ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第32番を聴きます。 
 
ベートーヴェン最後のピアノ・ソナタであり、哲学めいた曲想が散りばめられ、時に瞑想的であったり、時に幻想的であったり、時に宗教的であったりとベートーヴェンが今までに体現して人生の経験、音楽の経験の全てを楽譜に書き表した内容の濃い、重いもので、最後のピアノ・ソナタ相応しいソナタです。

よくもまぁ、晩年になってもこんな内容の濃い曲想が長々と次々と浮かんで来るベートーヴェンに感服します。 

晩年に作曲された最後の弦楽四重奏曲、最後の交響曲そして、ミサ・ソレムニスと共にこの最後のピアノ・ソナタも、人が生きて行く上で必ず聴いておくべきだと、僕は思います。 

今日聴いたのは、ゲルハルト・オピッツです。
僕は、正直それ程知らないピアニストです。

FM放送で、何曲か聴いた程度の印象しかありません。 

今度、中古で2枚組のベートーヴェンのピアノ・ソナタ集を買いましたが、その中の演奏です。 
2006年に録音された演奏ですが、しっかりしたピアノのタッチとベダリングを巧み駆使して、少し硬めのピアノの音色でがっしりとした重厚感溢れる、まるでエミール・ギレリスばりの見事なベートーヴェンを聴くことが出来ました。 

また、ベートーヴェンの最後のピアノ・ソナタに込めた想いや意思をオピッツなりに汲み上げ、オピッツなりに吟味し、オピッツなりの愛情を込めて丁寧に丹念にピアノを紡いで行く見事な出来映えに感動、感服します。 

余談ながら、こんな気持ちは、作品が作品だけにひとかどのプロのピアニストの演奏でそれなり味わえますが。プロ中のプロになると感動、感服の度合いが違います。 

オピッツの演奏は、まさにそれです。