マーラーの交響曲第2番『復活』を聴きます。
交響曲史上屈指の傑作交響曲であり、マーラーが偉大な交響曲作曲家となり、大金字塔を打ち立てたと言っても良い交響曲です。
合唱を伴う交響曲の中で感動する度合いで言えば、ベートーヴェンの第9番の交響曲を凌駕する偉大で、人類の知的遺産に加えて良い交響曲です。

今回聴いたのは、鬼籍に最近入られた小澤征爾の指揮したもので、オーケストラは言わずと知れた当時手兵で気心が知れたボストン交響楽団と1986年に録音した演奏です。

僕は、彼が後に録音したサイトウ・キネン・オーケストラとの演奏より、こちらの演奏の方が大好きです。

脂が乗り切った小澤征爾が交響曲もない、ボストン交響楽団を抜群の統率力で持って自由自在に操り、マーラーがこの交響曲に込めた戦慄と憧憬、恐れと甘美さといった両極端の想念が混在し、生や死の意味を考察した哲学的な内容を的確に、そして忠実に小澤入魂の演奏をしています。

脇を固めて演奏しているのが、ソプラノのキリ・テ・カナワとメゾ・ソプラノのマリリン・ホーンです。合唱は、タングルウッド音楽祭合唱団です。

この演奏は、緊迫感に溢れた壮大なスケールの演奏で、蓄積されたエネルギーが終楽章で一気に爆発し白熱の高揚感をもたらす演奏しています。
また、小澤はマーラーの書いたメロディーを心を込めて歌い上げ情感豊かに演奏し、至る所にある無音である休止にも音がする気がします。
そう、芭蕉の句の「閑さや岩にしみ入る蝉の声」のように。
交響曲の中で数多く現れる弦楽器のグリッサンドの演奏は、小澤の神経が細やかに行き届いたもので数ある欧米の指揮者のそれに負けてなく、寧ろ小澤に軍配があげても良い演奏をしています。

2人の女性歌手においては、クレンペラーの演奏で歌っているエリザベート・シュヴァルツコップ、ヒルデ・レッスル=マイダンに総合力で一歩譲ります。
特にシュヴァルツコップの歌唱においては、いかのキリ・テ・カナワと言えども太刀打ち出来ないです。
その代わりマリリン・ホーンの土手っ腹にずしりと響く歌唱をしています。第2番のメゾソプラノ(アルト)のパートにおいて屈指の歌唱をしています。

間違いなく、日本人指揮者の演奏した第2番の交響曲の演奏でトップに鎮座する、そう断言して良い充実した満点の演奏です。
最近活躍している日本人指揮者には、とてもここに聴ける第2番の名演は出来ないと思います。それ程、素晴らしい演奏です。

小澤征爾とボストン交響楽団との永遠に語り継がれる名演は、絶対に聴いておくべきです。