越前和紙でなければ、小さな連鶴はできない | kuwanakenのブログ

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プラス思考は、好きじゃない。
前を向いたり、しゃがんだり、
振り返ったり、無理をせず、
幸せレンガを、積んでいこう。

 大河ドラマ「ひかる君へ」で越前和紙が取り上げられていました。まひろ(紫式部)は、父親の越前守赴任に伴って滞在していました。いわば、福井県知事が娘同伴で越前和紙の紙漉き場を、現地視察したようなものです。

 

 現地の役人が言うには「越前は寒うございますから、きっと目の細かい美しい紙ができます」紙漉きが日本中で盛んな時は、農業の閑散期に行われたとか。つまり、寒い時期だけの産業ですから、寒さが質を左右することはうなづけます。

 

 桑名の連鶴は越前和紙を使います。連鶴用に丈夫で薄い和紙を特別注文したものです。連鶴は一枚の紙を、たくさんの繋がった四角ができるように切り分けます。わずかな部分で繋がっているだけなので、弱い紙だとちぎれてしまうのです。

 

 手漉きですから、同じ模様でも厚さに違いがあります。馴染みの和紙取扱所の郷司さんは「薄いのを選んでってね」と声を掛けてくれます。積み上げた和紙を一枚ずつ触って厚さを確かめながら、気に入った和紙を抜き出していきます。

 

 何枚も重なった状態で折る「迦陵頻」などは、紙が厚いと鶴の顔が丸くなってしまいます。薄ければ良いかというと、そうでもありません。四方が繋がった「青海波」などは、隣の鶴と引っ張りあうので薄過ぎると形が崩れてしまいます。

 

 とくに、僕は小さな紙で折りたがります。枕草子の「ちいさきものは、いとうつくし」などと屁理屈を持ち出してはみるものの、やはり貧乏性が原因なのでしょう。小さければ小さいほど、程よい厚さでないと折りきれなくなってしまいます。

 

 機械漉きの和紙もあるそうです。製造過程や原料に工夫を重ねて生み出した製法だと思います。蕎麦屋でも手打ちと機械打ちがあります。多くの蕎麦屋が両方の良いところを組み合わせて製造しています。食べても区別がつかないほどです。

 

 和紙の場合、手漉きと機械漉きでは強度にずいぶん違いがあります。原料の繊維の長さに差が出てくるのです。楮(こうぞ)や三椏(みつまた)などの長い繊維が、縦横に絡まってこそ丈夫な和紙ができます。千切れない和紙こそ、連鶴には欠かせません。