
先日より、Nゲージ規格の鉄道模型「鉄道コレクション」(発売元トミーテック)のラインナップの中で、先月末に発売された京阪電車の新商品について取り上げています。
ところで、上の画像では同塗装の車両が並んでいます。
見るにまったく別の車種なのですが、それに至ったいきさつも加えて、今日はこちらのうち左側の車両、大津線700形について見て参りたいと思います。
右側は大津線80型、前回取り上げました↓
当ブログ
鉄道コレクション 「京阪電車大津線80型 連結車・非冷房」2両セットを細見する
(2017年2月1日アップ)

では、さっそくこの「京阪電車大津線700形(80型塗装)2両セット」についてです。

セットされている2両を並べました。700形、701号車と702号車です。
行先表示は「石山寺(いしやまでら、滋賀県大津市)」となっているのですが、現在この700形が専用車両として走るのはその大津線に属する、石山坂本線(いしやまさかもとせん)という一路線です。

「京阪時刻表2006」(京阪電気鉄道株式会社刊、平成18年、P7)より。
石山坂本線は大津市内、その多くはびわ湖に沿って路線が設けられており、駅間距離も短いなど、いまも昔も大津の市内電車として親しまれています。沿線には寺社仏閣などの観光名所も多く、比叡山へのアクセスとしても知られる路線です。

そんな石山坂本線専用車両の700形なのですが、客用扉は2枚で、両開き扉という仕様です。乗務員扉の斜め上にはコーポレートマークがデザインされているのが目につきますが、京阪の開業100周年を期してあらたに制定されたもので、京阪の全車両で見られます。

ところでこの700形、冒頭でも触れたのですが「80型塗装」という商品名がつけられています。
大津線を構成する、京都・大津間を結ぶ京津線(けいしんせん)で長年活躍して来た80型が、昭和36(1961)年の登場から55年を迎えるのを記念して、かつて京津線でも準急列車で充当された経緯のあるこの700形1編成2両にその復刻塗装が施されたものでした。
現在でも見ることの出来る復刻塗装なのですが、期間限定ということなので、このようにして手元に残すことが出来るというのは模型の醍醐味ではないか、といまさらながらに思ったりします。

さらに、「細密イラストで見る 京阪電車車両の100年」(イラスト 片野 正巳、京阪電気鉄道株式会社発行、ネコパブリッシング刊 2010年)より、以下を拾ってみます。

ちなみに元塗装はこちら。京阪の通勤型車両で長年、親しまれて来た緑の濃淡をまとっています。大津線以外の京阪線(京阪本線・鴨東線・中之島線・交野線・宇治線の総称)ではすでにこの塗装は新しいものに変わっているのでもう目にすることは出来ないのですが、石山坂本線ではいまだ健在です。

続いては車端部の様子です。小柄な車体ではあるのですが、整然とした印象です。

ところで、今回の記事を上げるに当たり、手元にあった写真をあれこれ見ていますとこのようなものを見つけました。
その石山坂本線・坂本駅(さかもとえき)に到着する列車から撮影したもので、右側に停車しているのは500型という形式の車両です。平成3年1月撮影。

これが500型、もともとは昭和54(1979)年から6両、製造された形式です。ですが…

さらにひもとくと、500型はやはり同じ大津線で活躍していたこの260型(昭和32年~43年製造。平成9年全廃)という形式の車体を流用して建造されたという経緯がありました。そして…

その他にも、かつて石山坂本線にはこちらの350型(昭和41年~42年製造、平成9年全廃)という形式も存在していました。
いずれにも「2枚扉・両開き」という共通項があるのですが、実は700形という形式は、これら500型(もとは260型)・350型の車体を流用し改造を施したものを、新たに製造した車両機器に載せて建造されたという経緯がありました(製造は平成4~5年にわたる)。
参考までに、毎度おなじみ「Wikipedia #京阪700形電車(3代)」から、車体を流用した元形式を拾ってみますと…
- 701 1992年4月24日竣工(361の車体流用)
- 702 1992年4月24日竣工(360の車体流用)
- 703 1992年7月28日竣工(359の車体流用)
- 704 1992年7月28日竣工(358の車体流用)
- 705 1992年11月11日竣工(285→501の車体流用)
- 706 1992年11月11日竣工(286→502の車体流用)
- 707 1993年2月13日竣工(283→503の車体流用)
- 708 1993年2月13日竣工(284→504の車体流用)
- 709 1993年5月27日竣工(281→505の車体流用)
- 710 1993年5月27日竣工(282→506の車体流用)
となっていました。特に、三代にわたって車体流用がなされたという例はなかなかないものだと思われます。

そういうことで、過去、大津線で活躍して来た車両の歴史をあたかも伝承しているかのようなこの700形の経歴でした。
こういった、車体を流用して新しく製造した機具を搭載することで新形式を建造するという例は京阪では特に珍しいものではなく、大津線のみならず、京阪線の車両でも複数例見られるものです。ですが、いずれの例でも内装が実に整備されているので、古い車両だという雰囲気を感じさせられないということが共通することのように感じます。

付属のステッカーはこの内容でした。
現在、運用されている石山坂本線の定期列車は普通のみの設定なので、「坂本・石山寺・近江神宮前」などというように、単に行先だけの表記がなされています。
ですが、この形式が登場した頃には、浜大津と京都市内の京津三条駅とを結んでいた京津線の準急に充当されていたので、こちらには「準急 三条」や「準急 浜大津」といったものも再現されています。わたしなどには懐かしいものです。

時代を超えたコラボレーション?を感じる、今回の「700形」と、その塗装のもとになった「80型」のラインナップでした。思い出のある車両を入手することが出来てよかったなあという今回の発売だったように感じます。
ちなみに、この両形式が共存していたのはわずか5年半ほどでした。
おつきあいくださりありがとうございました。
今日はこんなところです。