ラベルの組曲『鏡』を聴きます。
ラベル自身の心の鏡に映った幻影を切り取り描き出した、稀有な美しさを放つ5曲からなるピアノのための組曲です。

組曲のは、以下のような標題で成り立っています。
1) 蛾
2) 悲しげな鳥たち
3) 洋上の小舟
4) 道化師の朝の歌
5) 鐘の鳴る谷

それぞれの曲に関しての詳しいことは、ネットや書籍で確認して下さい。

5曲ともラベルの繊細で神経の行き届いたメロディーと色彩鮮やかなピアノの使い方が、際立つピアノ曲です。ドビュッシーのピアノ曲と甲乙付け難い名曲たちです。
特に、「海原の小舟」と「道化師の朝の歌」は、作曲者自身によってオーケストラで演奏出来る編曲が行われていて、世界中のオーケストラのレパートリーとなっています。

今日聴いたピアニストは、フランスのピエール=ロラン・エマールです。
彼は、近現代音楽を中心として幅広いレパートリーに素晴らしい演奏を聴かせるピアニストで、明快な粒立ちの良いタッチと巧みなペダリングで持って、どことなく甘い雰囲気を漂わせる音色でラベルのピアノ曲の魅力を堪能させてくれます。

ラベルのピアノ曲の演奏では、ギーゼキングやフランソワの演奏を好んで聴きますが、エマールの演奏も気になるものがあります。
ラベルの楽譜に書いた印象派の絵画を描く筆の微妙なタッチを、巧みな演奏でキャンパスに再現するかのような演奏をしているからです。
ラベルの音楽の素晴らしさ、魅力を完璧に伝えるに十分な演奏です。

特に、「海原の小舟」の凪いでる海原で小舟が揺られて行く様の様子を具現化させる演奏、「道化師の朝の歌」でのリズミカルで躍動するピアノの動きは見事です。
勿論、残る3曲もラベルの魅力を振り撒くような演奏しています。

機会があったら、是非とも聴いて下さい。

余談ですが、ポリーニの弾く『鏡』の演奏を聴きたかったなぁ(確か、録音してないと思います)。