談でした。


しかし、なんやらかんやらやり合いながらも、秋月と北條、なかなかウマが合うような気がします。プロの編集者が見抜けなかったことを、独学の秋月が見つけたのですから、すごいこと。



貴司に自分の気持ちを伝えたものの、拒絶された秋月は、その足で舞の元を訪れます。
そして、見つけたのが「君が行く」の短歌がしたためられた、貴司から舞への絵葉書。





この短歌が、舞に向けてのものだったとこの時に気づいた秋月。



このシーン、貴司へなんで舞に本心を伝えないのか、と告げた後のこと。そして今度は舞に、本心を聞きに行ったらどうかと。



そして舞は、貴司に対する本心を伝える決心がつきました。
貴司の本心を、ようやくにして知ってのこと。



いや、伝えなければならない、そうでなければきっと後悔するであろうと、舞はようやく気づいたのでしょう。




舞、貴司ともに、その心中はまったく同じでした。本心を伝えて、もしそれが上手く行かなければ、二度とそのままの関係では居られないということへの、恐れからだったのでしょう。






知らず知らずの間に、互いを支え合っていた舞と貴司。それが、なくてはならないかけがえのないものだと、互いに気づいたのでした。





「幼馴染の友達」という関係からついに殻を破り、ふたりして互いを探り合っていた気持ちがようやくにして、通じ合った瞬間でした。

公園のベンチに置かれていたノートには、秋月と北條の激を受けてであろう、貴司が拵えていた恋の短歌が、記されていました。


「君」とは、もちろん舞のこと。ついに、舞と貴司は結ばれました。



期せずして、北條に求められていた恋の歌に向き合うことが、すなわち、舞への本当の気持ちに向き合うことになった貴司。

歌人としてもですが、北條の指摘するように、人間としての成長を、苦悩しながら自分の力で貴司は遂げたのでした。



そして、貴司の真意を知り、ふたりに本心を告げないのかと、背中を押した秋月。その表情には、清々しささえありました。


この作品、最大の転換点に辿り着いたであろう当週でした。さまざまなことがありましたが、ああ、本当に良かったです。


結ばれるべくして、結ばれたふたりでした。




次週、第21週「新たな出発」予告編より。
なんと、舞が青春に心血を注いだ人力飛行機サークル「なにわバードマン」が、ここに来て!



そして、個人工場から「IWAKURA」を支え続けた笠巻(古舘寛治さん)。やはり、退職に…





そして舞や貴司は、あらたな取り組みを計画しているようです。オープンファクトリー…


さらに「なにわバードマン」の先輩・由良(吉谷彩子さん)と、航空学校の同期・倫子(山崎紘菜さん)が居るということは…おめでとう!のシーンでしょうね。



次週も、期待して拝見したいと思います。

今日はこんなところです。