ランタンバナジウム褐簾石は、三重県伊勢市で2011年に発見された緑簾石グループの鉱物であり、2013年3月1日に新鉱物として登録された。
名称は化学組成による命名規約に基づいたものである。
希土類を含む鉱物の研究は秩父帯においては遅れており、ランタンバナジウム褐簾石はこの研究の過程で発見された鉱物である。
ランタンバナジウム褐簾石は、伊勢市にまたがる秩父帯と呼ばれる付加体で発見された。
ここには小規模な鉄・マンガン鉱床が存在する。
ランタンバナジウム褐簾石は、この鉱床中のテフロ石 (Tephroite) 、ベメント石 (Bementite) 、菱マンガン鉱 (Rhodochrosite) を含む脈に、ほとんどは0.1mm、最大で1mmの長さの黒色から褐色の柱状結晶として産出する。
特に前記のマンガン鉱物が風化してネオトス石 (Neotocite) と粘土鉱物に変化したものは比較的容易に発見される。
化学組成は [CaLa][V3+AlFe2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) である。
ランタンとバナジウムを含むため、後方散乱電子像では明るく見える。
緑簾石グループの鉱物は、一般的に多種類の元素を含むため、種類の決定は難しい。
初期の分析で、化学組成がランタンを含む鉄褐簾石である事がわかった。
ランタン鉄褐簾石 (Ferriallanite-(La)) は2011年に発見された珍しい鉱物であるため、更に分析が進み、アルミニウムの1つがバナジウムに置換されている新種であることが分かった。
正確に述べると、緑簾石グループの鉱物は [A1 A2][M1 M2 M3](Si2O7)(SiO4)O(OH) という基本組成をもち、金属元素がAサイトに2つ、Mサイトに3つ入る。褐簾石はA1にカルシウム、M2にアルミニウム、M3に鉄を含む。
そして、普通の褐簾石はA2にセリウム、M1にアルミニウムを含むが、ランタンバナジウム褐簾石はA2にランタン、M1にバナジウムを含む。
実際、ランタン鉄褐簾石はランタンバナジウム褐簾石と組成が連続しており、肉眼的に区別することは出来ない。
また、普通の褐簾石はウランやトリウムなどの放射性同位元素を含むが、ランタンバナジウム褐簾石にはそのような不純物がほとんど無い。
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