動く音が忙しなく聞こえる。
どこに座っていても、落ち着かない。
「こんにちはー。」
二階にも聞こえる声で
珠理奈は家へと上がって来た。
軽快に階段を登る音と
慌ただしく鳴る心臓の音と重なる。
「玲奈ー。宿題やったかー?」
ノックもせずに入って来るから、
息が止まった。
「え?あ?あぁ!宿題!宿題ね。
やった!やってあるよ!」
ノートを開き、確認する。
宿題、宿題…何だったっけ?
「もう、玲奈、宿題やってないでしょ。」
珠理奈は、開いたノートを閉じ
手を重ねてきた。
「宿題、覚えてる?」
たずねてくる顔が近づき、とっさに離れたら、
椅子から落ちた。
「ちょっと、大丈夫?」
重なったままの手を引かれ、
起こしてくれた。
「調子悪いなら……帰った方がいい?」
椅子に座った私を珠理奈は心配そうな顔して
見つめている。
「……帰らないで。」
私の言葉に一瞬黙ったと思ったら
思いっきり顔を緩ませた。
「やば……可愛い。」
珠理奈は、私の頭を撫で喜んでいた。
「宿題、もう良いや。」
嬉しそうに私の頭から手を離さない。
先生なのに、良いの?
それよりも、この状況、
恥ずかしいんだけど。
「もう、終わり。」
私の頭にある手を退かし、距離を取る。
「早く、勉強しよう。」
私が机に逃げれば、
横で大人しくしてくれた。
「宿題もそれ位にやってくれたらなー。
玲奈、宿題は、玲奈の好きな物だよ。」
「好きな物か……あっ、苺のケーキ
好きだよ。」
「子供みたいで可愛いね。
でも玲奈の事、一つ知れた。」
私を子供扱いして笑う。
その姿が悔しくて、言い返す様に聞いてみた。
「じゃあ、珠理奈は、何が好きなの?」
「んー玲奈が私の名前を呼ぶ声かな。」
