患者Aさん | 幸せとは何ぞや

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日頃のことを呟く雑記ブログです。

 

 

今でも沢山の患者様と接してきた中ですごく印象的で記憶に残っている方は何人もいらっしゃるのですが、今回はその中から一人の患者様とのエピソードを書いていきたいと思います。

 

その患者様は50代の女性の患者様でした。

元々、若い頃は銀行員としてバリバリ働かれていたキャリアウーマンだったようでしたが、

婚約者からの婚約破棄などを経て、統合失調症を患われてもう何年もその病院に入院されていました。

 

その方の主な症状は「監視カメラで監視されている」「盗聴されている」「悪口を言われている」などの被害的な妄想が主で、

あと主治医のドクターのことを酷く嫌っており、週に1回程ある回診も拒否されていました。

 

何故そこまで嫌っていたかというとその主治医のドクターは割と若い男性だったのですが、

「看護師と何人も身体の関係を持っているエロドクター」という妄想からきていました。

 

実際に私もその患者様から「あいつには気を付けなさいよ」と忠告を何度か受けたことがあります。

まあ、あながち間違ってはいなかったのですが。飲み会時は必ず20代の若いスタッフを両隣に座らせ、実際に看護師の一人から食事に誘われたという話は聞いていたので。

そんなこと患者様には口が裂けても言えませんでしたが(笑)

 

 

 

話が逸れてしまいましたが、またその患者様は水中毒の傾向もありました。

名前の通り、過剰の水分摂取によって生じる中毒症状であり、具体的には低ナトリウム血症や痙攣を生じ、重症では死亡に至るというものです。

イライラしてきたりするとそれが強く現れ、体重が一気に5㎏増加してしまう程、摂取してしまうこともありました。

 

病棟にはその方以外にも2人の男性に同じ症状が見られましたが、このAさんはまだ症状としては軽かったように思います。もう2人の男性はトイレの水や自分の尿にまで手を付けていましたから。

 

 

そしてAさんには日々、外出も出来ず病棟の中で生活していく中で唯一、楽しみな時間がありました。

それはおやつの時間です。

 

自分で管理が難しい方(糖尿病や他の患者様に分けてしまう、全部一気に食べてしまう等)の菓子類をこちらで預かっており、

毎日15時にお出しするのですが、その方はまず朝来たスタッフに「今日のおやつ作る人は誰?」と聞いてくるのが日課でもありました。

 

15時にお出しする時に預かっている大袋の菓子の中から、プラスチックの皿にいくつか出したものをお渡しするのですが、その準備作業はその日出勤のスタッフが日替わりで担当していたのでそれを気にしてらっしゃいました。

具体的に言えば「〇〇ってお菓子がまだあるはずだからそれを〇個と〇〇を…」という具合に細かく指定したがる方だったのです。

 

その作業をする部屋というのがスタッフの休憩室だったのですが「あそこにはカメラがついている」「誰かが私のお菓子を食べている」という妄想があったので「カメラに見えないように準備してね」など私が担当するときには言われておりました。

 

 

そして、事件は起こったのです。

看護助手の中にそのAさんからよく「あんたまた私のお菓子こっそり食べたでしょ!」と言われ妄想の対象になっているスタッフがいたのですが、その日もいつものようにそのようなことを言われておりました。

 

しかし、その日いつもと違ったのはその看護助手がAさんに対して言い返したのです。

「私はねえ!あんたのお菓子なんか態々食べなくても、自分で買える!!」と。

 

 

正直「オイオイ…」と呆れましたが、二人ともヒートアップしておりその瞬間は周りも呆然として、一瞬遅れてからそのスタッフを止めに入りました。

案の定、Aさんは不穏(行動が過剰で落ち着かない状態のこと)になり、ドクターの指示で注射を打たれる事態になりました。

 

そして、最も信じられないのはその後も何度もそんな場面を見たことですね。