ストライク・シファニーは、惑星連合宇宙軍に所属する軍人である。第7機動艦隊「アルゴス」に配属され、特殊作戦部隊「ノヴァ」の隊長を務めている。階級は少佐。物語においては、主人公カイト・アスカの直接の上官として登場し、彼を導きながらも、時には厳しい現実を突きつける役割を担う。搭乗機は高機動戦闘機「XF-13 レーヴェ」を主に使用する。戦争の早期終結を最優先とし、そのためにはいかなる犠牲も許容するという現実主義的な立場を取る人物として描かれている。

彼女の出身は、惑星連合の統治下にある辺境惑星「エルピス」である。エルピスは、希少鉱物「ゼノナイト」の産地として知られていたが、中央政府はその資源採掘を優先し、星のインフラ整備や治安維持を十分に行っていなかった。そのため、星内部では資源の利権を巡る対立が絶えず、シファニーが10代の頃に大規模な内乱「エルピス事変」が勃発した。彼女はこの内乱に巻き込まれ、家族を含む多くの知人を失った。この出来事が、彼女のその後の人生を決定づけることになる。自身の無力さを痛感した彼女は、故郷のような悲劇を二度と繰り返さないための力を求め、惑星連合宇宙軍の士官学校へ入学した。士官学校では極めて優秀な成績を収め、首席で卒業。卒業後は最前線に配属され、数々の戦闘で功績を上げた。その能力と実績が認められ、通常の昇進ルートを外れた速さで昇進を重ねる。彼女は軍内部で、従来の大艦隊主義とは異なる、少数精鋭による迅速な特殊作戦の重要性を提言し続けた。この提言が認められる形で、特殊作戦部隊「ノヴァ」が新設されることとなり、彼女自身がその初代隊長に任命された。

物語の序盤、シファニーは卓越した操縦技術の才能を持つ候補生、カイト・アスカに注目し、彼を「ノヴァ」隊にスカウトするところから深く関わり始める。隊長として、彼女はカイトや他の隊員に対し、一切の妥協を許さない厳格な訓練を課す。実戦においても、常に冷静な指揮官として振る舞い、部隊を率いていく。物語が中盤に進むと、敵対勢力である「ゾディアック帝国」との戦局が激化。「カストル宙域会戦」において、シファニーは帝国の主要補給線を断つための大胆な奇襲作戦を立案する。この作戦は、味方の別動隊を「囮」として使用し、敵の主力を引きつけている間に本隊が目標を破壊するという、大きな犠牲を前提としたものだった。結果として作戦は成功し、帝国軍に大きな打撃を与えたが、囮となった部隊はほぼ壊滅した。この非情とも取れる作戦の進め方に対し、カイトは「仲間を見捨てた」として強く反発。シファニーとカイトの間には、任務の遂行と仲間の命を巡る価値観の違いから、深刻な対立が生じることとなる。終盤、帝国が開発した最終兵器「レクイエム」の存在が明らかになる。連合軍上層部は、政治的な思惑から「レクイエム」への攻撃をためらう。しかし、シファニーはこの兵器が使用されれば未曾有の被害が出ると判断。上層部の命令を無視し、カイトら「ノヴァ」の隊員と共に、独断で「レクイエム」破壊作戦を決行する。この最終作戦の最中、敵のエースパイロットとの交戦で窮地に陥ったカイトを庇い、彼女は機体に直撃を受け重傷を負う。それでも意識を失う直前まで指揮を執り続け、作戦遂行への執念を見せた。

彼女の周囲には、いくつかの重要な人物が存在する。主人公のカイト・アスカは、彼女が指導する部下である。シファニーはカイトの持つ潜在能力を高く評価する一方で、戦場においては時に障害となり得る彼の理想主義的な甘さを危険視している。二人の関係は、師弟でありながら、中盤以降は対立軸としても機能する。副官であるリア・ヴィクトル中尉は、シファニーの右腕として常に彼女を補佐する。リアは、シファニーが下す冷徹な判断の裏にある苦悩や、故郷エルピスへの強い思いを最も深く理解している人物であり、公私にわたる最大の理解者である。連合軍上層部のギデオン・マクナイト将軍は、シファニーの能力を買い、「ノヴァ」設立の後ろ盾となった人物だ。しかし、彼はシファニーをあくまで戦局を有利に進めるための「駒」として捉えている側面があり、政治的な道具として利用しようとすることもある。敵対する「ゾディアック帝国」のエースパイロット、ゼクス・ヴァーミリオンとは、浅からぬ因縁がある。ゼクスは「エルピス事変」に帝国側の傭兵として関わっており、シファニーにとっては故郷を蹂躙した相手の一人である。二人は戦場で幾度となく激突し、互いの実力を認め合う宿敵としての関係を築いている。

ストライク・シファニーという人物は、冷静沈着かつ厳格な性格で、感情をほとんど表に出さない。彼女の行動原理の根底には、「エルピス事変」で何も守れなかったという深い無力感と後悔がある。その経験から、彼女は「より大きな悲劇を防ぐためには、小さな犠牲は許容されなければならない」という徹底した合理主義と現実主義を信念とするようになった。作中では、部下に非情な命令を下す場面や、政治的な駆け引きを冷徹に行う姿が描かれる。しかし、それは戦争を最も効率的に終結させ、故郷のような場所を二度と生み出さないという大局的な目標に基づいている。一方で、彼女は「ノヴァ」隊員の個人データや経歴を全て記憶しており、作戦後には一人、戦死した部下を悼む姿も描写されるなど、内面には強い責任感と人間的な葛藤を秘めている。彼女にとって、部隊の隊員は目的を達成するための「駒」であると同時に、守るべき対象でもあった。

彼女の存在と行動は、物語全体に大きな影響を与えている。主人公のカイト・アスカに対しては、戦士としての技術と思想的な成長に決定的な役割を果たした。シファニーの提示する「戦争の現実」とカイトの持つ「理想」が衝突することで、カイトは理想だけでは誰も守れないことを痛感し、指揮官として精神的に成熟していく。物語の展開においても、彼女の行動は戦局の転換点となることが多い。「カストル宙域会戦」での勝利は、劣勢だった惑星連合軍が反攻に転じるきっかけを作った。また、終盤における「レクイエム」破壊作戦の独断での決行は、政治的な停滞を打ち破り、戦争そのものを終結へと導く直接的な引き金となった。シファニーの生き様は、物語のテーマである「理想と現実の対立」や「大義のための犠牲」を象徴するものであり、作品に深みを与える重要な要素となっている。