子どものころ、ご飯をナイフとフォークで食べる方法を親が教えてくれた。フォークの背にナイフで「ライス」を押し付けるようにして乗せて食べるというやつである。


 その後、実は欧米ではそんな食べ方をしない、フォークを右手に持ち替えて普通にすくって食べるのだとか、持ち替えるのはマナー違反で、持ち替えずにナイフでフォークの腹側に乗せて食べるのだというのも見たことがある。いずれにしても背に乗せるというのは今では正しいマナーということにはなっていないようだ。


 だけど、子どものころからやっていたせいか、自分にとってはその食べ方が一番食べやすい。ピラフのようなパラパラしたライスならまだしも、日本風の粘りのある「ご飯」なら、背に乗せてもこぼれたりしない。


 とはいえ、昔のマナーが正しいと信じ込んでいると思われるのも恥ずかしいので、人前ではやらないし、自分の家で平らな皿にご飯を乗せて食べる機会もないので、結局はやることもなくなった。


 考えてみたら、欧米では日本風のご飯を皿で食べる場面なんてないだろうし、だとすれば「正しいマナー」なんてあるとも思えない。逆から見たら、「日本ではスパゲッティをどんぶりに入れて箸で食べる場合、どうやって食べるのが正しいですか」とイタリア人に訊かれるようなものだろう。


 ところで、かみさんがどこからか「オーストラリア人はキウイを皮ごと食べる」という話を聞いてきた。キウイの皮なんてゴソゴソしていて美味しくないだろうと思うのだが、何ごとも経験である。で、食べてみたら意外に気にならなかった。それ以来、ときどき皮ごと食べている。


 ポルトガルで日帰りのバスツアーに参加した時のこと。現地で申し込んだツアーだから他の参加者はほとんど外国人だった(自分にとっての外国人という意味)。ある修道院を観て出てくると、道端に果物売りの屋台があって、そこでツアー参加者のおばさんたちが小ぶりの桃かプラムのようなものを買っていた。


 みかんやバナナだったら手で皮をむいて食べられるからツアー途中で買ってもいいけど、桃みたいなものを買ってどうするんだろうと思って見ていたら、バスに戻って皮ごと食べている。ぶどうも皮ごと食べている。最近は日本でも皮ごと食べられるぶどうも売っているが、当時は見かけたことはなかった。それ以来、ぶどうはなるべく皮ごと食べるようにしている。簡単でいい。桃は皮ごとはおいしくなかった。梨もやってみたが、だめだった。


 キウイの話に戻るが、その後間もなくかみさんがオーストラリア人と話す機会があった。「皮ごとなんて食べない」と言われたそうである。

 8月終わりごろからサッカーのシーズンが始まったようで、息子はさっそく飛行機に乗ってシアトルに遠征に行ったようだ。11日間と言っていた。大学自体はまだ始まっていないらしい。息子は用事がある時ぐらいしか連絡してこないので、どういうスケジュールになっているのか全然わからない。


 先日、他の保護者から一斉メールが来た。


 「今週末の試合の応援に行く人いたら教えてくださーい!」


 というような内容だった。試合はアウェイで遠征先はインディアナ州。OBの保護者にインディアナ州に住んでいる人がいて、人数がわかればみんなで集まれるようなレストランを予約するという。


 調べてみたら、インディアナ州までは飛行機で2時間半ぐらいかかる。日本でいえば東京から沖縄ぐらいの距離だ。そんなところまで応援に行くのかー。シアトル遠征もそのぐらい離れていたようだが、その時にも同じような一斉メールが別の保護者からあった。


 保護者の交流がけっこう活発らしいのはちょっと意外。日本だと大学生にもなれば保護者同士の関わりはほとんどないんじゃないかと思う。高校時代でも、ユースの保護者が集まるのは年に2、3回だったと思う。応援には集まるけど行き帰りはほとんどバラバラ。


 また、こうした保護者向けのメールは、サッカーチームのスタッフからも来る。今週は大学のサッカーチームの親に向けて朝食会が企画されていた。7月から8月ごろは、ウェブ上のテレビ電話を使ったセミナー(ウェビナー)で、子どものメンタルサポートみたいな話とか、サッカー部のサポート体制の説明のようなものがあった。


 日本の大学サッカーは学生主体で運営されていると聞くし、保護者向けの説明会とか、保護者同士の交流みたいなものはそれほどないんじゃなかろうか。まあ、あっちの人たちはもともと社交的な人が多いというか、そういう文化なのだろう。


 それにしてもメールが当然ながら全部英語なので、ついついおっくうで読むのが後回しになるんだよなあ。

 息子は高校の途中で社会人チームに移籍した。


 難点は練習回数と時間帯だった。練習回数はチームによってまちまちだと思うけど、どこもユースや高校部活のようには多くはないと思う。平日は2回だけだったりする。


 息子が移籍したチームの練習時間は、朝錬だと平日の7時から9時で、学校に間に合わないので出られない。3年生になって一部の授業が選択制になり、10時半に登校すればいい日ができたので、その時は出られるようになった。また、夜は19時から21時で、場所も自宅からけっこう遠かった。帰ってくると11時近く。高校生の生活リズムにはなかなか合いにくい。


 そのうちそのチームが解散することになり、別の社会人クラブを探して、所属はせず練習だけ参加させてもらうことになった。これも平日夜7時半からで、場所も遠い。終わりが9時半すぎで、帰ると11時ごろになるので、ときどきクルマで迎えに行って、帰りに遅い夕食をとったりしていた。


 その後、また別の社会人クラブに所属させてもらうことになった。もう高校3年の年明けでほとんど学校に行かなくていいので、練習は出られるようになった。ただ、週末の練習が、東京のチームなのになぜか千葉県で早朝7時からだったりして、もう始発で出てもギリギリだった。


 よかったと思う点もある。みんな社会人なので活動への参加が自由なことだった。選手は、学校を大学を卒業してそのままサッカーを続けている人だったり、元プロだったりといろいろだ。それぞれ都合があって練習や試合に出られたり出られなかったりする。そのせいか、妙な同調圧力を感じるような雰囲気はないようだった。


 また、移籍が自由なので、あちこちのチームに知り合いができやすい。そういうつながりで、チームとは関係なく自発的に朝練をやっている緩いグループがあり、息子はそこにも参加させてもらっていた。米国から一時帰国している間も単発で参加させてもらったりしている。


 さらに、いろいろな年齢の人に接することができる。チームには30代半ばの選手もいた。息子はもちろん最年少だったのだが、なじむのに抵抗はあまりなかったようだ。会社や学校と違って、年齢による上下関係の意識は薄いだろう。スポーツは、年齢の離れた人と接する機会としてちょうどいいのかもしれない。


 もっとも、息子はもともと年齢の上下意識が薄いし、高校までクラブチームで先輩後輩関係が弱めだった。さらにアメリカの大学でサッカーなんてやったら、日本的な感覚でいう「生意気」になってしまわないかが心配ではある。

 6月終わり、息子がアメリカから電話してきた。デビットカードを落としたらしい。カードを裸でポケットに入れて自転車に乗っていて、それで落としたようだ。すぐに日本でカード会社に電話して利用停止の手続きをした。利用停止だけなら、名前と生年月日と電話番号があれば本人でなくてもできたが、再発行するには本人が電話する必要があり、再発行まで1週間から10日かかるという。


 7月半ばに本人が日本に一時帰国するので、帰ったらすぐ電話するということにした。日本にいるのは10日ほどなので再渡米までにカードが届くかどうか心配だったが、無事間に合った。やってみてわかったのだが、再発行手続きは電話で済むのだという。何となく本人が銀行の窓口に行く必要もあると思いこんでいた。さっさとアメリカから電話させればよかった。


 息子はデビットカードの他にクレジットカードを2枚持って行った。うち1枚は限度枠近くまで使っていたので、もう1枚あってよかった。


 現金については、現地で銀行口座を作ってそこに送金しておいてそこから引き出せるようにしようとも思っていたが、現金はあまり使わないようなので、まだ作ってない。必要なときは三菱UFJのデビットカードで日本の口座から引き出せる。でも、現地のATMでデビットカードを使って日本の口座から預金を引き出すと為替レートが悪そうな気もするので、どの程度現金を使うかも含めて今後の検討課題。

 息子がアメリカで自転車が必要だと連絡してきた。仮住まいはキャンパス近くなので車は要らないが、徒歩で移動するのもいろいろ不便なのだそうだ。自転車屋に見に行ったがいいのがないので、Amazonで注文するという。どんなやつか見せてもらったら変速機がないシンプルなやつだった。


数日後、電話してきた。


「おとうさん、自転車組み立てたことある?」
「ないよ。なんで?もしかして自分で組み立てるやつなのか?」
「そう」


 息子は何かを組み立てたり修理したりすることには無関心で、何かが壊れたら捨てることしか考えないタイプだ。でも、自分で買ったものだし、助けはないし、四苦八苦しながらもYouTubeを見ながら組み立てたらしい。親元を離れるというのはいいことだね。


 ところで、自転車を注文するときにAmexのカードを使おうとしたら使えなかったようだ。どうやらアメリカで保険に加入するのに10万円ぐらい払ったので、限度枠ギリギリになっていたらしい。Amexにはショッピングプロテクション保険がついているから、自転車のように盗まれやすいものの支払いに使いたかったところだけど、限度枠には気が回らなかったのだろう。


 そもそも限度枠というものを知っていたかどうかも怪しい。クレジットカードは初心者なのだ。使ってから引き落としまでどのぐらいタイムラグがあるかも知らなかったようで、「カードを使うから銀行にお金を入れておいて」などと言う。「クレジットカードはその月に使ったやつは、だいたい翌々月の4日とかに引き落とされるから、そんなにすぐに銀行にお金入れとかなくてもいいんだよ。6月に使った分は8月4日とか、そんな感じな。」なんてことを教えてやった。


 そうやっていろんなことを覚えていく。まあ自分もクレジットカードなんて社会人になって初めて持ったし。