日曜日の昼下がりR.シュトラウスの歌劇『カプリッチョ』を聴きます。
彼の手になる最後の歌劇です。台本は作曲者及びクレメンス・クラウスが書いています。
歌劇と言ってますが、喜歌劇のような歌劇です。
いつものR.シュトラウスの近代オーケストラをフルに働かせてのオーケストレーションを駆使することなく、古風で擬古典主義的な美しい穏やかな音楽が流れます。

例によってストーリー等その他のことは、ネットや書籍で確認して下さい。


演奏は、カール・ベーム指揮するバイエルン放送管弦楽団が1971年に録音した演奏です。

ベームの十八番と言ってもよいR.シュトラウスの歌劇です。
バイエルン放送管弦楽団を手中に治めオーケストラを手際よくキビキビと運ぶ心地良さそうに指揮している姿が、目に浮かんで来ます。カラヤンのような時に官能的な耽美を追い求めたR.シュトラウスの音楽ではないけれど、R.シュトラウスを損なうような指揮ではなく、立派にこの歌劇の魅力、醍醐味を伝えてくれます。今の指揮者にこれだけ魅力ある音楽をする指揮者は、皆無だと思います。
そんなベームの指揮に応えるバイエルン放送管弦楽団も、まるで歌劇場付きのオーケストラと思えるような歌劇場の臨場感、熱気を味わせてくれる充実した演奏をしています。指揮者とオーケストラの一体感が見事で素晴らしい!

配役と歌手は、以下の通りです。
伯爵令嬢(ソプラノ):グンドゥラ・ヤノヴィッツ 伯爵(バリトン):ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ  
劇場支配人ラ・ロシュ(バス):カール・リーダーブッシュ 
音楽家フラマン(テノール):ペーター・シュライアー 
詩人オリヴィエ(バリトン):ヘルマン・プライ 
女優クレーロン(メゾ・ソプラノ):タチアーナ・トロヤノス 
イタリアオペラのソプラノ歌手:アーリーン・オジェー 
イタリアオペラのテノール歌手:アントン・デ・リッダー 
執事(バス):カール・クリスティアン・コーン 
プロンプター、トープ氏(テノール):デイヴィッド・ソー 
8人の召使:バイエルン放送合唱団員 

この歌手たちの顔ぶれ。何とも贅沢で豪華なことです。これだけの芸達者(?)の歌手は、今の歌手ではあり得ないと思います。

主役と言うべき2人のヤノヴィッツとフィッシャー=ディースカウ歌唱は、言う及ばずシュライヤー、リーダーブッシュ、トロヤノス、オージェ等々、当時のスター歌手の素晴らしい美声を競いあって素晴らしい見事な歌唱をしています。

そして、当時のドイツ・バリトン界の東西の横綱のもう1人の横綱、プライが参画しているのが嬉しいに尽きます。
かたや、ハイ・バリトンの歌唱で魅了するフィッシャー=ディースカウこなた、味わい深い歌声で親近感を漂わせるプライと2人の横綱のがっぷり4つに組んだ歌合戦は、まさに聴きものです。

以前、ベームがウィーン国立歌劇場で1960年にライブ録音した演奏について投稿しましたが、この演奏もシュワルツコップやデルモータ等当時ウィーンで活躍していた歌手で固め、ウィーン国立歌劇場の生の雰囲気を漂わせてくれる名演でした。

2つの演奏共に甲乙付け難い、本当に名演です。
どちらも歌劇『カプリッチョ』を語る上で、絶対に外すことの出来ない名演です。

確かカラヤンは、この歌劇『カプリッチョ』の全曲の録音を残して無かったと思います。なので、この歌劇においては、ベームの独壇場と言っても良いと思います。

R.シュトラウスの音楽に酔いしれたい方に、歌劇だけどお薦めします。