会社を出ると青空が広がっていた。
日傘越しに色んな形の雲を見ながら歩いた。
時折強い風が吹き、
トレンチコートの裾が大きくひるがえる。
「幸せだなぁ。」
マスクから声が漏れる。
勤務先は自宅から遠い為、
朝早くに家を出て、
帰り着くのはいつも遅い時間。
夕食を食べて片付けたら、
すぐに寝る時間がやって来る。
一度座るとなかなか立ち上がれず、
日をまたいで休む毎日。
そんな生活を
何年も繰り返してきた。
でも今は違う。時短勤務になり、
平日の明るい時間に家に帰る。
カーテンをしめるのがもったいないくらい
夕陽が綺麗だった。
時間に余裕がある毎日って、
素晴らしいなぁ。
心にこんなに余裕が生まれるなんて
幸せだなぁ。
この状況にならなかったら
気づかなかったこと。
とても新鮮で心が穏やかになり、
ちょっとしたことに幸せを感じた。
『余裕』
つい金銭ばかりに目がいってしまうが、
時間は『本当に私が望む世界』を
教えてくれた気がする。
たぶん心の奥底で
ずっと望んでいたこと。
この辛く特殊な状況が
私にそれに気づかせてくれた。