
さわやかな風が吹き抜ける、午前9時過ぎの「富良野駅(ふらのえき、上川管内富良野市)」です。

30分ほどの停車中、後方の一両を切り離した上「快速狩勝 帯広ゆき」となった列車に舞い戻りました。富良野までは座席がさらっと埋まる感じだったのですが、数人がちらほらと座る状況でした。
この駅をはさんで、まるで別の列車になったようです。

ホーム先端部より。広い構内を、強さを増した風が吹き抜けて行きます。
さて、この駅から乗車するのは「根室本線(ねむろほんせん)」です。
「岩見沢、旭川」の間に位置する「函館本線」の「滝川駅(たきかわえき、空知管内滝川市)」から分岐、この「富良野駅」を経由し、古くから交通の難所として知られた「狩勝峠」を越えて大穀倉地帯の「十勝平野」に入り、「帯広・釧路」と進み「根室」までを結ぶ大幹線です。

「札幌」から道東の各都市への輸送需要は高く、古くから数多くの特急・急行列車が運転されているのですが、以前は「函館本線~根室本線」という遠回りのルートが主なものでした(緑の線)。
ただ、かなりの遠回りであることと、滝川以南の区間は線形がよくなく、速度も出せない…といったことから、昭和56(1981)年に「南千歳駅(みなみちとせえき、石狩管内千歳市)」から「夕張駅(空知管内夕張市)」を結んでいた「夕張線」を延伸する形で、高速運転が可能な高規格の「石勝線(せきしょうせん)」をあらたに建設、「十勝平野の玄関口」である「新得駅(しんとくえき、十勝管内新得町)」につなぐことで、「千歳線~石勝線~根室本線」というあらたな「道東ルート」が開設されました(赤い線)。

「石勝線」の開業で「根室本線(滝川~新得間)」はそのメインルートから外れ、特急・急行などの優等列車は姿を消し、静かな「ローカル線」となりました。
これから乗車する「富良野駅」から南の区間は、「上川・十勝管内」にまたがるけわしい山々の間を縫うように走って行きます。

「富良野駅」を発車しました。少し曇って来たように思えます。



富良野の駅前から見えた「芦別岳(あしべつだけ)」が徐々に近づいて来ます。
山部駅(やまべえき、上川管内富良野市)にて。

しかし、いい風景です。このあたりは道内でも降雪量が多い地域だそうで、列車は徐々に山間部に入って行きます。
落合駅(北海道)- 北海道空知郡南富良野町にあるJR北海道根室本線の駅

しばらくしますと、この大きな湖の一端を長い鉄橋で渡ります。

「かなやま湖」という湖でした。
かなり細長く大きい形状で、しばらく列車に並行していたのですが、空知川を堰き止めて建設された「金山ダム」にともなってつくられた「人工湖」だそうです。ダムと湖の建設に当たっては、予定地の集落が移転を余儀なくされたほか、この「根室本線」も別線に移設されるなど、大がかりなプロジェクトだったようです。
完成は昭和42(1967)年とのこと。

その「かなやま湖」のほとり、かつては石灰石の輸送に使用されていたという、何本もの側線が並ぶ広い構内を持つ駅を通ります。東鹿越(ひがししかごえ)にて。

少し走ったところで、この「幾寅駅(いくとらえき、上川管内南富良野町)」に到着。

ホームから眺めていますと、この朱色のディーゼルカーが停車しているのを発見しました。車内にも入ることが出来るようです。
実はこの「幾寅駅」は、あの映画「鉄道員(ぽっぽや)」(浅田次郎さん作、平成11年映画化。高倉健さんが主演)で登場した「幌舞(ほろまい)」という駅のモデルだそうで、ディーゼルカーも作中に実際に登場した「キハ40形」を平成17(2005)年の廃車後、当地で展示しているとのこと。ファンの方々にはたまらないものでしょうね。
ちなみに、駅名はアイヌ語の「ユク・トラシ・ペッ(鹿の・上る・川)」に由来するもので、これを意訳したものが、先ほど登場した隣駅の名称にある「鹿越(しかごえ)」だそうです。一帯は鹿の生息地だったのでしょうね。

隣の「落合駅(おちあいえき、同)」に到着。
降雪対策が施された特徴的な形状の屋根を持つ、風格のある立派な駅舎です。

「落合」という駅は、ここ以外に全国でも見かける名称です。
毎度おなじみ「Wikipedia #落合駅」を見てみますと…
落合駅(北海道)- 北海道空知郡南富良野町にあるJR北海道根室本線の駅
※この駅です
落合駅(東京都) - 東京都新宿区にある東京地下鉄東西線の駅
陸前落合駅- 宮城県仙台市青葉区にあるJR東日本仙山線の駅
会津落合駅 - 福島県南会津郡下郷町にある会津鉄道会津線養鱒公園駅の
旧称
美作落合駅- 岡山県真庭市にあるJR西日本姫新線の駅
備後落合駅- 広島県庄原市にあるJR西日本芸備線・木次線の駅
落合駅(樺太)- 樺太豊栄郡落合町にあった日本国有鉄道 樺太東線の駅
と、各地に「落合」と名の付く駅が点在しています。

「落合」というのはもともとは「街道が交わる場所(落ち合う)」と言った意味があるようで、「街道筋」であった場所にこの名前が当てられることが多いようです。

ホームには、この鮮やかな標識が立っていました。
降雪の高さが一目でわかるものですが、このあたりは「道内随一の多雪地帯」ということもあり、冬季にはこの「春爛漫」の頃とはまったく異なる車窓が展開されるのでしょう。
雪というのは、景色をまったく変えてしまうものですね。

徐々にエンジン音が大きくなるとともに、列車のスピードもゆっくりになって来ました。「上川・十勝管内」の境、「狩勝峠(かりかちとうげ)」にかかって来たようです。
次回に続きます。
今日はこんなところです。