ブルックナーの交響曲第5番を聴きます。 

ブルックナーの交響曲の中期に聳え立つ偉大な巨人のような交響曲です。
がっしりとしたケルン大聖堂のようなを思い浮かべる壮大な交響曲です。そして、他の交響曲のようなロマンより宗教感漂う厳かな雰囲気を持った交響曲です。
そう僧侶が山奥深くで修行するような感じです。 

第1楽章、いつもの弦のトレモロで始まるいつものブルックナー開始ではなく弦のピチカートで始まるのが特徴的で印象的です。それから以降は、いつものブルックナー。幾重にも素晴らしいオーケストラの響きが折り重なって展開し、大伽藍をイメージするような見事なドラマを見てる感じの楽章です。 

第2楽章、この楽章もピチカートで始まります。厳かな雰囲気を持った自然の中で瞑想しながら、浮き沈みのある人生を深く思いを巡らすような楽章です。そして、オーケストラの響きがこの上なく美しい。 

第3楽章、ブルックナーお得意のスケルツォこの楽章もピチカートで始まります。軽快でありながら浮かれた気分の音楽でなく人生の厳しさを体現する中で如何に闘って行くかを語り掛けてくれるような音楽です。トリオの部分のユーモアを感じる音楽は印象的。 

第4楽章、前の3楽章を振り替えるメロディー(ベートーヴェンの第9交響曲の第4楽章のように)が流れ、これを受けて終わりに向けて様々に展開し、徐々に盛り上がりの頂点達し、クライマックスでの盛り上がりは最高です。
僕は、ブルックナーの全ての交響曲の第4楽章中で1番好きな終わり方です。

見事です。素晴らしいです。
ブルックナー、万歳! 

今日聴いたのは、ルドルフ・ケンペがミュンヘン・フィルを指揮した1975年に録音した演奏です。 

彼は、カラヤンやバーンスタインのような派手な自己主張の強い指揮と反対の地味で堅実な職人気質を地で突き進む玄人好みの指揮をします。 

ブルックナーの交響曲と言えば、この人クナパーツブッシュの小振り版って感じかな。

朝比奈のブルックナーと同じ路線のブルックナーです。 
彼の同じようにブルックナーの意図する音楽を何の手心を加えず淡々と何の誇張もなく、楽譜に書かれた1音1音大切にして紡いで素晴らしいブルックナーを築き上げてます。 

ミュンヘン・フィルをしっかり束ねて4つの楽章に生命力を吹き掛け、たっぷりと素晴らしいブルックナー音楽を聴く醍醐味を伝えてくれる演奏をしています。 

ケンペの指揮されるミュンヘン・フィル、ベルリン・フィルに続く実力を発揮して悪の強い(良い意味で)チェリビダッケが指揮する時の演奏と違ってソフトな感じでの見事で素晴らしい演奏をしています。

その実力と洗練された演奏、流石です。 

玄人好みのブルックナーの交響曲には、お薦めの1枚です。 

余談ながら、様々な指揮者のブルックナーを聴いてますが朝比奈がシカゴ交響楽団の定期公演でブルックナーの交響曲第5番を演奏した模様が、NHKで放映されてましたが、この時の演奏が忘れません。実に素晴らしかった。この時の演奏によって朝比奈の魅力に取り付かれました。