ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第17番と第21番を聴きます。そう、前者が『テンペスト』、後者が『ワルトシュタイン』と言った方が聴き慣れているのかなあ。
どちらもベートーヴェンの初期から中期に作曲された超有名な傑作ピアノ・ソナタです。
いつものようにピアノ・ソナタの解説等については、ネットや書籍で確認して下さい。
今回聴いたピアニストは、ダニエル・バレンボイムの演奏です。1981年~1983年に録音された演奏です。
指揮者と違ってバレンボイムのピアノは、繊細でピアノ・ソナタ全体を細かく分析し、重苦しくない低音と澄み切った高音を駆使しベートーヴェンの書いた楽譜のメロディーを柔らかな気持ちを持って柔らかな詩情に満ちた音楽を聴かせてくれています。
バックハウスやケンプのようなドイツの重鎮の堅固なベートーヴェンでなく、同じ南米のアラウのようなベートーヴェンがロマン派の先駆的存在だったことを実感させる美しい演奏です。
バレンボイムは、今までに5回(全てを聴いた訳ではありませんが)ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集の録音をしています。
今日聴いた演奏は、2回目の全集からの演奏ですが、指揮者としてもピアニストとしても最も脂の乗り切ったどちらも巨匠としての道を歩んでいる最中の躍動感と充実感溢れるピアノが聴けます。
ピアノのタッチやペダリングにおいても先輩たちの演奏を気にせず、彼がベートーヴェンに抱いた想いをストレートに自信を持って演奏していて安心して身を委ねられる演奏です。
ベートーヴェンの楽譜を読み込み、楽譜に込められたベートーヴェンの想いを1音足りとも疎かにしないと言う気構えが感じられる好感の持てる演奏で、奇を衒う演奏とは程遠い真摯な演奏です。
それは、2曲のピアノ・ソナタどちらにも言えることです。
間違い無く、名演です。