表題の旅、いよいよ「根室本線」で最大の難所、「狩勝峠(かりかちとうげ)」に入って来ました。

一両編成のディーゼルカーは、エンジンを唸らしながら勾配をゆっくりと登って行くのですが、しばらくすると平坦なところに入りました。ここが「峠のサミット」のようです。

延々と広がる「十勝平野」が、遠景ながらもはっきりと望めました。

地図で確認しますと、ちょうどこのあたりでしょうか。
先ほどの景色は矢印方向を見たものですが、その先にはこれから向かう「新得(しんとく、十勝管内新得町)」の市街地が広がっています。
さて、乗車しているこのディーゼルカー「快速狩勝 帯広ゆき」ですが、ときおりおもむろに停車を繰り返します。

気になりましたので、運転室の後ろに様子を伺いに来ました。
新人運転士の方が習熟運転なのでしょうか、「富良野駅」から添乗の運転士さんが乗り込み、しきりに確認喚呼する声が聞こえて来ていました。こういった光景はときおり見かけますが、なんだか心強い感を受けます。

こちらでも停車。このあたりは単線なのですが、線路が三本並んでいることがわかります。

実は、この区間は鉄道趣味的に大変興味深い区間です。
現在、乗車しているのは「根室本線」、地図では左上から「落合駅(おちあいえき、上川管内南富良野町)」から南へ向かっているのですが、左下からも別の路線がやって来ます。
「新千歳空港」の至近にある「南千歳駅(みなみちとせえき、石狩管内千歳市)」から分岐している「石勝線(せきしょうせん)」という路線です。
「札幌~帯広・釧路・根室方面の短絡」を主目的に、昭和56(1981)年に開業した高速運転が可能な高規格の路線なのですが、この「石勝線」と「根室本線」とがこのあたりで合流しています(赤い☆印付近)。
ただ、一般的な場合ですと、合流する箇所に駅が設けられているのですが、この区間については交点に駅の設置はされておらず、代替として「単線区間の行き違い」のために「信号所」がところどころ設けられています(赤い☆印…新落合信号所、青い☆印…新狩勝信号所、黒い☆印…広内=ひろうち=信号所)。
先ほど、ちょこちょこと停車していたのはこのためでした。
また、興味深いのは「路線の区切り方」でしょうか。
本来であれば、赤い☆印の「新落合信号所」を境に「左側は石勝線、右側は根室本線」と区分されるのでしょうが、実際にはこの信号所で二つの路線が合流したのちも、峠を下った「新得駅(しんとくえき、十勝管内新得町)」までの区間は「石勝線・根室本線の二重戸籍区間」という扱いになっています。

さらに調べてみますと、もともとはこの信号所は駅として開設する予定だったそうですが、周辺に人家がいっさいないがために利用の需要が立たず、現在のような「信号所」としての開設に至ったとのこと。厳しい自然環境であることが伺えます。

そんなことで、現在停車しているのはそのうちのひとつ、「広内信号所(ひろうちしんごうしょ、十勝管内新得町)」です。もう「十勝管内」に入っています。
ここで10分ほど停車し、対向の列車と行き違いするとのこと。
車窓の様子を観察してみるのですが、このように一面、ただ雑木林が広がるのみでした。人家の姿を探してみたのですが見当たらず、細い砂利道の道路が一本、あるのみでした。別世界に来たように思えます。

しばらくしますと、札幌ゆきの「スーパーおおぞら号」が猛スピードでやって来ました。「高規格路線の名に違わず」、といったところでしょうか。

こちらの「快速狩勝」も発車。広大な森林地帯の中をひた走ります。

黒い☆印の「広内信号所」を出ますと、かなりの急カーブで十勝平野へ下って行きます。勾配の急さは、列車からもよくわかるほどですが、このようなカーブになっているのは、くねくねと距離を稼ぎながら勾配を上下する工夫ゆえです。

下りの道のりは実に快速でした。


山越えの最後のカーブを過ぎたところで、車窓右側にこんな景色が飛び込んで来ました。「新得山スキー場」だそうです。

「降雪のないスキー場」というのはこんな感じなのですね。こうして見ますと、ゲレンデというのが結構な斜面であることに驚きます。

車窓からもその険しさを感じた「狩勝峠」を越え、ようやく「新得駅(しんとくえき、十勝管内新得町)」に到着しました!
長い道のりでした。まだ午前11時前なのですが、ひと仕事終えた気分です(笑)
長駆、旭川から乗車して来た「快速狩勝」とはここでお別れ。
終点の「帯広」まではあと45分ほど、広大な「十勝平野」を走ってたどり着きます。

列車が去ったのち、構内を眺めてみるのですが、これは広いですね。かつては先ほどの「狩勝峠」を越えるために「補助」として連結された機関車が所属していた「新得機関区」があったそうで、その名残のようです。


では、改札を抜けて駅周辺の様子を見てみたいと思います。
次回に続きます。
今日はこんなところです。