「〇〇モドキ」……
生物界において、本家が有名すぎたり偉大すぎたりするが故に付けられてしまう、なんとも哀愁漂うネーミングである。 「偽物」「パチモン」みたいな響きがしてなんだか可哀想になってくるが、今回紹介する彼もまた、そんな業を背負わされたお魚の一つである。
■ 概要 アカメモドキ(学名:Psammoperca waigiensis)とは、スズキ目アカメ科アカメモドキ属に分類される魚類である。
名前の通り、日本三大怪魚の一つにして高知や宮崎の固有種「アカメ」にそっくりな見た目をしている海水魚。 日本では主に琉球列島(沖縄周辺)のサンゴ礁やマングローブ帯、河口付近などに生息している。南国育ちのちょっとスリムなアカメ、と言えば大体合っている。
■ 特徴
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やっぱり目は赤い 名前に「アカメ」と入っているだけあって、暗闇で光を当てると目が赤く反射して光る。この厨二病心をくすぐるカッコいい特徴は、本家からしっかりと受け継いでいる(正確にはタペータムという網膜の裏にある反射層によるもの)。
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サイズは控えめ 本家アカメが1メートルを余裕で超えるバケモノサイズに成長するのに対し、アカメモドキは最大でも40cm程度にしか成長しない。この小柄なサイズ感が「モドキ」呼ばわりされてしまう最大の要因かもしれない。
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体型もちょっと違う アカメが背中がグッと盛り上がったマッチョな体型をしているのに対し、アカメモドキは背中の盛り上がりがなだらかで、比較的スリムでシュッとしたフォルムをしている。
■ 来歴・背景 彼らの不遇な点は、なんといっても**「アカメ」という本家が日本国内で神格化されすぎている**ことだろう。 本家アカメは「日本三大怪魚」に数えられ、釣り人の憧れの的であり、絶滅危惧種にも指定されている伝説の魚である。そんなどデカいネームバリューを持つ魚に似ているがために、「お前、サイズも小せえし形も微妙に違うから『モドキ』な」と雑なネーミングをされてしまったのだ。
しかし、分類上は「アカメ科」であり、**ゴリゴリの身内(近縁種)**である。 「アカメ科アカメモドキ属」。もはやお前はアカメなのかモドキなのかハッキリしろと言いたくなる分類だが、決して「全くの別種だけど偶然似ちゃっただけのパチモン」というわけではないのだ。アカメの一族としての誇りは確かに持っているのである。
■ 評価・反応 「モドキ」という名前から外道扱いされているかと思いきや、沖縄など南西諸島の釣り人(特にルアーマン)からは、ライトゲームの楽しいターゲットとしてそこそこ人気がある。
夜行性で物陰に潜む性質があるため、夜の漁港やマングローブのルアー釣りでよく釣れるのだ。サイズが40cm程度とはいえ、そこは肉食魚。ルアーに果敢にアタックしてくるし、引きも強くて楽しい。 さらに、スズキやアカメの仲間だけあって食べても普通に美味い。 白身でクセがなく、刺身、塩焼き、ムニエル、フライなど何にしてもイケる優秀な白身魚である。モドキだからって不味いわけでは決してないのだ!
■ 余談
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夜のルアー釣りあるある 沖縄の夜の海でルアーを投げていると、ゴンッ!とアタる。「おお!マングローブジャック(ゴマフエダイ)か!?それともオニヒラアジか!?」とワクワクしながら釣り上げ、ライトで照らすと**「なんだ、モドキか……」**となるのがお約束。美味しいし引きも楽しいのだが、本命(大型魚)を狙っている時だとちょっとだけガッカリされてしまう、愛すべき脇役である。
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英語圏での名前 英語では「Waigieu seaperch(ワイギュー・シーパーチ)」などと呼ばれる。日本のように「〇〇の偽物」みたいな不名誉な名前ではない。やっぱり「モドキ」や「ダマシ」が付く和名ってちょっと酷い文化だと思うの。