森安なおや「烏城物語」 | 行雲流水的くっぞこ

森安なおや「烏城物語」

 この漫画は1997年に出版されたものを、去年行われた「岡山芸術回廊特別展つながるけしき」というイベントで2000部限定で復刻したもの。私の中での2012年の漫画シーンベスト3に入るニュースの一つでした。
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 森安なおや「烏城物語」


 森安なおや先生は、1934(昭和9)年岡山生まれ。昭和26年デビュー。田河水泡先生の弟子となる。昭和36年に筆を折る。1999(平成11)年逝去。

 「烏城」というのは、森安先生の地元の岡山城の別名。昭和初期の岡山城の近くで暮らす少年の成長の様子を詩情たっぷりに描いた漫画です。


 森安先生の事を知ったのは、ご他聞にもれず、藤子不二雄「まんが道」の登場人物としてでした。「まんが道」は藤子不二雄A先生の自伝的漫画。藤子先生の二人が漫画家を目指して上京し、一緒に活動していく若手漫画家の一人として、少しエキセントリックでインパクトのあるキャラクター「森安氏」として描かれていました。

 それを読んでいた当時(1980年代)はもう森安先生は漫画家として活動されていなかったので、それ以上の情報や、彼の描いた漫画も無かったですし、ただ「まんが道」の登場人物としての認識だけでした。


 次は2000年頃、「NHKアーカイブス」というNHKの過去の番組を再放送する番組の中で、昭和56年に放送された「わが青春のトキワ荘~現代マンガ家立志伝」というドキュメンタリー番組が再放送されたのを見た時でした。

トキワ荘というのは、昭和20~30年代にかけて、手塚治虫をはじめ、寺田ヒロオ、藤子不二雄、石森章太郎、赤塚不二夫など多数の漫画家が暮らしていたアパートです。森安先生もこのアパートの住人でした。

 この番組の内容は、トキワ荘が解体されるという事で、以前住人だった漫画家が集まってトキワ荘で行われた同窓会の様子や、現在(昭和56年当時)の漫画家の様子を描いた番組でした。そこで、初めて”漫画じゃない森安氏”を見たんですよ(笑)


 その後、いくつかトキワ荘関連の本も読んだりしていましたが、森安先生について詳しく知ったのは2010年に出た、伊吹隼人「トキワ荘無頼派 漫画家・森安なおや伝」を読んでからでしたね。しかも、この本の後半には代表作の一つの「赤い自転車」(昭和31年)が再録してあります。
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 この伝記で、今回復刻された「烏城物語」も知ったんですよ。元々は1997年に岡山城築城400周年事業の一つとして2000部自費出版されたものだそうですけどね。


 森安先生の漫画を読んだのは今まで数作しかない(伝記併録の「赤い自転車」と、単行本「トキワ荘青春物語」に収録されていた「トキワ荘物語漫画家志願のるかそるか」「モスクワ」「みかんが河に流れるころ」くらい)んですが、以前の作風と比べると、背景の描き込みが密になっていて劇画と呼んでも差し支えないくらいに変わっていると思います。ただ、前述の伝記の中で劇画に挑戦した事もあったと書かれていたので、意外だとは思わなかったですけどね。滝田ゆう先生や水木しげる先生を一瞬想起したくらいでした。

 絵でストーリー以外の部分を語っていると言うか。少年時代を岡山で過ごされた森安先生の記憶の中の情景なのかな?と。面白いです。


 今回の復刻(第二刷)も2000部限定で販売は2月末までだそうなので、興味のある方はお早めに。岡山城や後楽園の売店や、ここ で通販されています。わたしも、このお店から通販で手に入れました。



 最後に余談を。

 この「烏城物語」で一つ気になったことがありまして。99頁と100頁が入れ違っているのではないのか?ということです。入れ替えたほうがちゃんとつながるんですよ。と言うのも、前述の伝記の中で、森安先生が、「烏城物語」の感想を語った友人の三好好三氏に対して「印刷の手違いでページが入れ替わっているところがあるんだ」と語ったと書かれていて、それがこの頁なのじゃないのかな?と。まぁ~私だけの意見なので本当のところは分からないですけどね。