概要
'''ニーシャ・プリムラ'''(Nisha Primula)は、SteamおよびStadia向けにリリースされているアクションRPG『Aethel Fragments: The Last Core』に登場する主要キャラクターの一人である。 愛称は「ニーシャ」。主人公が率いる傭兵団「アルゴス」に所属する魔導技師(Rune-Mechanic)であり、序盤から終盤までパーティの技術面と魔導面を支える中核メンバーとして活躍する。 旧時代の遺産である「魔導回路(Code-Script)」と、現行の「機械工学」の両方に精通する稀有な才能を持つ。物語の鍵となる古代のエネルギー機関「プライマル・コア」を管理していた旧貴族・プリムラ家の唯一の生存者であり、彼女の持つ知識と血筋が、物語全体の謎を解き明かす上で深く関わっていく。

生い立ち
ニーシャは、かつて大陸北部の「白銀渓谷」一帯を統治していた旧貴族、プリムラ家の直系の子孫として生を受けた。 プリムラ家は、世界のエネルギー源であった「プライマル・コア」を代々守護し、その出力を調停する役目を担っていた魔導の名門であった。しかし、物語開始の15年前、「大災厄(The Great Calamity)」と呼ばれるコアの暴走事故が発生。この事故により白銀渓谷は魔導エネルギーによって汚染され、プリムラ家は管理不行き届きの責任を問われて没落、領地と爵位をすべて剥奪された。 当時まだ幼かったニーシャは、この混乱で両親を失い、唯一の肉親である兄・カエレンと共に首都のダウンタウン(スラム区)へ逃げ延びることとなる。

スラムでの生活は過酷であり、彼女は貴族としての出自を隠し、機械いじりの才能を活かしてジャンク屋の助手として生計を立てていた。この時期に、正規の教育を受けずとも、独学で機械工学の知識と、修理工としての高度な技術を習得している。 同時に、血筋に刻まれた魔導の才能も密かに開花しており、スラムの片隅で、失われたプリムラ家の魔導回路の断片を独力で解読・修復しようと試みていた。彼女が序盤で金銭に強い執着を見せるのは、このスラム時代の経験と、後に生き別れとなる兄の存在が大きく影響している。

作中での活躍
ニーシャはChapter 2「鉄錆の街と忘れられた民」で初登場する。当初は主人公たちを「金払いの良い依頼人」としか見ておらず、高額な報酬と引き換えに、スラムの案内役兼メカニックとして一時的に同行する。 しかし、Chapter 3でスラムの最下層にある旧時代の遺跡(プリムラ家の旧研究所)に足を踏み入れた際、遺跡のセキュリティシステムが彼女の持つプリムラ家の血統に反応。彼女が「コアの継承者」であることが判明し、同時に遺跡のガーディアンが起動してしまう。 この事件をきっかけに、彼女の運命は再び「コア」と結びつき、大災厄の真相を突き止めるため、主人公たちの旅に本格的に同行することを決意する。

パーティ加入後は、その多彩な才能を遺憾なく発揮する。戦闘においては、自ら組み上げた索敵ドローンと、魔導回路を組み合わせた「ハイブリッド・アーツ」を駆使する後衛アタッカー兼サポーターとして活躍。 ストーリーにおいては、各地に残された旧時代の遺産(ダンジョン)のギミック解除や、敵が使用する古代兵器の解析、主人公たちの装備のアップグレードを一手に引き受ける。 特に中盤、帝国軍の新型魔導兵器によってパーティが窮地に陥った際、ニーシャが即席で敵の制御コードをリバースエンジニアリングし、兵器を無力化するシーンは、彼女の技術者としての優秀さを示す場面としてプレイヤーに強い印象を与えた。

対戦や因縁関係
ニーシャの物語において、二人の人物との関係性が特に重要な意味を持つ。

カエレン・プリムラ
ニーシャの実兄。大災厄で両親を失った後、スラムで妹を守るために必死に働いていたが、ある日突然失踪する。 彼は中盤、敵対組織「リユニオン」の幹部「黒兜のカエレン」としてニーシャの前に現れる。カエレンはプリムラ家の復興を強く望むあまり、大災厄のエネルギーを制御することで世界を「リセット」し、家門の栄光を取り戻そうと目論む「リユニオン」の思想に傾倒していた。 彼は、魔導と機械の融合を模索するニーシャを「家系を裏切り、過去を汚す者」と断じ、プライマル・コアの制御権を巡って何度も衝突する。 妹への歪んだ愛情と、家門復興への過度な執念の間で葛藤するカエレンとの対立は、ニーシャのシナリオにおける最大の軸となる。

ヴァレリウス中佐
ニーシャたちが所属する「アルゴス」の出資者でもある、帝国軍の技術士官。 徹底した合理主義者であり、大災厄を引き起こした旧時代の魔導技術を「非科学的で制御不能な呪い」として忌み嫌っている。彼は全ての動力を機械式に置き換える「純潔機械化計画」を帝国議会に提唱しており、魔導技師であるニーシャの存在を快く思っていない。 序盤はニーシャの技術を「まじない」と呼び、事あるごとに彼女の意見を却下しようとする。しかし、ニーシャが魔導回路の論理的欠陥を現代のプログラミングで補完し、安定化させる姿を目の当たりにし、徐々にその認識を改めていく。 最終的には、立場の違いを超えてニーシャの技術力を「本物」だと認め、クライマックスでは彼女の作戦を全面的に支援する重要な協力者へと変化する。

性格や思想
彼女の基本的な性格は、スラム育ちのリアリスト(現実主義者)である。口調はぶっきらぼうで、皮肉屋の一面を持つ。特に序盤は金銭への執着を隠さず、仲間に対しても利益を勘定するようなドライな態度を取ることが多い。 これは、彼女が他人に弱さを見せることを極端に恐れているためであり、没落貴族という出自を隠し、スラムで生き抜くために身につけた処世術でもある。 しかし、根は情に厚く、一度仲間と認めた相手に対する信頼は厚い。特に自分と同じように「居場所のない」人々や、技術の暴走によって故郷を失った人々に対しては強い共感を見せる。

彼女の思想的根幹は「技術に善悪はなく、扱う人間次第」というものである。 大災厄を引き起こした「魔導」も、世界を汚染し続ける「機械」も、それ自体が悪いわけではないと彼女は考えている。彼女の目的は、かつて対立し、世界を二分した二つの技術体系を「調停」することにある。 これは、かつて「プライマル・コア」の調停者であったプリムラ家の役割を、彼女なりに現代で再定義しようとする試みでもある。 彼女が愛用するモンキーレンチと、家系に伝わる魔導書を同じカバンに入れて持ち歩く姿は、彼女のこの思想を象徴している。

物語への影響
ニーシャ・プリムラは、物語のテーマである「過去(魔導)と現在(機械)の融和」を体現するキャラクターである。 もし彼女がパーティにいなければ、主人公たちは旧時代の遺跡の謎を解くことも、帝国軍の最新兵器に対抗することもできなかったであろう。 彼女の存在は、技術的な側面だけでなく、物語の核心にも深く関わる。最終的に、大災厄の真相(=コアの暴走は事故ではなく、カエレンの祖先による人為的な実験失敗であったこと)を突き止めたのは、ニーシャが修復した旧研究所のログデータによるものである。 そして、クライマックスで再び暴走するコアを前に、旧来の魔導的な「封印」でも、帝国的な「破壊」でもない、「魔導回路の論理を機械工学でオーバーライドし、エネルギーを安定化させる」という第三の道を提示し、実行する。 彼女が過去の遺産を修復・アップデートして未来へ繋いだように、プレイヤーもまた、彼女を通じて『Aethel Fragments』の世界が過去のしがらみを乗り越えていくカタルシスを体験することになる。