バッハのパルティータ第1番、第2番を聴きます。

鍵盤楽器の曲として規模は《イギリス組曲》のように大きくなく、《フランス組曲》のように華奢でなく、内容は平易でありながらも鍵盤楽器奏者の技量を試すような曲です。

パルティータは、プレリュード、アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグ、メヌエットおよびその他の当時の舞曲風のような鍵盤楽器の練習曲です。

ただ、バッハの手になる練習曲です。単に練習曲で終わる筈がありません。手を変え品を変えバッハ音楽が何たるかを示す芸術性の高い楽曲です。

更に細かいことは、ネットや書籍に譲ります。



ピアニストは、クラウディオ・アラウが1991年に録音した演奏です。
巨匠アラウが、88歳で鬼籍に入る2月前に収録された演奏です。
年齢を感じさせないしっかりしたピアノのタッチとペダリングによって奥の深いバッハの音楽を聴くことの出来る演奏です。

もう高齢から来る技術的な衰えを所々で感じますが、しかし、アラウのピアニストとしての年輪と長年に渡って培って来たテクニックと楽曲に対する気概と気合いを強く感じるピアノを聴くことが出来ます。

テクニックの面からすると最近のピアニストに一歩譲るかも知れませんが、バッハ音楽の奥深い神髄を感じることには関しては、感じる量の大きさは数歩先を行った手応えのある充実した見事な演奏です。

ベートーヴェンやブラームス等を弾く時と違って濁りのない澄んだ、スッと広がっては消えていくような、真綿のような柔らかく透きとおった響きが印象的です(これは、リヒテルのバッハの演奏にも言えますが)。このことは、第1番、第2番共に言えることです。
パルティータが芸術性の高い楽曲であること実感させてくれる素晴らしい演奏です。

勿論、バッハと言えばグレン・グールド。
彼のような鼻歌が混じるようなことはなく(決して、グレン・グールドを貶してません)、じっくり、たっぷりバッハの音楽に安心して身を委ねることが出来る演奏です。

バッハの鍵盤楽器の音楽の見事さ、素晴らしさを体現したい方にはお薦めの演奏です。アラウの見事な演奏を1度は、聴いて欲しいです。

何れ、このCDに録音されている残りの第3番、第5番を聴きたいと思っています。