6月初め、息子が米国に出発した。アメリカの新学期は9月なのだが、サッカーのチームに合流して馴染むよう早めに行くことになったらしい。そのためか、まだ学生ビザは取れず、7月半ばに10日ほど帰る。その辺の段取りは息子がコーチと直接やり取りをしていて、こちらは、いつ出発するとか、いつ帰るとかを言われるだけ。


 最初の1年間は全員寮に入ることになっているのだが、6月にはまだ入れないので、チームメイトのルームシェアしているところに泊まらせてもらう。ソファで寝るようだ。枕とシーツは持って行った。おととしUCLAのIDキャンプに行った時も、学生の寮が宿泊施設になっており、持参品リストには枕と毛布が入っていた。


 以下は渡米の前に準備するもの。


◆予防接種


 留学のための渡米には予防接種の証明書が必要なのだが、まだ必要なもの全部は終わっていないので、未記入欄がある。証明書は大学ではなく州の書式だ。それを予防接種を受けたクリニックに持って行って記入してもらう。乳幼児のころに受けたものについても、母子手帳をもとに記入してもらった。


◆スマートフォン


 家族でdocomoのスマートフォンを使っていたのだが、米国で使えて日本に帰国した時も使えるということで、息子だけソフトバンクのiPhoneに変えた。ソフトバンクはアメリカの通信会社、スプリントを買収したので、アメリカに強い。アメリカ放題というプランがあって、日米で使えるようだ。


◆クレジットカード


 セゾンアメックスとANAのマスターカードを作った。2年前に大学見学兼サッカーツアーに参加した時に、VISAのデビットカードを持って行って、その後3回渡米していて、向こうで使えるのはわかっているのだが、クレジットカードもあった方がいいだろうということで、VISA以外のものを申し込んだ。スマートフォンをソフトバンクに乗り換えたときに一緒にYahooクレジットカードも申し込んだのだが、審査に通らなかった。セゾンアメックスには保険が付けられるし、ANAは留学先の都市への直行便があるので、そのマイレージカードを兼ねている。


◆保険


 セゾンアメックスに保険を付けたので、今回の渡米では別には保険に加入しなかった。7月に再渡米する時には必要になると思うが、どういうものに加入したらいいのかは、まだ大学に問い合わせていない。

 話が前後するけれど、息子が具体的に留学を希望しはじめたのは高校2年の夏前ぐらいだ。それから英語の塾と留学のコーディネーターを探して契約した。塾はトフルゼミナールというところで、TOEFLの点数を上げるために通った。そこでも一般的な留学のアドバイスはしてくれるのだが、サッカーで大学に売り込むための的確なアドバイスは期待はできない。


 高2の間は特に急いで何かをすることもなく、秋から塾に通ったぐらい。あとは定期テストの成績を上げようにしなければならない。留学サイトなどで調べると、4年制の大学だと目安となる平均成績(GPA)が3.5以上のところが多い。アメリカの成績は1から4までの4段階評価なので、平均は最高でも4.0なのだが(実際はからくりがあって、4を超えることもある)、それで3.5だと日本の5段階でいえば4.5になる。これは相当高い。息子はすでに高校生活もほぼ半分終わって、平均は日本の3.5を下回っていて、そこから平均を上げるのはかなり大変そうだった。息子の大学は留学サイトで見るとGPAが米国の3.7となっていたが、結論から言えば日本の3.5ぐらいで何とかなった。アメリカの高校生全体の平均GPAは3.0ぐらいらしい。日本でいえば4.0にあたる。日本より成績のつけ方が高めなのだろう。また、アメリカの大学は、高校のレベルにかかわらずGPAで見られるようだ。難関進学校で3.2だから簡単な高校の3.5より高いだろう、といった配慮はない。


 息子は、日本ではジュニアユースからユースに昇格したので、高校はサッカーを考慮せずに選べた。ただ、クラブからは自分の学力に見合ったところより2段階ぐらいレベルを落とした高校に入ることを勧められた。というのは、定期テストで高い成績を維持しておけば大学はサッカー推薦で行けるからということだ。しかし、結局あまりレベルを落とさずに受験をした。そのため、両立には苦労をした。成績は真ん中あたり。科目によるデコボコが大きい。クラブの言うとおりにしておけばよかったのかもしれない。ただ、英語には抵抗がないのが救いだった。ジュニアユースの時に日米ハーフのチームメイトがいて、練習の帰りに積極的に英語で話したりしていたからだと思う。もともと親が外資系の会社にいたりしたから、そういうのも何となく影響したのかもしれない。


 高校3年の夏に再びカリフォルニアでの大会に出て、またいくつか興味があるという話をもらった。去年と同じところもあり、新しいところもある。息子はカリフォルニアに行きたいようだったが、カリフォルニアではNCAAの1部(D1)の大学からは話がなかった。D1で話があったのは南部の大学で、一つはツアーで見学したところ、もう一つはユースの先輩が行っているところだった。その後、留学アドバイザーが知っている大学とも話をするようになった。


 留学コーディネーターについては、特にあちこちコンタクトを取ったりわけではないので、どこがいいのか比較はできない。息子がユースをやめて移籍した先のチームに関わっていたというご縁でお願いしただけである。子どものころに米国に行って、米国の大学でサッカーをしていた人なので、米国の大学サッカーの事情には詳しいし、英語はネイティブだからコミュニケーションの心配もないだろうということでお任せすることにした。実際にすでに米国に何人も送り出しているし、結果的にはその中の一人が進んでいた大学にコンタクトしてもらって決まったので、よかったのだと思う。

 今回はアメリカの大学に入るにはどのぐらいの学力が必要なのかという話。


 日本の大学入試は、一般入試や推薦入試、AO入試といったように選抜方法が多様化してきているが、主流は受験生が試験会場で一斉に同じテストを受ける一般入試だろう。アメリカの大学の場合は、そういう「入学試験」はない。簡単に言うと全部AO入試である。必要とされるのは、基本的には、(1)高校3年間の平均成績、(2)SATという大学能力適性試験、(3)エッセイ、(4)推薦状である。留学生の場合はこれに、(5)TOEFLという英語のテストが加わる。


 上記の(1)から(5)までが全部重要というわけではない。日本人の場合、もっともハードルが高いのはTOEFLだろう。


 TOEFLは「読む、書く、聞く、話す」の4種類それぞれ30点満点で、合計120点満点。4年制大学の場合、最低でも半分を超えないと難しいらしい。つまり、61点が目安になる。似たテストでTOEICというものがある。TOEICは英語のビジネス向けのコミュニケーション能力を測るテストで、TOEFLはアメリカの大学で講義を受ける能力を測るテストといった感じだろうか。両者の換算表があって、TOEFLの61点はTOEICで590点レベルだそうだ。


 息子の大学の場合、TOEFLで80点以上が条件だった。最初に受けた高2の冬は40点そこそこ。1年かかって80点を超えた。息子は英語だけは得意で、高校では学年でもほぼトップグループにいた。それでもいきなり高得点は取れない。でも、息子の先輩で特に英語が得意でもない選手がいたが、彼は4か月ほどで30点台から61点まで伸ばした。ひたすら過去問を解いたそうだ。英語は頭の良さを要求されるものでもない。やるかやらないかだけだろう。


 アメリカの大学でサッカーをやろうとする留学生の場合、基本的にはサッカーが売り込むポイントになるが、TOEFLと3年間の学力が基準に達しないと入れない。


 SAT(大学能力適性試験)に関しては、英語のテストと数学のテストがあり、数学部分は日本人にとっては点数の稼ぎどころらしい。英語での数学用語を多少勉強して慣れておけばかなり取れるようだ。


 SATで注意するのはテストをとにかく早めに申し込んでおくということだけだ。でないと試験会場が埋まってしまう。聞いた話では、中国や韓国で集団カンニング行為が頻発しており、試験自体が中止されたこともあるという。実際、2013年5月にはSATが韓国全土で中止された。そういうことがあったので、日本での試験を申し込んでおくようだ。高3の夏ごろ、息子が最初にSATのテストを申し込もうとした時は、北海道の会場しか空きがなく、首都圏で受けられるのは一番早くて翌年5月だった。結局はキャンセル待ちをしておいて、キャンセルが出たので近くで受けられたのだが、早めに申し込むことに越したことはない。海外の受験生は申し込むだけ申し込んでおいて、自分の国でテストが行われればキャンセルするので、直前にキャンセルが出たりすることも多いらしい。


 エッセイについては、サッカーで留学が決まる場合はエッセイで落とされることはないと思う。推薦状も同様だと思う。

 アメリカの大学は学費が上がっている。4年制の私立大学の場合、年間の学費は安いところで年に3万ドル台、高いところでは5万ドル台といったところ。日本の私立大学の3倍や4倍はかかる感じだ。生活費なども考えると、4年間で2千万円、3千万円のスケールである。最近ニュースになっていたが、日本の某自動車メーカーのトップが子どもを4人スタンフォード大学に行かせた学費が6,600万円ぐらいだったそうで、ちょっと安いなと思ったが、考えてみたら2004年から2015年の話なので、今よりは安かったのだろう。アメリカの大学の学費は高騰している。


 というわけで、わが家の場合、スカラーシップ(scholarship:返済不要の奨学金)をもらうことが留学の条件だった。スポーツでの奨学金は全額もらえる選手もいればそうでない選手もいる。D1(ディビジョン1)のチームの場合、全額支給は10人までと決められている。


息子に
「お前のサッカー同期に留学生はどのぐらいいるの?」
と聞くと、
「オレだけだよ」
と言う。
「え?お前だけ?」
「うん」
「じゃ、同期は全部で何人いるの」
「6人」
「え?6人?新入部員全部で?」
「そう。A(チーム)とかBとかないから」
「・・・」


 サッカー部全部で20数人だそうだ。プロのような世界である。考えてみれば、スポーツ奨学金というのはサッカーでお金をもらうということだ。選手の間でも、奨学金がいくらかというのは微妙な話題らしい。自分の評価そのものだからか。


 奨学金には学費のほかに寮費や教科書代も含まれる。それぞれいくらと条件が提示される。分ける意味があるのかどうかはわからない。

 アメリカの大学サッカーのリーグの仕組みは日本とやや違っている。違っているのは、戦績による昇格、降格がないことだ。


 では、どのようにしてリーグの所属が決まるかということになるが、それにはNCAA(全米大学体育協会)の説明が少し必要になる。NCAAは大学の運動部を包括的に統括する組織である。日本であれば大学の体育会は種目ごとに所属する連盟が違う。サッカーならサッカーの、バスケットボールならバスケットボールの連盟がある。しかし、NCAAは加盟する大学の運動部を全部統括している。


 息子が行く予定の大学のサッカーチームは、「NCAAディビジョン1」というリーグに所属している。簡単に言えばNCAA1部だ。NCAAのディビジョンは3まである。


 もう一つ違う点は、ディビジョン1とかD2というのは、その大学の運動部全体がそうだということだ。その大学がディビジョン1なら、サッカー部もバスケットボール部もアメリカンフットボール部も全部ディビジョン1のリーグになる。サッカー部はディビジョン1だがバスケットボールはディビジョン2だということは起こらない。


 この「ディビジョン」は大学の施設の規模などで決まる。そして、どのディビジョンかによって大学に出る補助金の額も変わる。ディビジョン1は大きくて施設も整っている大学が多く、スポーツ奨学金も多い。ディビジョン2もスポーツ奨学金は出る。ディビジョン3は学生数の少ない大学が多く、スポーツ奨学金を出すこと禁じられている。


 また、同じディビジョン1であっても、アメリカは広いのでさらに地区リーグに分かれている。それでも移動は飛行機だそうだ。ぜいたくだ。アメリカの大学スポーツはとにかくお金がかかっている。


 息子は大学から一度来てくれと言われたが、その航空券代、宿泊費も大学から出た。ただ、その条件もNCAAが決めており、大学が勝手にお金を出すわけにはいかないのだという。大学を訪問するまでに高校の成績証明書を英文で送ったりする必要があり、それはNCAAのルールで厳格に決まっているのだそうだ。


 大学スポーツの統括組織はNCAA以外にももう2つある。一つはNAIA(National Association of Intercollegiate Athletics)で、これは4年制大学のリーグだが、NCAAに比べると組織の規模は小さい。


 もう一つはNJCAA(National Junior College Athletic Association)で、こちらは2年制大学(短期大学)のリーグである。ここは学力や英語力が低いという理由で4年生大学に入学できなかった選手が多いらしい。ただ、アメリカの大学の場合、きちんと学業成績を修めて2年制大学から4年制大学に編入することも珍しくはないそうだ。NJCAAで活躍して3年からNCAAにスカウトされて入る選手もいる。そのあたりは日本の大学の感覚とだいぶ違う。NJCAAもディビジョン1から3に分かれていて、ディビジョン3はスポーツ奨学金は出ない。


 他にも日本とだいぶ違うなあと思うところはいろいろある。それから、高校の成績のことやら英語の試験のことやら、留学のアドバイザーのことなどもおいおい書いていこうと思う。


(つづく)