映画熱 -278ページ目

ワルキューレ

悪・窮・令。 …追い詰められていっぱいいっぱいの、トム・クルーズの表情がたまらない!


“valkyrie” とは、北欧神話における女神の名前。パンフ記事によれば、“戦死者を選ぶ者” と言われている存在だそうな。日本語の “ワルキューレ” は、ドイツ語の “Walküre” からきているらしい。英語では “ヴァルキリー”。「超時空要塞マクロス」 のバルキリーも、これが語源ですね。


1934年のドイツで実際に起こったクーデター事件を映画化。監督は、ブライアン・シンガー。脚本は、クリストファー・マッカリー&ネイサン・アレクサンダー。音楽は、ジョン・オットマン。


出演は、トム・クルーズ、ケネス・ブラナー、ビル・ナイ、トム・ウィルキンソン、“コレクター”テレンス・スタンプ、カリス・ファン・ハウテン、トーマス・クレッチマン、エディ・イザード、クリスチャン・ベルケル。


さて、映画ですが、緊迫感あふれるスリリングな作品に仕上がりました。まわりくどい説明を一切省いたシンプルなスタイルが、現場の空気をうまく表現していると思います。時代は変わっても、人間の本質はおんなじですね。


1934年にヒトラーが国家元首に任命されて以来、ドイツ国内には、反ヒトラー勢力が常に存在していた。名門貴族出身のドイツ人将校クラウス・フォン・シュタウフェンベルクは、絶対の忠誠を誓うべきヒトラーの思想に疑念を抱き、反逆者になる決意をする。それは、ドイツの未来を憂えての行動だった…。


主演は、トム・クルーズ。アメリカ人の彼が、ドイツの英雄を演じるということだけで、撮影当時から周りがやたらと騒ぎ立てたのを、新聞記事などで読んだ記憶があります。これは、『…よそ者に、あんな若造に何ができるもんか』 という空気が渦巻いていたんじゃないかって、今にしてみれば思います。


しかし、まさにそれは、この映画の物語の状況そのもの。やたらと文句を言う人ほど、風向きが変わるとコロコロ態度が変わったり、土壇場で役に立たなかったり、自分のことばかり考えて逃げ出してしまったりするもの。そういう混乱した状況の中で、黙々と自分のやるべき事をやる男は、やっぱりすごいと思うんです。だから俺は、この映画の役柄を演じきったトムの功績を称えたい。周囲の批判なんて関係ない。俺は彼の役者根性を高く評価します。…トムはエラい!


妻役を演じたカリス・ファン・ハウテンは、オランダ出身の33歳。出番もセリフも少ないですが、グッとこらえた表情や瞳の奥に、情感がチラリと垣間見えます。アメリカ人のようなオーバーアクションがないところが、かえってよかった。好きなことを自由にできない国の女性の役柄を、しっかりと演じました。ほとんどが男ばっかりの画面の中で、彼女と子供たちが登場するシーンが、やけに際立つのは何故だろう。心が和むはずの場面で、余計に切なくなるのは何故だろう。


本作は、脇役陣もスゴい。“反逆者” の中においても、悪役は確実にいます。特にケネス・ブラナーとテレンス・スタンプは、圧倒されそうな存在感。あまり書くとネタバレになるからこのくらいにしますが、いかにも悪そうな男、怪しい男、頼りない男、アブナイ男がたくさん出てきますので、人間観察しながら映画を楽しみましょう。


特筆すべきは、トーマス・クレッチマンとクリスチャン・ベルケルでしょう。この2人に注目して欲しい点は、ドイツ出身の俳優であること。両者とも、苦悩イライラな場面がありますが、クレッチマンは顔にあまり出さない演技である一方、ベルケルはモロに顔に出ます。この対照的な匂いが、ドイツ人の心を感じるポイントとして面白いと思いました。ドイツ人としてこの役柄を演じるのは、感慨深いことでしょう。これから劇場に行かれる方は、余裕があったら確認してみて下さい。


監督のブライアン・シンガーは、最近ではアメコミ映画が多くなりましたが、「ユージュアル・サスペクツ」 で人間の深いドラマを撮った才能がある男。本作では、盟友のマッカリーと共に挑みました。トム同様、“アメコミ監督” と冷やかされましたが、しっかりといい仕事をしました。まさに、男たちの友情が結束して完成した映画。トムはまたしても、いい友人を得ましたね。


本作は、シリアスなドラマですが、随所に小さなユーモアもちりばめられています。題材が題材だけに、笑えないジョークもありますが、苦しい状況だからこそ生まれるユーモアもあるので、観客はそれを素直に楽しんでいいと俺は思います。だから、意識の高いカップルは、デートで行ってもOK。見終わった後に、しっかりと手を握りましょう。 (そういうわけなので、今回はギャグはなしです)




権力というものは、恐ろしい。しかしながら、人類の歴史の中において、それは不可欠なものであるのもまた事実。何よりも恐いのは、精神の暴走なのだ。同じ状況になれば、誰もが同じ行動をとるのかもしれない。自分だったらどうすればいい?自分は、彼の行動を批判する立場にあるのか?自分だったら、彼よりうまくやれるのか?もしあそこでああすればどうなった?そんなことを自問自答しながら、俺は映画を見ています。


本作は、そういう意味で見ごたえ充分な力作でした。細かい点での批判はあるでしょうが、人間の心を深く描いた作品としては、レベルの高いものであると思います。やっぱり俺って、“現場の空気ムービー” が好きなんですよ、きっと。


ブログのサイドバーに表示してあるのでご存知の方も多いと思いますが、俺の誕生日はヒトラーと同じ日です。かといって、ナチというわけではありません。ちなみに、倉沢敦美(わらべのかなえちゃん)と全く同じ誕生日なので、そっちの方を書こうかと思ったんですが、アイドルオタクと勘違いされても面倒なので、こちらにしました。今思うと、すごいイメージになるなあ。ヒトラーと同じ誕生日の、刀持ったサムライって…。


できれば、4日遅く生まれていれば、チャールズ・チャップリンと同じ誕生日だったんですが、これもまた意味があるんでしょう。ヒトラーの日に生まれて、チャップリンの映画を見て育った男。「独裁者」 という映画を見る度に、感慨深い気持ちになります。


人は誰でも、正しく生きたいと思う。しかしながら、常識やルールというものは、属する集団によってまるで違う。そこにおいて、うまく適応すればよし。適応できなければ、“悪者、異端” として扱われることになる。才能のある人ほど、孤独になっていく可能性も高いのだ。


俺は、若い時に転職と引越しをたくさんしました。そのせいで、いい歳になっても未だにビンボーしています。明日を生きる金も乏しいのに、映画を見に行っちゃうバカな男。でも、普通に生きていたら絶対手に入らない宝物が、心の中にいっぱいあります。それは、一文無しになっても絶対なくならないもの。それを教えてくれたのが映画の世界。だからこそ、どんな映画の中にもすっと入っていける。年食って記憶があいまいになっても、きっと心に刻まれているもんだと思う。そういうもんじゃないかな。


本作の登場人物は、いい意味でみんな人間くさい。俺だったらきっと、あのタイプかな。色んな人がいて、みんなそれぞれ役割があって、それをまとめるリーダーがいる。やっぱり、リーダーやれる人ってすごい。だから、ブライアンはすごい。トムもすごい。こういう男たちがいるからこそ、世の中は回っていくのだ。俺は、がんばる男の味方でありたい。人の目にふれないところで、黙々とがんばっている人にこそ、この映画を見てもらいたい。


トム・クルーズという俳優は、悪役が似合わない。しかしながら、裏切られて復讐に燃える男や、信念を持って立ち向かう役柄はよく似合う。アイパッチをした彼の情熱の瞳の輝きが、それを物語る。批判されても、ののしられても、しっかりと仕事をする。いい映画を作るのが彼の仕事。観客がスクリーンの向こう側を見るように、彼もまた、スクリーンの向こうにいる観客の心を見ているんでしょう。それだからこそ、人の心を動かす演技ができるのだ。


かんばれ、トム。グレゴリー・ペックのように、きっと晩年にはオスカーがもらえると思う。その時に立ち上がって拍手してくれる人がたくさんいるよ、絶対。本気で一緒に仕事をした友情は、永遠のものだ。だから今は、心の中にドンドン宝をたくわえよう。


悪い状況に困窮して指令を出すから、悪・窮・令。女神は、戦死者を選ぶという。悪い心を救う霊だから、悪・救・霊…なんてね。勝利の女神は、誰に微笑むのか。男は、ひたすらがんばって戦い続けるしかない。負けて死んだら、ワルキューレにいざなってもらおう。勝って生き残ったら、女神に感謝すると同時に、ともに戦ってくれた仲間にも感謝しよう。 …人は常に、誰かのおかげで生きていられるんだから。





【鑑賞メモ】

3月2日 劇場:ユナイテッドシネマ新潟 19:15の回 観客:約120人

初日にさっそく行きました。一番デカいところで見たかったので、ここを戦場に選びました。一緒に作戦行動したのは、会社のM司令官。


【上映時間とワンポイント】

2時間。もっと長くなるかと思ったんですが、コンパクトにまとまりました。冒頭だけ、少し解説の文字が流れますが、始まったら一直線に突っ走ります。ポップコーン食ってる場合じゃないぞ!


【オススメ類似作品】


「226」 (1989年フィーチャーフィルムエンタープライズ)

監督:五社英雄、原作:笠原和夫、出演:三浦友和。クーデターを題材にした映画で、一番印象に残っているのはコレです。異色とか美化だとか色々言われていましたが、俺にとっては極上の映画でした。当時まだ20代前半で、生きることに行き詰っていた時期にこの映画と出会い、とても勉強させてもらいました。俳優として駆け出しの本木雅弘が、苦悩する青年を好演しています。


「幕末青春グラフィティ Ronin 坂本竜馬」 (1986年東京放送)

監督:河合義隆、出演:武田鉄矢。「226」 と対照的に、こちらは楽しい作品。ユルユルの竜馬が爆笑の1本。それだけに、グッとくる場面も多かった。高杉晋作を演じるのは、何とアフロヘアーの吉田拓郎。浅野温子の熱演も光る。初々しい菊池桃子も見逃せない。男汁がほとばしる、男泣き純情サムライ映画。


「ジャンヌ・ダルク」 (1999年アメリカ・フランス合作)

監督:リュック・ベッソン、出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ。前半快進撃、後半ドロドロの対照的な展開が印象的な1本。何事も、終わらせるのって難しいですね。気がすむまで戦い続ける女に付き合った戦士のみなさん、どうもお疲れさまでした。




ドラゴンボール エボリューション

チンピラの縄張り争いみたいな映画でした。 …精一杯の髪型が泣かせるなあ。


鳥山明原作の人気マンガ 「ドラゴンボール」 が、ハリウッドで実写化。“evoluthion” とは、“進化、発展、移動、展開” という意味。内容はともかく、この映画を製作したアメリカの功績を讃えましょう。


俺自身は、原作をあまりよく知らない上に、今回はパンフも購入しなかったので、記憶と心象風景だけで記事を書きます。どうせほとんど読まれないだろうから、ほんの少しだけネタバレするかも。もっと詳しく内容を知りたい人は、積極的に他のブログを探して冒険の旅に出ましょう。


監督は、ジェームズ・ウォン。製作総指揮は、何と鳥山明。製作は、あのチャウ・シンチー。脚本は、ベン・ラムジー。主題歌を歌うのは、ジャパニーズシンガー・浜崎あゆみ。


出演は、ジャスティン・チャットウィン、エミー・ロッサム、チョウ・ユンファ、ジェームズ・マースターズ、ジェイミー・チャン、田村英里子、関めぐみ。


さて、映画ですが、ずいぶんスケールの小さい作品に仕上がりました。ドラゴンボールごっこのB級映画として見れば申し分ないでしょう。バカっぽいアクションをお楽しみ下さい。まあ、熱狂的ファンであればあるほど、怒り心頭かもしれませんが…。


“ドラゴンボール” と言われる、オレンジ色の球が世界中に散らばっていた。全部で7個あって、それを集めると、1つだけ願いが叶う伝説がある。主人公の悟空は、亀仙人、ブルマ、ヤムチャと共に、ピッコロ大魔王に立ち向かうのであった…。


悟空を演じるのは、ジャスティン・チャットウィン。ややタレ目のルックスは、青年に成長した悟空に見えなくもないが、何だか青白くて貧弱なイメージ。原作の悟空って、元気いっぱいの男の子じゃなかったっけ?何だか普通に学校に通って、イジメられてましたけど。女の子ともロクに話せない、ウジウジした男…こんなんでいいのか?ムリヤリの髪型はハリボテか?戦うオーラはどうした?


亀仙人を演じるのは、香港映画スター、チョウ・ユンファ。「レッドクリフ」 の出演依頼をドタキャンしたと思ったら、こんなところにいたんですね。彼はどうもセクシーさに欠けるので、ただのおっちゃんという感じ。“仙人” というからには、半分あっちの世界に行っているような役者を起用した方が面白いと思いますよ。


ブルマ、チチ、ヤムチャの3人は、何だかどうでもいいようなキャラでした。悟空のジイちゃんもちょっとなあ。ピッコロ大魔王にいたっては、ただのイカレたおっさんでした。顔色が悪いので、きっと病気なんでしょう。


しかしながら、田村英里子と関めぐみが健闘してくれたので、俺的には少々ポイントアップ。田村英里子といえば、NHKドラマ 「私が愛したウルトラセブン」 でアンヌ隊員を演じた女優。ウルトラ警備隊の制服を着用した彼女の姿は、とても神々しかった。そのタムラが、スゴ腕の悪役に挑む。これは見ものです。「007ゴールデンアイ」 のオナトップくらいのテンションでガンガンやっていただきたい。


一方、関めぐみといえば、「ハチミツとクローバー」 でストーカーをストーカーする女を演じたスレンダーな女優。「笑う大天使」 「ネガティブ・ハッピー・チェーンソー・エンジ」 では格闘アクションも披露。細い体にギョロっとした瞳が印象的でした。本作では出番は少ないものの、ある意味重要な役どころを演じています。この2人の共演を見られただけでも、多少お金を払う価値はあったかも。




それにしてもこの映画、ずいぶんお金をかけたんだろうけど、どうしてこんなにショボくなってしまったんだろう。原作知らない立場で見ても、これはアカンと感じてしまいました。何だか、ロシアの人形マトリョーシカを開けたら、いきなりちっこいのが入っていた…みたいな感覚でしょうか。


でも本作は、あくまでもアメリカ人の視点で語るのが筋というものでしょう。アメリカ本国でヒットしているのなら、それはそれでOK。世界経済を立て直すには、アメリカに元気になってもらいたいから。いいじゃん、「アメリカン・ドラゴンボール」 で。原作に敬意を払ってもらった上で、自分たちのやりたいことを思いっきりやればいい。それこそが、エボリューションというものでしょう。


悟空という名前を使用するからには、中国の 「西遊記」 みたいなイメージで捉えられてしまう可能性もあるでしょう。アメリカにとっては、中国も日本も似たようなものなのかもしれない。だけど、日本には、中国にはない繊細さと、懐の広さがある。オタク文化は、国によって違っていい。自分たちの見たいものを、自分たちのスタイルで作り出すことが大切なのだ。


本作の出来に不満があれば、今度は他の国が挑戦してみたらいい。色んな 「ドラゴンボール」 があっていいと俺は思う。ニセ物やバッタ物が増えれば増えるほど、本物の価値はグッと上がるのだ。


さあ、この映画は、世界中のファンの心をつかむことができるのか?つかもうぜ、ドラゴンボール…ってつかめてないじゃん!首根っこつかんだろか、と脅されても仕方ないけど、大きな第一歩を踏み出した功績だけでも讃えてあげましょうよ。その気なら、フランスでも中国でも韓国でもロシアでも作ったらいい。そして、映画が7本揃ったら、ファンの共通の願いが叶うかもしれないよ。 (…え?韓国と台湾ですでに作っているの?そうかあ、じゃあアメリカは3番手ってこと?でも、公式にはこれが1本目ということになるんですよね、たぶん。)



熱狂的ファンの視点で考えるなら、映画館に入る前と出た後では、観客のオーラの色が確実に違うような気がする。予告編で不安になりながらも、DANDAN心ひかれていって、ついに見てしまった。こりゃあ、チャラ・ヘッチャラじゃいられませんなあ。大丈夫、そう感じているのはキミひとりじゃない。


この映画を一つのきっかけにして、世界中のドラゴンボールファンが立ち上がることになれば、それはそれで面白い。1人1人のオーラを結集し、ピュアな心を核とした元気玉を生み出そうじゃありませんか。自分が見たいもの、手に入れたいものを具体的にイメージし、それを実現するために行動を開始しよう。多くのファンが心から望めば、きっと極上のものができると思うから。


「ドラゴンボール」 は、夢を与える作品。夢を信じて、夢をつかむのは自分自身。この世はデッカイ宝島。人生の全てはアドベンチャーなのだ。 …心に火がともった瞬間から、キミの冒険が始まる!





【鑑賞メモ】

鑑賞日:3月17日 劇場:ユナイテッドシネマ新潟 21:30の回 観客:約15人

ドラゴンボールファンのYD君と2人で行きました。地元では吹替版しか上映していなかったので、字幕版を求めて新潟へ。


【上映時間とワンポイント】

約1時間30分。唖然としているうちに終わっちゃうかも。エンドロールの途中で、オマケ映像が出ます。ここで、関ちゃん再登場!


【オススメ類似作品】


「ヤッターマン」 (現在公開中)

監督:三池崇史、出演:櫻井翔。本作のドラゴンボールは7個。こちらはドクロストーンが4個揃うと、何かが起こります。こっちの方が、集めるの簡単かも。


「里見八犬伝」 (1983年角川)

監督:深作欣二、原作:鎌田敏夫、出演:薬師丸ひろ子。こちらは、8個の球が登場。漢字1文字が浮かんでいる透明な球は、戦士として目覚めると授かるんだそうな。“球” というよりはむしろ “玉” か。 これの亜流として、「宇宙からのメッセージ」 というトンデモSF映画もあります。これだと、光るクルミみたいだったように記憶しています。監督は同じくフカサクのおっちゃん。


「北斗の拳」 (東映VシネマのVアメリカ版)

監督:トニー・ランデル、原作:武論尊・原哲夫、出演:ゲイリー・ダニエルズ。正確にはハリウッド版ではありませんが、少年ジャンプの人気マンガが洋画スタイルで実写映画化されたという点でご紹介。しかしまあ、北斗百烈拳のショボいこと。フツーに指先でトントンしているだけでしたね。ピップエッレキバンみたいなシール貼っただけの七つの傷が泣けました。でも、吹替版はしっかり神谷明が担当していたっけなあ。ちなみに、ユリア役は鷲尾いさ子。もっとヒドい韓国版や台湾版も存在するらしいので、興味ある人は探してみて下さい。 …ねっ、こんなのに比べたら、本作なんてカワイイもんでしょ?




ヤッターマン

下ネタ満載のオヤジ映画でした。 オッパイ・フトモモ・ゲロ・チンコ・キンタマ…さあ、覚悟して見よ!


昭和の人気アニメ、タイムボカンシリーズ第2弾 「ヤッターマン」 が、実写映画になってスクリーンに登場。監督は、三池崇史。脚本は、十川誠志。音楽と主題歌は、山本正之。


出演は、櫻井翔、福田沙紀、深田恭子、生瀬勝久、ケンドーコバヤシ、阿部サダヲ、岡本杏理、ゲスト出演として、小原乃梨子、たてかべ和也、笹川ひろしも登場。声の出演は、滝口順平、たかはし智秋、山寺宏一。山ちゃんはチョイ役で出演もしています。


さて、映画ですが、無邪気でお行儀の悪い作品に仕上がりました。毒は多いけど、本筋は外していません。これから思春期を迎える少年は、ワクワクドキドキしながら楽しもう。下品だけど面白い。三池監督のスゴ技を、劇場で堪能すべし。


ドクロストーンは、4個揃うと何かが起こるらしい。それを追う犯罪集団ドロンボーと、正義の味方ヤッターマンの激しい戦いは佳境に入っていた。ドクロストーンを発見した考古学者が行方不明になり、娘は父親を探して欲しいとヤッターマンに頼む。ようし、ヤッターマンに変身だ。いざ、ヤッターワン出動!


ヤッターマン1号・ガンちゃんを演じるのは、嵐の櫻井翔。「ハチミツとクローバー」 同様、存在感のない主役としてのユル演に、さらに磨きがかかりました。まあ、キャラのテキトーさだけは雰囲気に合っているような気がしますが。


ヤッターマン2号・アイちゃんを演じるのは、福田沙紀。これまた、「櫻の園」 で唯一ダメだった主役でしたなあ。うーむ、この2人の組み合わせはどうかと。でも、変な期待をしなくていいから、ある意味気が楽かと。


悪役ドロンボーの女ボス、ドロンジョを演じるのは、深田恭子。アニメではスレンダーなボディにキンキン声が魅力でしたが、深キョンドロンジョは、ムチムチボディにソフトな声。おお、これはこれでイイのではないでしょうか。コアなファンは怒り心頭かもしれませんが、俺的にはOK。入浴シーンもあるので、どうぞお見逃しなく。


手下のボヤッキーを演じるのは、生瀬勝久。おお、この組み合わせは、TVドラマ 「鬼の棲家」 で意地悪な番頭役をやった以来ですな。初々しい深キョンをイジメ抜いたオヤジが、今度は深キョンにブンブン振り回されるところが笑えます。そういえばアニメ版の 「ヤッターマン」 でも、ドロンジョとトンズラーの声は、のび太とジャイアンだったもんなあ。立場逆転って、何だか面白い。


もう1人の手下、トンズラーを演じるのは、ケンドーコバヤシ。彼にはあまり期待していなかったのですが、以外とよかった。何というか、ボヤッキーとのカラミが実に面白い。深キョンドロンボーのもとにこの2人を配置したバランスが、なかなかよろしい。このトリオは魅力的だと思います。映画を見ていて、何だかドロンボーを応援したくなっちゃいました。


特筆すべきは、考古学者阿部サダヲの娘を演じた、岡本杏理でしょう。彼女は、「砂時計」 で脇役を演じた女の子。華はないけど力強いセリフの言い回しが少し印象に残っています。本作では、彼女の何がいいかと言うと、ズバリ、フトモモです。ヒロインの露出度がゼロに近いこともあって、彼女のヒラヒラスカートはなかなか注目ポイントでした。


ドロンジョのオトナの魅力とも違う、“青い” フトモモ。さすがは三池監督。「妖怪大戦争」 のフトモモシーンも絶品でした。フトモモ星人の皆様、本作の劇中、彼女がサソリにかまれた場面をどうぞお見逃しなく。ガンちゃんが、彼女のフトモモを吸う・吸う・吸いまくる!その吸われる場面での、彼女の手の演技がエロい!ああ、たまらんシーンです。ここだけで充分、金を払うだけの価値がありました。まさに、キング・オブ・フトモモ監督と呼ぶにふさわしい。三池監督、これからも美しいフトモモを撮り続けて下さい。フトモモファンとして応援します。



本作には、数々の小ネタも登場します。竜の子プロダクションの様々なキャラも、ところどころに出ますので、画面の隅々までお楽しみ下さい。それから、ビックリドッキリメカも結構笑えますので、チビッ子が楽しめる要素もふんだんにあります。表向きは健全路線なんですが、スキマスキマに下ネタと下品なジョークがちりばめてあるって感じ。


個人的には、ちょっとコスチューム的に不満が残りました。ヤッターマンの仮面が、目もとがやたらに空いているのが気になる。これはたぶん、演じる俳優の事務所の都合で、顔がはっきりわかるようにしてくれとか言われたせいなのかもしれない。でもこれは、はっきり言ってカッコ悪い。まるで、女の下着を被っている変質者に見えてしまいそう。アイちゃんなんか、紫だもんね。何だか、永井豪の 「まぼろしパンティ」 を思い出しちゃいました。それはそれで、三池監督の変態性の自然な表れということで解釈すればよろしいかと。


本作は、一般ウケはしないかもしれませんが、ヤッターマンで育った世代はきっと理解してくれるでしょう。子供は子供の視点で、大人は大人の視点で楽しめばよろしい。彼女とデートで見に行くなら覚悟せよ。場合によっては、険悪なムードにもなりかねないけど、ツボにはまれば、見た後にセクシーな時間を過ごせる可能性もあり。まあ、野郎同士で行くのが一番盛り上がりますね、きっと。


そして、山本正之が歌う 「ヤッターマンの歌2009」。これを劇場で聞いた時は、目頭が熱くなりました。「ヤッターキング2009」 を歌うのは甲本ヒロト。そして 「天才ドロンボー」 も深キョンたちがノリノリで歌います。思わず手拍子したくなる瞬間でした。世代を超えて、この珍作を大いに楽しんじゃいましょう。




“お色気” こそは、「ヤッターマン」 の重要な魅力の1つである。正義がいて、悪者がいる。両者の火花を散らす戦いの中に、ドロンジョのあられもない姿がチラリと見えるのがいい。何事も、緊張状態が続くとヘトヘトになってしまう。張り詰めた空気は、エネルギーを著しく消耗する。緊張と弛緩のバランスがあってこそ、パワーを最大限に発揮できるというものなのだ。


我慢ばかりしていると、精神が崩壊してしまう。俺も20代の頃は、本気にやり過ぎて色々失敗したもんです。やりたいことと、やらなければならないことのバランスがうまくいかなくて、落ち込む毎日でした。だから、ヤッターマンみたいに気楽にがんばれたらなあって思ったものです。


人間は、不完全な生き物です。できることと、できないことがある。本来できるはずのことが、どうしてもうまくいかない時がある。反対に、できなかったことがいつの間にかできるようになったりする。理屈通りにはいかないところがあるように、理屈を超えた力だって確かに存在するのだ。そのパワーの源は、人によって微妙に違うもの。


俺の場合、緊張と弛緩のバランスを保つために必要な要素が、ユーモアなんです。どうせやらなけりゃならないんだったら、少しでも楽しめる要素を考える。怒りに震えている状態を鎮めるには、笑いの要素をおり混ぜる。過酷なストレスに立ち向かうには、より強力なユーモアが必要になるもの。


その大きな役割を担うのが、“下ネタジョーク” なんです。エロこそは、万人が潜在的に持っている力。まさに、生命の根源。だって、誰もが思うはずでしょう。気持ちよくなりたい、って。


いいことすると、気持ちがいい。おいしいものを食べると、気持ちがいい。温泉に入って気持ちがいい。人を楽しませて、気持ちがいい。人と喜びを共有するのって、ホントに気持ちがいい。


女が喜ぶ、と書いて “嬉しい” と読みます。男は、女を喜ばせてやりたいもの。彼女が喜ぶ姿を見て初めて、男は嬉しいと思うものなのだ。だから、1人よがりの気持ちではなく、相手を思う心がないとダメなんです。自己中心な行動は、いい結果を残さない。ギャグがウケるのには、ちゃんとした根拠があるのだ。


飲み屋の女性たちと話していると、実に勉強になります。俺の下ネタジョークは、彼女たちとの会話によって鍛えられました。やっぱりオヤジは、下ネタジョークの1つも言えないとね。


本作は、いつものことながら、会社のM先輩と2人で見に行きました。そのあとガストで2時間半くらい熱く語り、行きつけのスナックBTで延長戦。「ヤッターマンの歌」 の映像付きカラオケを、酔っ払いオヤジがいっぱいいる店内で熱唱しました。B型のYちゃん、手拍子どうもありがとう。おかげで昨夜は大いに盛り上がりました。


この世にヤッターマンがいる限り、悪は決して栄えない。キミの心にヤッターマン。つらい時こそ下ネタジョーク。気持ちイイことみんなでしよう。清く正しく美しく、エロく雄々しくイヤラしく、俺のケンダマジックが、キミのシビレステッキを刺激する!気持ちよく戦い、勝利の快感に酔いしれよう。自分の力で勝ち取った、喜びパワーでポーズを決めろ! …ヤッター、ヤッター、ヤッターマン!




【鑑賞メモ】

鑑賞日:3月14日 劇場:ワーナーマイカル県央 17:00の回 観客:約50人

会場まで少し時間があったので、近くのゲーセンに行ったら、巨大チョコをゲットしてしまいました。おお、ちょうどいい。ホワイトデーだから、飲み屋のねえちゃんのおみやげにしよう。ちなみにM先輩は、巨大サラミをゲット。…男根かい!慌てて駐車場の車に置きに行って、映画館に戻ったらもう会場してました。ああ、慌しいこと。


【上映時間とワンポイント】

1時間51分。エンドロール終了後に、ウソッぽい予告編あり。できれば、製作していただきたい。


【オススメ類似作品】


「妖怪大戦争」 (2004年角川)

監督・脚本:三池崇史、出演:神木隆之介。この映画の主役は、川姫のフトモモです。ドアップのフトモモに少年の手が触れる場面が2回。その弾力の瑞々しさは絶品。キリンビールの一番絞りを飲みながら堪能しましょう。


「漂流街 THE HARD CITY」 (2000年大映)

監督:三池崇史、原作:馳星周、出演:TEAH。小ネタ満載の粋なアクション映画。CGのラーメンと、ニワトリのマトリックスキックが爆笑でした。卓球をやる時の、及川光博の表情がスバラシイ。


「ウルトラQ」 第19話 「2020年の挑戦」 (1966年TBS放映)

監督:飯島敏宏、脚本:金城哲夫・千束北男、出演:佐原健二。誘拐怪人ケムール人登場。各地で人間が蒸発する事件が多発。本作を見ていて、これを思い出しました。 …ブァッファッファッファッフ。





ドラえもん 新のび太の宇宙開拓史

宇宙はとてつもなく広く、そして深い。 …人間の心とおんなじですね。


今月最初の映画はコレです。他に行きたい映画はいっぱいあるけれど、娘の喜ぶ顔が見たくて、連れて行ってあげました。金銭的にもキビしいので、見る作品を慎重に選ばねば。 …それって、ある意味緊張感。


監督は、腰繁男。原作は、藤子・F・不二雄の同名マンガ。脚本は、作家の真保裕一。何だか彼はすっかりドラえもん脚本家になりましたね。そして主題歌は、またしても柴崎コウ!歌も演技もドヘタだけど、やたらと仕事が来る不思議な女優。


声の出演は、水田わさび、大原めぐみ、かかずゆみ、木村昴、関智一、三石琴乃、千秋、櫻井智、佐久間レイ、大塚明夫、香里奈、アヤカ・ウィルソン、チュートリアル、若田光一。


さて、映画ですが、プラスエネルギーが充満した作品に仕上がりました。お決まりのパターンといえばそれまでですが、不安の多い世の中においては、こういう映画に救われることも大きい。何だか、安心して見られるのもいいもんですね。



のび太は、悪夢にうなされていた。宇宙船がトラブルを起こしてうんたらかんたらという、やたらとリアルな夢を見続けるが、誰に話してもまともに聞いてもらえない。しかし、ある時 “異変” が起こり、夢は現実のものになった。遠い宇宙の向こう側で、誰かが助けを求めている。一大決心をしたのび太であったが…。


声優の主要キャストについては、もう説明する必要もないでしょう。個人的には、ドラミの声がちょっとイメージダウンなんですが、まあ、今どきの子供たちにウケればいいでしょう。みなさんすっかり “ドラ声優” になりました。


今回のゲスト枠は、ヒロイン役に香里奈、悪役の手下にチュートリアルの2人、そして宇宙飛行士の若田光一。それぞれヘタですが、それもまたよし。ドラファンの懐は広いのだ。


特筆すべきは、悪役のボスを演じた大塚明夫でしょう。そう、あのブラックジャックです。いでたちは、「攻殻機動隊」 のバトーとトグサを足して2で割った感じ。トレードマークの帽子は、「戦闘メカザブングル」 のティンプを思い出します。いいねえ、おっさん。悪役といえど、味わい深いキャラでした。よかったらまた登場して下さいな。 『…よう、あん時のガキじゃねえか、また会ったな。』 って感じで。


子供には、景気不景気は関係ありません。子供は基本的に楽観主義で、楽しいことや面白いこと、そしてカッコいいことに憧れます。こんな時だからこそ、明るくなれる作品を見せてあげましょう。普段忙しくて子供の面倒を見られない親は、ぜひとも連れて行ってあげて下さい。見た後は、子供の手をしっかり握って劇場を出ましょう。


鑑賞ポイントの1つとして、変な動物たちがいっぱい登場する点にもご注目。個人的に面白かったのは、首の短いキリンがいたこと。進化論から考えると、あんなことになるんでしょうが、映画ではこんなことになりました。なるほど、こっちの方が進化論的にずっとリアルだ。そう考えると、現代のキリンはまだまだ発展途上か?…なんてことを考えてしまいました。気持ちに余裕があったら、劇場でチェックしてみて下さい。




もともと 「ドラえもん」 は、SFマンガである。自由な空想と願望が入り混じった、独特の世界。こんなこといいな、できたらいいな。そういう思いが、新しい世界を作る原動力となるのだ。今目の前に見えているものが全てじゃない。それは、決して現実逃避なんかじゃない。むしろ、現実に逃避することの方が問題だと思う。世の中も、自分自身も、絶えず変化している。むしろ、変わって当たり前。


“開拓” とは、新しい分野や進路を切り開くこと。昔を美化して未来を否定する人は、すでに人生が終わっているのかもしれない。どうせ変わるなら、面白い方向に思考した方が、未来が楽しくなる。明日という字は、明るい日と書くでしょ。混乱している世の中だからこそ、普段使わない部分を目覚めさせるチャンス。明日を変えていく力の源はプラス思考なのだ。


何もかもダメになると嘆いてばかりでは、力は決して湧いてこない。そういう人って、まるでダメになって欲しいみたいな感じがする。ノストラダムスで騒いだ連中も、まるで世界が滅びて欲しいみたいな口調だったっけなあ。どうせこうなるに決まっている、という考え方はどうも好きになれない。あきらめの感情はマイナスの力。周りから力を吸い取っていくだけのものでしかない。それが、悪循環の元凶。 


俺は、できれば明るい方に考えたい。本作のヒロインも、悪いことを誰かのせいにしてばかりではダメと言っている。暗い空気を明るい空気に変えるために、自分ができることは何か。みんなが下を向いているから、自分もそれに同調するってのも何だか寂しい。


「ドラえもん」 という作品が、長く支持されている本当の理由は何だろう?のび太がずっと同じキャラクターでいられるのは何故だろう?現実に考えて、こんな万能ロボットと一緒に住んでいたら、相当な悪ガキになっているだろうに。しかし、そういうマイナス思考を寄せ付けない魅力が、このシリーズにはある。魅力がなかったら、子供が夢中になるワケないもんね。


「ドラえもん」 は、子供の心を育てる。現実の世の中はこんなに甘くないけど、“甘さ” 自体はあった方がいい。 あった方が世の中がうまくいくし、居心地がよくなる。この作品が人気があるうちは、世の中は大丈夫だと思う。というか、そう信じたい。


“甘える” という言葉は、日本語独特の表現である。人を甘えさせる能力がある人は、人格者である。甘えるという行為は、報酬であり、ご褒美。がんばった人は、甘える資格がある。だから、甘ったれの人間が本気になったら、すごい力を発揮するもの。のび太には、そういう要素があるんじゃないかなって思うんです。


劣等感のない人間はいない。自分にダメな部分があるから、それを克服しようとしてがんばるんじゃないかな。そういう意味では、誰もがのび太的要素を持っている。だから、彼のダメっぷりを見て、他人事と思えないのかもしれない。そうだ、のび太は自分自身なのだ。


自分がダメになりそうな時は、のび太を思い出せ。あののび太だって、いざとなったらあんなにがんばれるじゃないか。てんとう虫コミックス第6巻 「さようならドラえもん」 の勇気を思い出せ。自分の力だけで戦おうとする、あの戦う男の瞳を思い出せ。のび太にできて、自分にできないはずはない。


バカにされるのを覚悟で、あえて言いましょう。ドラえもんは実在します。理由はカンタン、いた方が面白いから。そして、一人一人にふさわしいドラえもんがいる。現実の世界で必死にがんばって手にしたものは、もしかしたらドラえもんが与えてくれた道具なのかもしれない。夢をかなえるのはドラえもんの道具ではなく、それを使いこなすの自分の力。未来は、現在を生きる人の心で決まるのだ。


「ドラえもん」 は、世界中で広く読まれているし、TV放映もされている。それは、日本人の心の深さが受け入れられている証拠じゃないかって思います。笑いあり涙あり冒険あり、そして勉強になるマンガ。まさに、日本の文化である。この優れた作品を生み出した国の人間であることを、誇りに思いましょう。


「ドラえもん」 で育った子供は、心の中にのび太がいる。だからこそ、人に優しくなれる。しょうがないなあ、と思いながらも助けてやる。その代わりに、自分も助けてもらう。それでいい。日本人の長所は、そういう部分であって欲しい。お人よしで、人情に弱い。だまされても、不当に扱われても、優しい心を決して失わない。


本作を見て、心を開拓せよ。大人にはない子供の長所は、新しいものに寛容なことであると思う。新鮮な吸収力こそが、心を育てるのだ。宇宙と同様に、人の心も果てしなく広い。そこをどう開拓するかは、自分の心掛け次第。それは、年齢に関係なく、柔軟な発想によってどんどん広がるものなのだ。


何だか今回は、ドラえもんを熱く語ってしまいました。でも、それもまたいいでしょう。思うように映画が見られない今だからこそ、吸収力が研ぎ澄まされているのかもしれない。不景気だからこそ、こういう見方ができるのかもしれない。お金を払って劇場で見る限りは、妥協せずにしっかり見る。まさに、映画熱の原点としての姿勢を正される思いです。ドラえもんから学びました。ありがとう、ドラえもん。


観客席から身を乗り出して画面を見つめている娘の横顔を見ながら、連れてきてよかったと思いました。帰りの車の中で、夢中で話しまくる娘の生き生きした声。俺が子供の頃も、こんな風だったろうか。感受性の豊かな時にこそ、いいものをいっぱい吸収して欲しい。感動する心こそが、未来を切り開くのだ。ドラえもんは、いつでもそんなキミを見守っている。


全国ののび太よ、しっかりがんばれ。そして大人になったら、今度はキミがドラえもんになって、困っている多くののび太を助けてやって欲しい。のび太にはドラえもんが、ドラえもんにはのび太が必要なのだから。それでこそ、世の中はうまくいく。 …本当に大切なことは、実に単純なことなのだ。




【鑑賞メモ】

鑑賞日:3月8日 劇場:ユナイテッドシネマ新潟 12:00の回 観客:約100人

子供の賑やかな声が飛び交う、楽しい劇場でした。みんな、すくすく育ってね。


【上映時間とワンポイント】

1時間42分。ちょうどいい長さでした。エンドロール終了後に、次回作の予告あり。


【オススメ類似作品】


「風の谷のナウシカ」 (1984年徳間書店)

監督・原作・脚本:宮崎駿、声の出演:島本須美。静かに暮らしていた風の谷に、トルメキア軍が襲来。本作のコーヤコーヤ星の民が、ガルタイト鉱業に襲撃される状況と重なります。


「ウルトラセブン」 最終話 「史上最大の侵略 後編」 (1968年9月8日放映)

ウルトラシリーズ史上、名作中の名作。宇宙人であるセブンが、地球のために命をかけて戦う姿は、永遠に忘れない。彼が何故そこまで戦えたのか、アンヌ隊員と一緒に考えましょう。そして、キリヤマ隊長と一緒に拳を握りましょう。


「タイタンA.E.」 (2000年アメリカ)

監督:ドン・ブルース、声の出演:マット・デイモン。それほどすごい作品ではありませんが、開拓という意味で紹介しておきます。地球が滅びて脱出して、移民星を探すのかと思いきや、何と地球を新たにもう1個作ってしまうという展開は爆笑でした。当時最先端のCGアニメとしては、氷の小惑星を通過するシーンが見どころだったように記憶しています。




2月の反省

【2月に行かなかった映画とその理由】


「マンマ・ミーア!」

アバの歌は好きだけど、この映画はちょっとなあ。景気のいい時なら勢いで見たかもしれないけど、今の気分じゃあ、見ても盛り上がらないと思う。


「20世紀少年第2章」

これは、問答無用でパス。1作目が恐ろしく退屈だったので、もうコリゴリです。俺のよげんの書では、3作目もきっと行かないでしょう。…お前らとは遊ばねーよ。


「少年メリケンサック」

宮崎あおいがノリノリで演じているそうですが、予告編を見てシラケてしまいました。何となく…パス。


「フェイクシティ」

キアヌ・リーブスが今までのイメージをくつがえして新境地開拓…ってそういう言葉、過去にもいっぱい聞いたなあ。その割りに、未だに彼は大したイメージがないような気がしますが。何でもいいから、一度くらいちゃんとした演技をして下さいな。


「ブラッディ・バレンタイン」

バレンタインデーが血の海に!っていうネタは昔からありましたなあ。でももう3月だし、ホワイトデーが近いからお客さんは入らないと思う。しかも3Dなので、入場料は2000円…ぶっ殺したろか。


「旭山動物園物語」

余裕があったら見たかったけど、お金がないので行けません。新潟には動物園がないので、いつか娘を連れて行って、じかに見せてあげたいと思います。でも今はムリ。


「7つの贈り物」

ウィル・スミスがシリアスな演技をすると、どうもウソくさくていかん。まだ人間の中身にウソがあったりして。とりあえずこれはパス。


「ミーア・キャット」

ポール・ニューマンが晩年にがんばって作ったそうですが、題材に魅力がないのでパス。ところでこれって、全部CG?それとも本当に実在している生き物?


「余命」

せっかく松雪泰子のテンションが上がってきたと思ったら、ここでヒューマン映画ですか。何だか肩透かしって感じ。予告で99%くらいネタバレしているのも何だか感じが悪い。内容の宣告はどうか慎重に。観客によってはショックで見に来てくれないかもしれませんよ。で、夫役が椎名桔平ってのも怪しい。「銭ゲバ」 のイヤラしい父親のイメージがどうも…。DVで撲殺される映画かと勘違いしそう。やっぱりパス。



2月に見た劇場映画は、全部で9本。今年のトータルは16本になりました。もともとこの時期は、賞レースに関係ない映画がまとめて一気に公開される時でもあるので、俺みたいな男は結構忙しかったりするんです。まあ、今月はもっと減らさないと生活がヤバいので、見る映画を慎重に選びたいと思います。


つい最近、DVDプレイヤーが壊れてしまい、慌てて安いものを購入しました。我が家の経済状況では、ブルーレイだの地デジだのは論外。若い頃はオーディオに凝った時期もありましたが、今では見られればいいという程度で充分。1人暮らしの頃は気楽だったけど、家族を抱えているとなかなかキビシイもので。


飲み屋には全く行かなくなり、よくて月1回がいいところか。でも、仕方ない。2月26日は、10年目の結婚記念日でした。近所の居酒屋で家族で食事して、おいしいものをお腹いっぱい食べて終了。でもそれだけで妻は喜んでくれました。できちゃった婚だから、娘も今年で10歳になるんだなあ。俺がそれだけオヤジになったということですね。


映画に行かなければ、生活に少し潤いが出るかもしれない。でも、俺が干からびて半病人みたいになったら、働く力が弱くなる。だから妻は何にも言いません。映画を見た分だけがんばってまた働く。俺はきっと、そういう生き方しかできないんじゃないかって思います。妻よ娘よ、どうかあきらめて下さい。


そんなわけで、今月のブログが、記事がだいぶ減るかも。その分、アホなスピンオフ記事でも充実させればそれもいいかと。こんな時でもいっぱい見ている人はいると思うので、コンスタントに読みたい方は、他のブログへ行って下さい。


派遣会社に契約を切られて、家族を抱えて苦しんでいた親友 I 君が、ようやく再就職できたらしい。この場を借りておめでとうと言わせてもらうよ。よかったなあ。お前から明るいメールが届いたのは久しぶりだったよ。また一緒に映画行こうな。飲みにも行こう!


相変わらず先の見えない戦いをしている俺ですが、こんな時に見た映画こそ、いつまでも心に残るものだったりするもんなので、希望を胸に少しでも前に進みたいと思います。


暗く考えても、明るく考えても、同じ1日。読者の皆様も、どうかご無事で。では、3月もがんばります。





ストリート・ファイター レジェンド・オブ・チュンリー

スピニング・バードキック炸裂! 冬の時代に春一番! …オヤジたちよ、この映画で元気を出せ!




アーケードゲームとして1987年に登場した格闘ゲーム、いわゆる “格ゲー” の元祖 「ストリート・ファイター」 は、1991年の 「ストリートファイターⅡ」 の家庭用ソフト発売により、爆発的人気となりました。その “ストⅡ” に登場した中国系の女、春麗(チュンリー)は、これまでのゲームキャラの概念をくつがえす画期的な存在となりました。




ゲームで女性キャラといえば、お姫様であったり、主人公を応援するだけのサブキャラでしかなかった。しかし春麗は、メインキャラクターとしてプレイヤーが操作できて、美して華麗で強い。カワイコちゃん(死語)を自由自在に操り、凶悪な敵をやっつける爽快さは、たまらないものがあったことでしょう。その春麗を主人公にした実写映画が、ついにスクリーンに登場。18年の時を超えて戦い続ける、美脚ファイター・チュンリーの誕生秘話!




監督は、アンジェイ・バートコウィアク。脚本は、ジャスティン・マークス。主演は、クリスティン・クルック、エドムンド・チェン、ロビン・ショウ、ニール・マクドノー、クリス・クライン、ムーン・ブラッドグッド、マイケル・クラーク・ダンカン。




さて、映画ですが、微妙な出来ながらも、パワフルなアクション映画に仕上がりました。そりゃあ、ゲームとおんなじに作ろうったって無理な話だから、こんなもんでしょう。むしろ、アメリカ人から見たら、ストⅡはこんなイメージなんだなっていう勉強になります。すごくってほどでもないけど、それなりに面白い。




裕福な両親のもとで育った中国系の少女、春麗は幸せな生活を送っていた。しかしある夜、家に刺客が侵入し、父親が誘拐されてしまう。月日は経ち、春麗は一流のピアニストとして成功したが、母親は失意の病で死亡。1人になってしまった彼女のもとに、謎の巻物が届く。それには、行方不明の父親を探す手がかりが示されていた…。




主演のクリスティン・クルックはカナダ出身の27歳。オランダとインドネシアのハーフだそうで、なるほどちょっとアジアの血が入っていそうな雰囲気。(訂正:父親はオランダ系、母親はインドネシア出身の中国系だそうです。たえこさんのコメント参照)

細身で小柄な体型は、春麗役として悪くないと思う。モロ中国人というのも面白くないし、日本人が演じたらウソっぽくなるし、コテコテのアメリカ人でもオカシイ。ここは間を取って、ハーフな女優さんを起用するのが正解かもしれない。各国のラグランジェ・ポイントということで。




彼女は、そこそこ演技もイケると思う。アクションも申し分ないので、後は笑顔の練習をして、かわいさを磨いて欲しいですね。俺としては、敵を倒した後の 『…やったあ!』 が聞きたいところ。今回は地味な衣装だったので、次回作にはぜひアレでお願いします。




悪役のベガを演じるのは、ニール・マクドノー。目がクリッとしていて、やや童顔なので、ちょっと貫禄不足?できればあの帽子くらいは被って欲しかった。鉤爪男、バルログも登場しますが、出番が少なくてかなりマヌケなポジションだった。これもちょっともったいないなあ。うまく使えば、もっと盛り上がるのに。




唯一出番が多かったのは、バイソン役のマイケル・クラーク・ダンカン。彼は、「グリーンマイル」 でトム・ハンクスのチンコをさわった男。アタマは弱いが怪力の持ち主というキャラなので、なかなかタフです。カンフー親父も師匠も、彼にはなかなか手こずってます。本作の中では、一番オイシイキャラだったかも。いいじゃん、ガンバレ、チンコ俳優!




インターポール捜査官役のクリス・クラインと、地元の女刑事ムーン・ブラッドグッドのコンビも、少々難がありそう。「TAXi」 シリーズのパターンを狙ったのかもしれませんが、あまり噛み合っていない感じ。ここは、どちらか1人でよかったかもしれませんね。むしろ、オヤジ刑事の方が盛り上がったかも。




アンジェイ・バートコウィアク監督は、ポーランド出身の59歳。「スピード」 「スピーシーズ」 などの撮影監督を経て、ジェット・リー主演の 「ロミオ・マスト・ダイ」 で監督デビュー。セガールの 「電撃」、再びジェットと組んだ 「ブラック・ダイアモンド」 など、アクション映画を中心として活躍中。




アクション監督を務めたディオン・ラムは、香港出身の48歳。日本のTVドラマ 「ザ・ハングマン」 にドラゴン役として出演した経歴があり、「マトリックス」 ではユエン・ウーピンのチームに参加。「スパイダーマン2」 「デイジー」 などを経て、「DOOM」 でバートコウィアク監督と一緒に仕事をしたらしい。本作において、名コンビとなったのかな?








映画は、逆境において苦悩する女性を描いています。彼女の周りには、優しい人もいれば、悪い輩もいる。生きる上で大切なのは、やっぱり主体性。自分がどうしたいのか、何をすべきなのか。自分のことは自分で決める。そういう迷いのない心が、顔つきに表れてくるもの。




本作は、内容はスカスカですが、情熱を感じます。アクションとは行動であり、自分の人生を切り開くために戦う姿勢をくずさないこと。簡単に得たものはうつろいやすいけれど、苦労してがんばって手にしたものはしっかりと身に付く。その戦い方を左右するのが、主体性であると思うのです。人を動かし、世界を変える根本は、やっぱり人の心。何もかも失った瞬間から、新たな戦いが始まるのだ。




格闘する相手は、敵だけじゃない。自分の弱い心に打ち勝ってこそ、最強のワザが生まれる。自分だけのオリジナル必殺技を、自分だけのコントローラーで開発せよ。それが生きる力となり、自分を表現するアイテムとなるのだ。自分の心の中に眠っている、最強の力を目覚めさせよ!




ちなみに俺は、ゲームを全くしません。だから、ストⅡの面白さもよくわからない人間だと思います。しかしながら、俺の周りには、ゲーム好きな仲間たちがたくさんいました。熱中している彼らの様子を見ているだけで、このゲームが面白いことがよくわかります。だから専ら、やる側じゃなくて見ていた側の方でした。




何かに夢中になるのは、とてもいいことです。魅力があるからこそ、子供に人気が出る。ホントに悪い内容だったら、やっていて盛り上がるはずがない。その内容は理解できなくても、それを楽しそうに話す人の表情を見ればすぐにわかるもの。だから、ゲームが犯罪の根源なんていうとんちんかんな考えが俺はキライです。




真にゲームを愛する者であれば、そのゲームに恥じない生き方をするもんです。同時に、映画を愛する者は、映画に恥じない生き方をするもんです。ゲームや映画に迷惑をかけるような生き方をする奴は、プレイする資格はないし、見る資格がない。そのくらい情熱を注いで生きるなら、もう体の一部になっているんです。




生きる力というのは、些細なことで生まれるもの。何を失っても、絶対になくならないもの。だから、興奮したこと、感動した心というものは、一生涯の宝物。オヤジになって思うのは、感性の豊かな心がある限り、楽しむ心がある限り、人間は前に進めるんだっていうこと。だから、好きなことは一生続けましょう。それこそが、自分が生きた証しでもあるのだから。




本作は、内容はともかく、イキのいい映画です。当時ゲーム少年だった子供たちも、今ではすっかりオヤジになったことでしょう。この映画を見ることによって、くすぶっていた情熱が再び燃え上がるかもしれない。気になる人は、劇場へ急げ。 …READY,GO!








【鑑賞メモ】


鑑賞日:2月28日 劇場:T-JOY長岡 21:40の回 観客:約10人


会社のM先輩が見たいというので、付き合いました。 …あれっ、レイトショー料金じゃないの?1800円?




【上映時間とワンポイント】


1時間39分。本編上映後に、4分間のアニメが流れます。ミス・サクラが登場。




【オススメ類似作品】




「女必殺拳」 (1974年東映)


監督:山口和彦、出演:志穂美悦子。女ドラゴンといえば、やっぱりコレでしょう。ハリウッドネーム、スー・シオミの初主演作にして、出世作。ちなみにこちらの役柄は、日本と香港のハーフという設定。香港麻薬Gメンの兄が行方不明になり、彼女は単身乗り込んでいく…。俺的には、ビジンダーのお姉さんでした。パンチラハイキックは、たしか黒パンだったかなあ。




「ストリート・ファイター」 (1994年アメリカ)


監督・脚本:スティーヴン・デ・スーザ、出演:ジャン・クロード・ヴァン・ダム。内容はともかく、この映画を製作した情熱を買いましょう。我らがヴァン・ダムの役柄は、ガイル大佐。主題歌は、何とチャゲアスでした。同名タイトルの映画として、チャールズ・ブロンソン主演の作品もありますが、あれとは関係ありません。千葉真一主演の 「激突!殺人拳」 のアメリカ版タイトルもコレですが、そっちも関係ないです…でも関係ありそう?




「クエスト」 (1996年アメリカ)


監督・原案・主演:ジャン・クロード・ヴァン・ダム。ヴァン・ダムが調子に乗って撮った、格ゲー映画第2弾。スモウレスラー役で登場したのは、北尾光司でした(爆笑)。気持ちはわかるが、かなりヒドかったなあ。確か「DNA」と2本立てで見た気がする。懐かしのカミーノ古町新潟シネマ。




「クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち」 (2004年フランス)


監督:オリヴィエ・ダアン、脚本:リュック・ベッソン、出演:ジャン・レノ。ただの刑事映画ですが、中盤の格闘シーンが笑えます。ストⅡファンは必見。あの音楽も流れます。







祝・おくりびと

映画 「おくりびと」 が、日本アカデミー賞各賞と、米アカデミー外国語映画賞を受賞しました。この映画を愛する映画ファンの1人として、心よりお祝い申し上げます。


日本アカデミー賞をほぼ総ナメしてしまった時は、あまりの1作集中ぶりに、正直 “おいおい” と思いました。確かに優れた傑作だけど、他にも評価すべき映画はいっぱいあっただろ、っていう印象。俺としては、監督賞は 「クライマーズ・ハイ」 の原田監督に、助演男優賞は堤真一か堺雅人に、助演女優賞は松雪泰子に取らせてあげたいところでした。あまりにも一色だと、どうにもバランスが悪くて。


まあ、主演女優賞が広末涼子じゃなくて木村多江だったのがよかったと思います。これでヒロスエが取っちゃったら、日本アカデミーそのものの信頼性を疑ってしまうので。「ぐるりのこと」 の木村多江はイマイチだったけど、ヒロスエよりはずっといいと思うから。(俺としては、「感染」 の木村多江の演技が好きです)


日本アカデミーが 「おくりびと」 一色だったことで、本場アメリカのアカデミー賞にも期待がかかりました。俺個人としては、日本人の死生観は、アメリカ人には理解できないんじゃないかって思っていたんです。だから、「おくりびと」 はノミネートされただけでも充分。むしろ、短編アニメ賞の 「つみきのいえ」 が取ったら面白いだろうなっていう感触でした。ところが、フタを開けてみてびっくり。両作品とも受賞してしまいました。…うひゃあ、すげえ!


「つみきのいえ」 は、当然ながらまだ未見です。どうか早いとこ公開して下さい。2月23日の夜9時のNHKニュースで紹介されていた映像を見た限りでは、「パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻」 みたいな印象。絵柄のあたたかさだけで、内容が直感できるような出来栄えかと。メディア全体が 「おくりびと」 一色なので、どうかこちらの方も紹介して下さいな。 (運良く見ることが出来たら、改めて記事にしたいと思います)




「おくりびと」 という映画が、アメリカで評価されたという事実を、俺は興味深く思っています。日本人はとかく無宗教と言われ、お祭り騒ぎだけが好きな主体性のない能天気民族だと思われがちですが、そんなことはないんです。誰もが心の中に持っている共通の心。それを表現するのに成功したのが、この映画であると思うんです。それを理解できたアメリカ人の感性の素晴らしさを讃えたい。 …いいじゃん、アメリカ!


アメリカという国は、日本にとっては先進国として先輩にあたります。アメリカから受けた恩恵は計り知れないものがありますが、日本として譲れないものは絶対ある。アメリカのいいものは吸収しても、コピー国にはならない。それは当然。国家として、民族としての歴史があるから。知識としてじゃなく、DNAレベルで刻まれているものがちゃんとあるのだ。世代を超えて共感できるこの世界は、日本人だけに限らず、世界に共通する感情なのかもしれない。


映画は、面倒くさい理屈を並べたりしません。あの世に旅立つ人と、この世に残される人との絆を結ぶ役割をするだけです。その情感あふれる映像を見て、忘れていた何かを思い出して下さい。見れば、きっとわかると思います。


人は、生まれた時と死ぬ時が一番注目されるもの。幸せに生まれて、幸せに死んでいくことができれば悔いはないけれど、志半ばで、未練を残して死んでしまう人もいる。本人も辛いし、残される者も悲しい。その両者をつないであげるのが、おくりびと。


この映画は、構想から完成するまでに、15年の歳月を費やしたそうです。本木雅弘の執念を讃えましょう。その純粋な思いは、映画を見ればわかります。映画を見れば、理屈を超えた感情で理解できます。考えなくてもいいから、感じて欲しいのです。誰もが持っている、大切な心を。


この映画で “おくられびと” を演じた峰岸徹は、あの世で喜んでいることでしょう。俳優冥利に尽きると思います。あっちの世界に行ったら、岡田有紀子とデートしてあげて下さいね。


俺も、いつかは死んでしまうでしょう。その時、誰も見送ってくれなかったら、死に際にこの映画を思い出すことにします。今まで見たたくさんの映画に見送られて、生涯を閉じたい。生まれてきてよかった、そう思ってこの世を去りたいもんですね。


おくって、おくられて、人生は続いていく。日本という素晴らしい国に生まれたことを、誇りに思います。いい映画に出会うと、生きていてよかったと実感します。1人でも多くの人に、この映画を見てもらいたい。年齢に関係なく、楽しめる映画です。笑って、泣いて、しみじみと感じて下さい。そして、思い出して下さい。大切な何かを。





13日の金曜日

新作なのか、リメイクなのか、さっぱりわかりませんでした。 …これもまた “番外編”?


“13日の金曜日” といえば、キリストとマカロニが殺された日ですな。不吉なことが起こる日としてクリスチャン達が恐れた日。で、今月の13日の金曜日に合わせて新作が公開。大ヒットシリーズも、今年で30周年だそうな。そうか、30年も殺しまくってたんだなあ。


監督は、マーカス・ニスペル。製作は、マイケル・ベイ。脚本は、ダミアン・シャノン、マーク・スウィフト。


出演は、殺人鬼1人と殺される人がいっぱい。以上。…あ、これじゃダメ?だって、どうせほとんど殺されるんだから、名前もへったくれもないでしょう。


では改めてまして、出演は、ジャレッド・パダレッキ、ダニエル・パナベイカー、アマンダ・リゲッティ、アーロン・ヨー、ジョナサン・サドウスキー、デレク・ミアーズ、トラヴィス・ヴァン・ウィンクル(…おい、何だこの「タクシードライバー」と「野獣死すべし」をくっつけたような名前は!)。


さて、映画ですが、ホラー映画としては凡作に仕上がりました。しかしながら、エロ映画としては見る価値が少しあるような気がします。R15指定は、残酷描写じゃなくて、エロ描写で引っかかったんでしょう、きっと。


“クリスタル・レイク” という名前のキャンプ場では、恐ろしい伝説があった。今年も、能天気な若者たちが性懲りもなくやって来ます。 …さあ、出番ですぜ、ジェイソンの旦那!


本作のジェイソンは、袋を被って登場。これって、PART2?しかしながら、映画の途中でホッケーマスクにチェンジ。お、PART3の要素も入っている。これって、ただのリメイク総集編?考える間もなく、バッタバッタと人が斬り殺されていきます。…まあ、考えてもしょうがないか。


ジェイソンの武器は、ナタが基本。今回もバッサリやってくれます。刺すわ斬るわ投げるわ、手当たり次第に首チョンパ。サイドアイテムとして、アーチェリーも登場。おおっ、「ランボー 最後の戦場」 を意識…してないか。


今回登場する死体候補は、男は全員魅力なし。しかし、女性陣はなかなか見どころがあります。何たって、脱ぎっぷりがいい。トップレスで水上スキー、胸元にオイルをたらして男を誘惑、激しいベッドシーンなどなど、残り少ない寿命を燃焼しまくっています。ヤることヤって死ぬんだから、きっと悔いはないでしょう。(あるよ)


映画は、冒頭がやたら長い。かなり進んでから、ようやくタイトルバック。(遅せーよ) 後はひたすら殺すだけ、さあ、今回生き残る奴は誰だ?生き残ったはずが、ラストでバッサリ…なんてこともよくあるからね。まあ、運よく生き残ったとしても、次回作まで観客に顔を覚えてもらえる確率は、もっと低いでしょう。


そういうわけなので、本作は内容としては相当軽い。でも、このシリーズはそれがウリですから。あんまり考えなくていいし、途中で席を立ってもストーリーがわからなくなるような心配はご無用。だから、カップルがイチャつきながら見ても全然OK。でも、うるさくするとついでにジェイソンに殺されるかもしれないのでご注意。


映画がちょっと慌しく感じるのは、13日の金曜日公開に間に合わせようとして、焦って製作した感じもしますなあ。 『…何でもいいからさっさと撮れ!』 ってマイケル・ベイがせかす状況が目に浮かびます。それもあって、画面のノリノリ感が増したのかも…?


それから、ショック音もやたらとデカいので、結構びっくりする場面も多い。思わず 『…うわ!』 なんて声も出そうな雰囲気ですが、あんまり何回もやってると後半は 『…またかよ。』 って感じになるのでご注意。だけど、この感覚が懐かしい。特殊メイクやエアーポンプ、粘着液と血糊の世界…思春期の頃はハマりましたなあ。


ジェイソンこそは、’80年代ホラーの殺人鬼の中でも、超有名な存在。その彼が暴れてくれるだけで、ストレス解消になるオヤジは多い。まあ、中身はありませんが、つらい現実を一時忘れるくらいの効果はあるでしょう。何でもいいから、景気のいいことは大歓迎!…殺して殺して殺しまくれ!


彼のように、時代に流されず、自分のスタイルを貫くというストイックさが、観客として学ぶ点でしょう。ジェイソンには、語らずにひたすら処刑していく。ためらわない、妥協しない、ひるまない。狂気の凶器はナタ1本。男ジェイソン、今日も行く。…男は黙って、自分のやるべき事をやれ!




【鑑賞メモ】

鑑賞日:2月18日 劇場:ユナイテッドシネマ新潟 21:00の回 観客:約30人

カップルがダントツに多く、おねーちゃん2人とか3人もいました。俺は、兄と2人で行きました。


【上映時間とワンポイント】

1時間37分。冒頭で、パラマウントとニューラインシネマの社名ロゴがいつもと違うのでご注目。それから、パンフレットが製作されなかったそうなので、販売してませんでした。やっぱり相当慌てて作ったんだろ、マイケル・ベイのおっちゃん。


【オススメ類似作品】


「13日の金曜日」 シリーズ全10作

これを見ずしては、本作は語れない。だんだん後半になると、ニューユークに遠征したり、宇宙に行ったりとおバカぶりが加速しますが、彼は黙々と自分の仕事を続けます。…職人だねえ、ジェイソン。仕事のえり好みはしないんですね。番外編として 「フレディVSジェイソン」 なんてのもあったな。




ベンジャミン・バトン 数奇な人生

小さなジイさんが成長して、体がデカくなって若返って、お肌スベスベで老衰。 …ああ、忙しい細胞。


ポスターの絵柄を見ると、お互いの顔が半分ずつ写っています。これって、「感染列島」 とおんなじですね。男女の並びは逆ですが、まぎらわしいので、シネコンで見る場合は入るところを間違えないようにご注意下さい。(間違えねーよ) ブラピが日本語しゃべっていて医者役だったら、確実に間違ってます…ってだから間違えねえってば!


“ベンジャミン・バトン” は、主人公の名前。誰かにバトンタッチするわけじゃないので、勘違いしないようにご注意。予告編でストーリーの大半を思いっきりネタバレしているので、今回は少し内容に踏み込みます。見る前に情報を入れたくない人は、読まない方が賢明。…はい、警告しましたよ。


監督は、大物デビッド・フィンチャー。彼の映像は、とにかく湿気がやたら多く、ビショビショでネバネバでねちっこいイメージ。言わば “人間加湿器” と名づけたいところ。「セブン」 「ファイトクラブ」 「ゲーム」 「エイリアン3」 …ねっ、そう思いませんか?リドリー・スコット監督とも、デビッド・クローネンバーグ監督とも違う、独特の粘着性。その彼が今回挑んだ題材は、F・スコット・フィッツジェラルド原作の短編小説。


出演は、ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、タラジ・P・ヘンソン、ジュリア・オーモンド、ジェイソン・フレミング、イライアス・コーティーズ、ティルダ・スウィントン。


さて、映画ですが、品格のあるトンデモ映画に仕上がりました。恋愛映画として見ても、SF映画として見ても面白い。感動するかどうかはともかく、これはもう、笑うしかありません。これがオスカー候補になっているのが余計に笑えます。キャッチコピーは、『…人生は素晴らしい。』 (爆笑) …確かに、スバラシ過ぎます、この映画。大真面目なんだけど、部分的にオカシイ。しかも、ムダに長い(苦笑)。


今回は、パンフを購入しませんでした。だから、チラシと、記憶と、俺の心象風景だけで書きます。詳しい内容が知りたい人は、他の人のブログをご覧下さい。


ある裕福な家に生まれた赤ん坊は、老人のようにしわくちゃな皮膚を持った奇形児であった。出産直後に母親は急死。途方にくれた父親は、生まれたばかりの我が子を捨ててしまう。里親に育てられた彼は、年齢とともに変わっていく自分の姿を、次第に理解していくのであった…。


主演のブラッド・ピットは、現在45歳。ヒロインのケイト・ブランシェットは39歳。ええっ、ブラピの方が年上なんですか?失礼ながら、ケイトの方がずっとお姉さんに見えました。ははあ、ブラピが童顔だからそう見えたのかも。両者とも、違った意味で年齢不詳なところがあるので、そのあたりもキャスティングの妙かと。


ただ、ブラピの役柄は、アプローチがドヘタです。この辺だけが妙にリアルでした。だからこの映画は笑えるんです。ああ、そんなんじゃダメだって…!って感じ。美人かどうか微妙な女だけに、あんまり力が入らないのも笑える。がんばれブラピ、最強の童顔俳優を目指せ!ディカプリオを超えろ!


ケイトは、たぶんおっさん達にウケる女優じゃないかと思います。日本でいうと、寺島しのぶみたいなポジションかと。実際、どんな役柄でもチャレンジするしね。もう10年くらいして、どんな女優になっているかを見てみたい気もする。特に応援しないけど、覚えておきます。


この2人の組み合わせは、とてもバランスがいいと思う。何と言うか、うまくかみ合っている感じがするんです。童顔のブラピと、老け顔のケイト。いいじゃないですか。しかも、年齢差が逆。これはやっぱり面白い。やはり本作は、この2人のキャスティングだけで高ポイントとしたい。


出合った時は、ジイさんと少女。少女が成長して大人になると、老人は初老の男になる。青年から中年くらいは甘いひとときがあって、晩年は熟女と少年…うわー、エロいなあ。絶妙の組み合わせばっかりじゃん!しかも、いつの間にか立場が逆転してしまう緊張感もあって、これはなかなか目が離せない。尺も長いので、妄想しながら楽しみましょう。一番オイシイ組み合わせはどれか?




人は年を取ると、誰もが若返りたいって思うもの。俺はまだそんな風に思いませんが、そのうち思うようになるのかも。ゆっくりでも体が自由に動かせれば、何歳でも構わないけどね。年寄りの風格って、結構好きだから。同様に、少年には少年の、オヤジにはオヤジの魅力があるのだ。


元気なジイさんもいいけど、元気過ぎるとかえって周りが迷惑するんじゃないでしょうか。必要以上に若く見せようと必死になるのも、何だか見苦しくてイヤだ。不自然な若さって、何だかちょっとコワい。そういう意味では、年相応に見られる人はある意味幸せなのかも。


本作の主人公は、年齢とともに結局は退化していきますが、トータルすると、みんなと同じ分だけ生きている。ただ、順番が違うだけ。そういう男を愛してしまった女は、彼が若返っていく分だけ自分が老けていくのを感じなければならないという虚しさがある。そこでエゴが出てきそうなもんですが、結局キレイな部分だけでまとめたって感じ。できれば、愛憎劇が見たかったなあ。でも、オスカー候補ってなるとそれはムリか。


個人的には、主人公を女にした映画も見てみたい。「ハウルの動く城」 は、主人公のバアさんが少女になった話でしたが、声がそのままバアさんだったので撃沈でした。ケイトがバアさんで生まれて、熟女になってギャル(死語)になって、少女から幼女へ…うわー、こっちの方がヤバそう。そうか、だからこういう物語になったのか。妙に納得。やっぱりオスカー候補だから、品格がないといけないもんね。もう何も言いますまい。



しかし、成長しながら若返っていくというのは、どうもピンとこない。生まれて間もない頃は、耳が遠かったり目がよく見えなかったりするが、成長とともにはっきり見え、聞こえるようになる。曲がった腰がシャンとして、毛髪が生え、体が筋肉質になっていく…ってそれはあくまでも身体的な話。では、彼の脳はどうなっているんだろう?脳が老人の状態で生まれ、年齢とともに若返っていくとしたら、晩年はそうとう記憶力がよくなるはずでは?


脳は、手足の感覚によって生かされている側面もあるから、身体機能が充実してくれば脳も活発になってくるような気もするんですが、その辺はどうなんでしょう?専門家の意見は?認知証なんていうのも脳の症状であるはずだから、映画を見る限りでは、彼の脳だけは普通の人間とおんなじ老け方をしているように思えるんですが…。でもこれは、高齢になると幼児化する傾向もあるよってことを暗示したニュアンスなのかもしれない。


実際、自分がこんな人生だったら大変だろうなって思う。でも不思議なのは、彼の変貌ぶりを誰も変に思わないこと。母親と恋人はわかっているにしても、周囲で話題にならないのはどうしてなんだろう?みんなきっと、自分のことで精一杯なんですね。1人くらい、『…その若返りの秘密は何?』 って聞いてきてもよさそうなのにね。大学の医療研究チームの目に留まれば、こぞって研究材料になるだろうし、戦時中だったら兵力増強のための恰好な材料になりそうなのに。しかも、イケメンなのにね。実にもったいないと思うけど、それはそれで彼の人生。


平凡な人生なんて、あろうはずがない。その意味では誰もが、数奇な人生を生きているのかもしれない。それを呪うか、愛するかは自分の考え方ひとつ。人のせいにばかりしているヒマがあったら、自分のやるべき事を考えたい。そうでなくては、前に進めないから。


この映画で学ぶべきことは、人は不平等だけど、広い意味では平等であるということ。誰の心の中にも “異形のもの” は存在する。その醜い部分と真摯に向き合ってこそ、本当の意味で生きる力が生まれます。みんなと同じことを真似しようとしても、無理があるというもの。むしろ、自分にしかできないことを1つでも多く見つけた方が面白い。変わっているから、ダメってわけじゃない。人と違うから、悪いってわけじゃない。


短所だと思っていた部分は、方向を変えると途端に長所に変わる。そういう部分を磨いてこそ、社会の役に立てる人生がスタートできるのだ。“異形” こそは、“偉業” を成し遂げるためのエネルギー源なのだ。


ベンジャミンの人生は、面白いと思う。どんな人生だって、面白くできる要素がある。自分の人生は、あくまでも自分のもの。それがちゃんとわかっていれば、美しく老化していけるんじゃないでしょうか。形は変わっても、決して変わらないものがある。それが、自分というものの本来の姿。その素晴らしさこそが、人生を輝かせるのだ。





【鑑賞メモ】

2月14日 劇場:ユナイテッドシネマ新潟 13:15の回 観客:約150人

ヴァン・ダムを見終わって帰ろうとしたら、妻と娘がバレンタイン手作りチョコを製作中だったので、時間稼ぎにもう1本続けて見ることにしました。あっはっは。


【上映時間とワンポイント】

2時間47分。短編小説なのに、映画は長時間とはこれいかに。映画を見るよりも、小説読む方が早かったりして。


【オススメ類似作品】


「魔女の宅急便」 (1989年スタジオジブリ)

監督:宮崎駿、原作:角野栄子、声の出演:高山みなみ。本作を見て、真っ先に浮かんだのはこの映画です。『…あたし、魔女のキキです!』 って自己紹介する場面で、街の人は 『…あっ、そう。』 とユルい反応でした。ははあ、別に珍しくないんだ、魔女って。ベンジャミンの生まれた街にも、そういう人がいっぱいいたのかなあ?


「エンブリヨ」 (1976年アメリカ)

監督:ラルフ・ネルソン、原作:ジャック・J・トーマス、出演:ロック・ハドソン、バーバラ・カレラ。生物実験モノのSF映画。成長ホルモン剤を投与された胎児が、1ヵ月で成人女性になってしまう。このままでは老化現象を起こして死んでしまうので、彼女は健康な脳下垂体を狙って、殺人鬼になっていく…。パッケージの写真が、エロくて素敵です。


「ヤマトよ永遠に」 (1980年オフィスアカデミー)

監督・原作:松本零士、声の出演:富山敬。イスカンダル星のスターシャが産んだ娘、サーシャは、大人になるまでの成長が早かった。成人してからは、地球の人たちとおんなじだそうな。うーむ、イスカンダル星にはきっとロリコンがいないんでしょうな。でも、映画のラストで古代オジサマを守って死にました。ああ、慌ただしく数奇な人生。


「ハンガー」 (1983年イギリス)

監督:トニー・スコット、出演:カトリーヌ・ドヌーブ、デヴィッド・ボウイ。これは、ヴァンパイアの映画。デヴィッド・ボウイは血を吸わないとだんだん老けていって死んでしまいます。…死にたくなかったら、急いで口で吸え!




その男、ヴァン・ダム

アクションスター・ヴァン・ダムの男泣き鎮魂歌。 …彼は、これでようやく本物の俳優になった!


原題は、「JCVD」。そのまんま、ジャン・クロード・ヴァン・ダム。予告編のナレーションが若本規夫だったので、そのあまりの説得力に圧倒され、映画熱が沸騰。これは、見に行かねばならない1本となりました。


アクションスターの高齢化が進み、体力的につらいご時世において、彼もまた例外ではなかった。47歳という微妙な年齢で苦悩する男の生き様を見よ!


監督・脚本は、マブルク・エル・メクリ。出演:ジャン・クロード・ヴァン・ダム、フランソワ・ダミアン、ジネディーヌ・スアレム、カリム・ベルカドラ、フランソワ・ウォルフ、アンヌ・パウリスヴィック。


さて、映画ですが、これはアタリです。全然期待していなかっただけに、予想をはるかに上回る傑作でした。これは新しいスタイルだと思います。ヴァン・ダムを初めて “俳優” として見ることができました。生涯最高の演技と言っていいでしょう。ヴァン・ダムファン必見、ヴァンダムによる、ヴァン・ダムのための映画です。


アクションスターの高齢化が進み、体力的にしんどいご時世において、ジャン・クロード・ヴァン・ダムもまた例外ではなかった。ベルギー出身のアメリカンドリーム男も、すでに47歳。かつての勢いはなく、人気は低迷。ようやく出演した映画は、劇場公開されずにいきなりビデオ発売。子供の親権裁判で借金は増えるのに、収入は乏しい。まさに、八方塞がりの状態。そんなある日、彼が振込みのために訪れた郵便局において、強盗が発生。1発の銃声が、彼の運命を大きく変えるのであった…。


主演はもちろん、ジャン・クロード・ヴァン・ダム。役柄は、ジャン・クロード・ヴァン・ダム。つまり、本人を本人が演じます。私生活や彼の本音も随所に出てくるので、どこまでがフェイクで、どこからが本当なのかよくわからない。ただし、演じるヴァン・ダムの本気さだけは本物です。この映画に出演した彼の勇気と根性を讃えたい。


共演者は、クセ者がいっぱい。テキトーな警視役のフランソワ・ダミアンは、「ヘブンズ・ドア」 の三浦友和とキャラが似ている。気合いが入りすぎた堅物なおっちゃんよりも、こういう人物の方が面白い。ユルいようでいて、ちゃんと仕事をこなしていくところがよろしい。


強盗役のジネディーヌ・スアレムが爆笑でした。髪は長いが、気は短い男。わがままな割りに、大した思考ができない。いいですなあ、こういうおっさんが映画を盛り上げるんですね。手際がいいようで、適度にマヌケな犯人は、観客をハラハラさせてくれるものです。


極めつけは、ガードマン役のカリム・ベルカドラでしょう。このおっさん、最強です。気難しい強盗たちの中にあって、自分の心に忠実に行動するストイックさがたまらん。しかも、ヴァン・ダム映画オタクときたもんだ。彼の映画トークは笑えます。ジョン・ウーをコケにした言葉は名セリフと言えるでしょう。いい役者だと思います。


マブルク・エリ・メクリ監督は、フランス出身の新鋭。彼の、この映画に対する熱意が、ヴァン・ダムの心を動かしたらしい。その思いは、画面からしっかりと伝わってくると思う。いい仕事をしましたね。


この映画はどういう映画ですか、と聞かれれば、真面目な映画です、と答えます。いたって真面目なんですが、内容はマヌケで危なっかしい。ちゃんと映画として成立するのか?というような不安感が常につきまとう。その意味では、観客もハラハラしっぱなしになります。さて、強盗に囲まれた彼は、どう行動するのか?アクションスターではあるけれど、生身の彼にできることは?金に困った男が追い詰められるとどうなるのか?…さあ、モタモタしていられないぞ、世紀の瞬間を見逃すな!




男は、一生のうちに必ず “輝く瞬間” というものが訪れます。それは、自覚していない場合もあるけれど、誰かが覚えているもの。 『…あの頃のあんたが、一番カッコよかったね。』


人には、必ず何らかの “才能” というものが備わっている。それは、生まれつき決まっているものなのか、努力によって積み重ねられていくものなのかはよくわからない。だけど、確実にある。それが仕事と結びつけば幸運と言えるし、趣味と結びつけば、人生の楽しみが増すというもの。


俺がジャン・クロード・ヴァン・ダムを初めて見たのは、「サイボーグ」 「キックボクサー」 あたりだったと思う。その時の印象は、“体が軟らかい男”。必殺技は、股割り。ダンスを踊る時の腰の動きがセクシーだった。ガッチリ系の頑強筋肉男とは、一線を引く男。しなやかなハイキックは美しい。だけど、あんまり強そうじゃなかった。


ドルフ・ラングレンと共演した 「ユニバーサル・ソルジャー」 は、やっぱりこの2人は似てるなあという印象。日本のゲームを映画化した 「ストリート・ファイター」 「クエスト」 はマヌケ過ぎて爆笑。何でもやるコミカル俳優になっていった頃から、次第に彼の名前を聞かなくなっていった。


ヴァン・ダムという俳優が、そういう人生で満足していたのなら、何も言うことはない。だけど、彼の心の中で、どうしてもくすぶっているものがあった。金に困ったから本作に出演したのかもしれないけど、そういうものを超えたものが、確実にあったんじゃないか。映画を見ていると、そう思えます。


本作の中で、“シーンX” という場面があります。これは、台本にない部分の追加シーンなんですが、ヴァン・ダムのたっての希望で、彼と監督の2人だけで打ち合わせて撮ったそうです。中盤で、彼が観客に向かって語りかける場面にご注目。俺はこの瞬間、俳優としてのヴァン・ダムが誕生したと感じました。コアなファンは見逃すなかれ。




俳優として成功したからといって、自動的に幸運な人生を手に入れられるわけじゃない。リスクを背負った分だけ、苦悩も増えるのだ。辛酸をなめた分だけ、弱い者の気持ちもわかるようになるというもの。彼は言う。 『…自分は特別な人間じゃない。』 彼の苦悩が産んだセリフの1つ1つが、観客の心を打ち、男たちの胸に沁み込んでいく。


元気をなくした男たちよ、希望を見出せない戦士たちよ、彼の言葉に耳を傾けて欲しい。どん底の深さは人によって違うけれど、みんないっぱいいっぱいで何とか生きている。ヴァン・ダムの言葉は、男のくすぶっている心を刺激する。「ロッキー・ザ・ファイナル」 のスタローンの言葉以上に、俺の心は揺さぶられた。そうなんだ、よくぞ言ってくれた。地味で平凡な言葉だけど、愚痴みたいなもんだけど、今の俺にはとても力になったよ。ありがとう、ヴァン・ダム。


彼は本作で、かけがえのない体験をしたと思う。役者魂に火がつけば、もっといい俳優になれる。その気持ちを大切にして、これから大人の人生を生きて欲しい。俺も観客の1人として、今後の彼に注目したい。


人間、何がきっかけになるかわからないもんですね。世の中が暗いと、どうしても悪い方に考えてしまいがち。こういう時こそ、物事をじっくり考えてみたい。 (そのおかげでブログを出すペースが遅れてます…なんて言い訳したりして。どうも、時間貧乏なもんで。)


本作は、主演のヴァン・ダムにとっても、メクリ監督にとっても幸運な1本となりました。しかし、努力した上で掴んだんだから、立派な実績でしょう。お互いに胸を張って、次回作に挑んで下さい。お見事でした。


この映画を、どう見るか。哀しい物語としてとらえるか、コメディととらえるか、未来の希望に満ち溢れた作品ととらえるか。全ては、観客の心一つで決まる。燃え上がれ立ち上がれ甦れヴァンダム!正義の怒りをぶつけろヴァンダム、股割り戦士ヴァンダム! …さあ、キミも一緒にヴァン・ダムしよう!




【鑑賞メモ】

鑑賞日:2月14日 劇場:ユナイテッドシネマ新潟 10:30の回 観客:約10人

やっぱりおっさんが多いなあ。俺もその1人だけど。ガラガラだったので、股割りして座れますよ。


【上映時間とワンポイント】

1時間36分。こんなに短いのに、とても濃い時間を過ごせました。


【オススメ類似作品】


「ノーサレンダー」 (1985年アメリカ)

監督:コリー・ユエン、出演:カート・マッキニー。ビデオ発売時は 「シンデレラ・ボーイ」 という安いタイトルでした。ヴァン・ダムは、悪役で映画デビュー。ユエン監督は、ヴァン・ダムを踏み台にしてハリウッドで成功しました。


「ハード・ターゲット」 (1993年アメリカ)

監督:ジョン・ウー、出演:ジャン・クロード・ヴァン・ダム。西部劇風のつまんないアクションですが、ジョン・ウー監督のハリウッドデビュー作品です。彼もまたヴァン・ダムを踏み台にして、ハリウッドで成功しました。


「プレデター」 (1987年アメリカ)

監督:ジョン・マクティアナン、出演:アーノルド・シュワルツェネッガー。シュワちゃんの人気作ですが、プレデターの中身に入っていたのがヴァン・ダムだったというウワサがあります。本作のパンフ記事では、顔が映らないからイヤだといってヴァン・ダムが下りたと記述してありましたが、真相はどうなんでしょう?コアなファンなら、プレデターの動き1つでわかったりして。もし入っていたら、夢の対決になっただろうにねえ。


そういえばこの映画には、「ロッキー」 のアポロ役だったカール・ウェザースも出ていたっけなあ。あっという間にプレデターに殺されましたけど(笑)。これは、スタローンに対しての軽いジャブでしょう。色んな意味で、話題の多い映画。ヴァン・ダム、今ならシュワ知事を倒せるかもしれないぞ。プレデターの着ぐるみを着て、必殺股割りキックで襲い掛かれ!何なら、援護にロボコップをつけてやるぞ! (そして…あっさりやられる)