果物の中でみかんは特別な存在です。美しい妻のテニス仲間がみかん畑をやっています。いつもそこから二箱ずつ買っていて、年に数回頼むことが常です。果物は何でも好きですが、みかんは冬場の貴重なビタミン源になっています。
果物は値段の高いものが多くて贅沢品に分類されます。もちろん、その分類基準は世間とはいささか違います。僕の場合は、かなりの割合で貧乏性によるところが大きいからです。まあ、貧乏性自体少なからず気に入っているので問題はありません。
その点、みかんは安く手に入るので貧乏人の味方です。箱で買えることも、何だかお金持ちになったようでうれしいです。それも二箱ずつ。箱買いは一種独特な満足感があります。これは、お菓子やおもちゃなどの、大人買いの達成感に通じます。
今年もみかんの季節がやって来ました。友人Wちゃんの家へみかんを取りに行くよう、妻からLINEで指示がありました。「近いうちに取りに行けますか」「もちろん、今すぐにでも」喜び勇んですっ飛んで行きました。
家へ帰るなりさっそく箱を開けると、不揃いのみかんが並んでいます。選別していないだけ安いとのこと。「ふぞろいの林檎たち」の山田太一さんが亡くなったそうです。当時は「あんな情けない若者にはなるまい」とツッコんでいました。
でも、もう一度見たとしたら、きっとふぞろいの味わいをおもしろがるに違いありません。世間も自分自身も、成長して知恵が増したということにしておきましょう。多様性という考え方からも、時代の差を感じます。
数年前、血液検査でカリウムの数値が高くて、お医者さんにみかんの食べ過ぎを疑われました。「まあ、一度に10個食べなければいいですけどね」と冗談半分に脅されましたが、内心ドキッとしました。10個くらいペロリだったからです。
今年のみかんも大小様々で、硬いの柔らかいの十個十色。酸いも甘いも食べてみないことにはわからない。ふぞろいの妙です。一度に8個で抑えても、1日に何度も食べたら同じこと。「ちょっと、食べ過ぎ!」妻からも苦言が。