以前、『パレートの法則』というタイトルの話を書いた。ジュニアのトレセンはだいたい上位2割がひとつ上のトレセンに進む。息子の場合、2割ぎりぎりに滑り込んで、最初は下の方にいるのに、いつの間にかまた上の2割に入っているように見える。そんなような話だ。
息子は「おれは『差すタイプ』だから」という。
『差すタイプ』というのは、あとから追い上げて逆転するタイプのことで、『先行逃げ切り型』の逆だ。競馬などの場合は『差し馬』などという。
息子の場合は、単に現時点でいまひとつであることの言い訳のような気もするが、スロースターターであることは確かだ。
逆に言えば、最初から先頭に近いところにいると、そこで満足しがちなタイプでもある。環境に流されやすい。自分で自分に負荷をかけてがんばるタイプではない。だから、親としては、本人のレベルよりもちょっと高いところに身を置かせた方がいい。『孟母三遷』のような感じ。
孟母というのは古代中国の思想家である孟子の母のことだ。最初は墓地の近くに住んでいたが、孟子が葬式ごっこをして遊ぶようになったので、母は引っ越しを決めた。引っ越し先は市場の近くで、今度は商売ごっこをするようになった。そこでまた引っ越した。今度は学校の近くだったので、勉強するようになった。そんな話だ。
商売ごっこの何が悪いか今一つわからないけど、要するに子どもは環境に影響されやすいから、育てるには環境を選びましょうというお話である。まあ、息子ももう中3なんだから影響されないように意識が変わってほしいが、なかなかそうはいかない。
息子の中学校は公立だ。都心に近いので、「勉強ができる子が多いでしょう」と言われることもある。しかし、実は学力は東京都や全国の平均を下回る。勉強のできる子の多くが私立中に行ってしまうという事情もあるらしい。そういうところにいると、その中で「勉強ができる方」で満足してしまうこともある。
これは東京におけるクラブチームと部活のサッカーの関係に似ているところがある。以前、息子と一緒に自分の母校の公立中の横を通った。ちょうどサッカーの練習をやっていた。息子はそれを見て「上手い」と驚いていた。東京ならクラブチームの選択肢は広いが、地方だとそうではない。だから公立中でもけっこう強かったりする。市内の別の公立中からは、J下部ユースに進んで日本代表にもなった選手もいる。
息子には、
「公立中で成績がいい方というのは、部活でサッカーが上手い方だと満足しているのと同じだからな。お前の学力だともし麻布とか慶應あたりにいたら一番下に近いよ」
と言ってきた(ジュニアのチームメイトには慶應や麻布に行った子がいる。開成を蹴って筑駒に行ったのもいた)。だけど、こういう例えは話としてはわかったつもりでも、実感はしにくいだろう。サッカーなら試合をしたり、見ているだけでもレベルの違いは感覚的にわかる。だけど、学力は学校以外で自分の立ち位置がつかみにくい。
模擬試験を受ければいいのだろうが、昔と違って今は学校で受ける業者の模擬試験というものがない。昔は進研模試とか旺文社模試というのが学校で受けられた、というか全員受けさせられた。今は自分で申し込む。行われるのは日曜だから、試合や練習と重なる。公式戦が胸突き八丁にさしかかっている時期なので、練習も休みにくいし、休まない。
模試の時間は朝から昼過ぎまでだから、申し込むだけ申し込んでおいて、たまたま練習が夕方なら受けられる。そうでないなら受験料を捨てることになる。
今まで一度だけ模試を受けられたことがあった。志望校として書いた高校はどこも届かない結果だった。それが数字で出たのは良かった。息子はだいたいにおいて見通しが甘いのだが、ようやく自分の立ち位置がちょっと見えたと思う。
自称『差すタイプ』としては、サッカーも勉強もここからが正念場。