九州に住む孫娘が、手作り雛人形の写真を送ってきました。あまりの可愛らしさに目を奪われます。親バカならぬジジ馬鹿です。学校の授業ではなく、自分で思いついたと言います。自慢げに作り方を説明してくれます。
「きれいな折り紙を選んだ。お姫様は着物を長くして広げた。頭の帽子は丸く張ってから、まわりをチョンチョンと切って貼った。ぼんぼりはむずかしかった。倒れてくるから、後ろに足をつけた」しゃべり方も可愛らしくて、思わず込み上げてきます。
去年の雛祭りは一緒に住んでいたので、娘の雛人形を飾りました。男雛女雛二人だけですが、大きくて立派に見えます。娘が生まれた時に、岳父が贈ってくれました。段の多いものは飾り付けが大変なので、一点豪華主義でお願いしました。
飾り付けには色々としきたりがあるようです。特に話題になるのは男雛の位置です。日本では昔から左側が偉い人と決まっています。ところが、雛人形の説明書には、一般的に男雛は右側となっています。右が上位の西洋式です。
明治に入って皇室はいち早く西洋文化を取り入れました。子供の頃、皇室アルバムという番組をよく見ていましたが、テーブルと椅子の暮らしはアメリカみたいだと思いました。天皇陛下と皇后陛下の並び方も、西洋に倣って変えたようです。
そんな時代の流れもあって、男雛も右側に変わります。ところが、左大臣、右大臣は昔のままです。文字通り左大臣の方が偉いので、左側に座るのです。京雛の男雛が左のままというのも、都人の気概が感じられておもしろいです。
そこで、ふと気がつきました。左が偉いから、右が上位だから、男雛が座る。これは、男尊女卑だ。今まで気にも留めませんでした。ジェンダーフリーのファンダメンタリストを標榜する僕としては、思いがけない落とし穴にハマっていました。
とはいっても、しきたりや作法は、人と人とがうまく付き合っていくための方便です。右だの左だのと、しきたりの違いで言い争っていては本末転倒です。孫娘の雛飾りを見ると、ぼんぼりは台座に固定されていますが、雛人形は自由に動かして遊んでいます。男女平等です。