「児童養護施設でボランティアをしたいのです」

 

という問い合わせが時々来る。

 

 何度か電話で相談に乗ってきた人が、とある児童養護施設へ面談に行くことが決まったそう。

 

「自分になにが出来るかわからないし、何をして良いかわからない」

 

 最初その人はそう言っていた。それが施設支援のボランティアを始める人の、正直な気持ちだと思う。

 

 例えば子どもたちに勉強を教えるボランティアも、学力の向上だけが目的ではない。一番大事なのは子どもが外の人と触れ合う時間をもつことで、出来れば色んな雑談も出来るようになって、悩み事の話し相手になれたら良い。

 

 一日2時間ほど、月に何日かの時間を子どもと二人で過ごすのは、とても重責ですよとその人には話しておいた。そして継続することも大事だと、僕は特に念を押して言う。

 

「続けられますか。突然あなたが来なくなったら子どもは自分のせいかもと傷つきます」

 

「一時の気まぐれで、やっぱりやめたと放り出すことはしませんか」

 

「子どもは選べませんよ」

 

 少々きつい質問をして散々悩ませた後、それでも熱意のある人に、

 

「私から紹介はしません。自分で施設に訊ねてみて下さい」

 

 と僕は言う。たいていの人は「え」と驚かれる。紹介して欲しいと思ってきたからだ。

 

 人と人、まして問題を抱えている子供と触れ合うには、まず自分の人柄とか適正を、施設職員に知ってもらう事から始まる。

 

「自分に何が出来るかわからない」

 

のと同じで、施設側もその人に何を任せられるのか、もっとわからない。会って話してはじめて熱意や人柄も伝わるから、直接自分の言葉で話してもらうのが一番だ。

 

 だから僕の紹介なんてほとんど意味が無い。

 

 先日、冒頭の相談者からお礼の電話がきた。施設のボランティア参加が決まったらしい。

 

「親切に相談にのって下さってありがとうございます」

 

「いいえ僕はヒントを話しただけです。あなたが自分で決断して訪ねて行ったのですから」

 

と答えた。

 

 その人が子どもと仲良くなって、子どもが施設を出た後もずっと何でも話が出来るような信頼関係になっていれば、その人にとってはすでに「ボランティア」ではなくなっている。

 

それが僕の思い描く理想。