「頑張らなくてもいい場所」

今日、新しい入所者さんが来られました。

私と同い年の女性です。


特養では珍しく、
まだお若い方です。

統合失調症があり、
長い間、精神科へ通院されていました。


ご主人はすでに亡くなられ、
お子さんもおられません。


人と関わることが苦手で、
不安がとても強い方です。


食事の時間になっても、
お部屋から出てこられません。

ナースコールを押すこともありません。


困っていても、
何かしてほしくても、
じっと待っておられます。

お話を聞いていると、
自分に自信がなく、
いつも他人が自分をどう思うかを気にされているようでした。


一見すると、

「消極的な人」

に見えるかもしれません。

でも私は、
少し違うことを考えていました。


この方は、
どんな人生を歩いてこられたのだろう。


ご主人の後妻として嫁ぎ、
連れ子を育て、
その後そのお子さんを亡くし、
ご主人も見送りました。


頼る人も少ない中で、
病気を抱えながら、
長い年月を生きてこられたのです。


何度も精神科へ入院されたそうです。


きっと、
怖い思いもたくさんされたでしょう。


それでも、
ここまで生きてこられた。


私はそのことが、
とてもすごいことだと思いました。


私たちは時々、

「もっと人と関わった方がいい」
「部屋から出た方がいい」
「活動した方がいい」

と考えます。

もちろん、
それも大切です。


でも、
この方に今一番必要なのは、
頑張ることではないのかもしれません。

今までずっと、

不安と共に生きてきた。

人の目を気にしながら生きてきた。

一人で頑張り続けてきた。


だからこそ、

「ここは安心していいですよ」

そう感じられることの方が、
大切なのではないかと思いました。


特養は、
ただ生活する場所ではありません。

人生の最終章を過ごす場所です。


私は、
この方にとってここが、

頑張らなくてもいい場所。

不安な時は、
誰かに頼ってもいい場所。


そして、

静かに安心できる居場所になればいいなと思っています。


病気だけを見るのではなく、

その人が歩いてきた人生を見ながら、

これからも関わっていきたいと思います。