みなさんこんにちは。今日の話題です。
もう昨年の末のことになりますが、「映画 男はつらいよ 第50作 お帰り 寅さん」が公開になりました。
寅さんが大好きなわたしにとっては、待ちに待った作品です。とは言えど、なかなか観に行く時間が取れなくて…
大晦日、12月31日になって、ようやく念願かない、観に行くことが出来ました。
クルマでやって来たのは「イオンシネマ大日(大阪府守口市)」。
朝一番の回でした。いやしかし、前日から楽しみで楽しみで、あまり眠れぬほどでした。
こんなわくわくした気分になるのは何年ぶりか…というのは、決しておおげさではありません。
さて、拝見した感想なのですが…一言でとても言い表すことなど出来はしないのですが、作中のさまざまなシーンを観るにつけ、ポスターにあったこの文面まさにその通りに感じました。本当に、理由はみんな違うけど、まさかもう一度逢えるとは…です。
寅さんを演じる渥美清さんはすでにこの世にはもう居られないのですが、年を重ねた寅さんを取り巻く登場人物の回想で、次々と登場します。
今回の新作の主役は、作品晩年に寅さんが恋のコーチ役を買っていた甥っ子の満男君(吉岡秀隆さん)なのですが、個人的にものすごくすばらしいなと感じたのは、ミドルエイジになってから小説家に転身している満男君の端々の所作のひとつひとつに、かつて満男君へ親身になって接していた寅さんの優しさ、人間の温かさ(そして人の好さ)という、これまでの「男はつらいよ」シリーズでいちばん魅力になっていることが、父親になった満男君へ、そして満男君の娘、ユリ(桜田ひよりさん)へ、実に見事に伝わっているのだなということでしょうか。
もちろん、両親のさくらさん(倍賞千恵子さん)、博さん(前田吟さん)たちの人柄も多大なものだったのでしょうが…
シリーズ終盤では、浪人し、大学に入学出来たものの、就職氷河期にぶち当たり、苦労して就職した後も、さまざまな悩みがあったことが作品を通じて窺えるのですが、そんな中でもいつも自分の味方になってくれて、人生について何か、を教えてくれたおじさん(寅さん)という存在は、実に大きかったのだなとあらためて感じますし、世間からは変人扱いされながらも、他の人にはない義理人情の塊だったおじさんを慕っていた満男君には、見事にそのDNAが引き継がれているのだなとも感じます。
親になり、そして小説家にもなって、余裕さえ感じられる現在の満男君の姿を観るに、さまざまな苦労を乗り越えて来たのだろうと思えますし、それがあってこそ、きっとおじさんの持つ稀有で豊かな人間性、「人と人とのつながりのあたたかさ」とか「人を思いやる気持ち」を理解して受け継ぐことが出来たのではないのだろうかと。
立派に成長し、人間的に円熟した満男君の姿を、人間臭く、人情にあふれる寅さんの姿に、自然に投影してしまいました。
そういったことで、満男君を経由して「お帰り 寅さん」というキーワードには、しっくり来るものを感じました。
ところで、この「お帰り 寅さん」の見どころというのは、やはりこの方の復帰でしょうか。
後藤久美子さん。満男君の恋人で、かつては結婚の約束までした泉ちゃんを演じています。
朝日大阪夕刊 2019(令和元)年12月29日付け 2面より。
「お帰り 寅さん」公開に当たっての、インタビューが掲載されていたのですが…
新作が発表される、という話しをはじめて耳にした時、満男君と泉ちゃんは、てっきり結婚しているだろう!と思っていたのですが、なんとそうではなく、泉ちゃんは大学を卒業後にヨーロッパへ渡りすでに家庭がある、そして国連機関で活躍している女性、という設定になっていました。
仕事の都合で、たまたま訪日した時に、満男君と偶然の再会を果たす…という様子が新作では描かれているのですが、一見、華やかな人生を送って来たようにも見える泉ちゃんにも、かつてのシリーズでも描かれていた家庭の複雑な問題などがあり、実にいろんな苦労があったのだということも窺えますし、新作でもその描写がありました。
泉ちゃんは寅さんを「おじちゃま」と呼んで、満男君同様に心底慕っていたのですが、「温かい家庭の大切さ」に言及する姿が新作でも幾度か見られました。
先ほどの満男君の話しにもなりますが、やさしいおじさんが居て、両親やおいちゃん、おばちゃんたちが居て…という、温かい家庭がある、帰るところがある、という満男君の環境が泉ちゃんの憧れでもあったのでしょうし、そんな中でも、稀有なほどの人間臭ささえ感じられる「寅さん」という存在は、泉ちゃんにとって、ずっと大切で、大きなものだったに違いないのだろうと感じるものでした。
やはり、「寅さん」は人情の人。やさしくて人間臭い人。「人間の温かさ」「人と人との思いやり」の奥深さと大切さを具現化している人。
そして、寅さんに最も影響を受けたであろう満男君が、ちゃんとそれを引き継いでいること。
寅さんがいない現在にも「男はつらいよ」にはそういった要素が、大きな柱として貫かれていることをあらためて噛みしめられた、いい作品でした。
今日はこんなところです。