映画 「ACIDE / アシッド」
殺人レインドロップ、強襲! …逃げ場はあるのか?
台風10号が暴れまくり、各地で大雨の被害が出ているさなか、
世にも恐ろしい映画が公開されました。
「ACID」は、「酸」という意味と、「辛辣な、厳しい」という意味があるらしい。
(アドバンストフェイバリット英和辞典より)
フランス語だと、Eがつくのかな、と。
環境汚染か何かの理由で発生した、酸性雨を降らせる雨雲。
南米で大きな被害を出した後、フランスでも、それは始まった。
ジワジワと近づいてくる、陰鬱な雨雲怪獣…
大変だ! ケンカしている場合じゃないぞ、早く逃げろ!
上映時間100分の、フランス映画。
監督・脚本は、ジュスト・フィリッポ。
2018年に、同じタイトルの短編映画を製作したみたいですね。
「酸性雨」といえば、「ブレードランナー」「装甲騎兵ボトムズ」ですが、
この映画の雨は、生き物はもちろん、建物の屋根まで溶かしてしまう、強酸性。
白い蒸気がシュワシュワたちこめる状況におかれた人間たちは、一体どうなってしまうのか。
冒頭、暴動のシーンが延々と流れ、画面サイズがケータイになったり、スクリーンいっぱいになったり。
鎮圧に来た警官に暴行したおっさんが、実は主人公!(爆笑)
彼は逮捕され、現在、仮釈放中。足にGPSのようなバンドを巻かれている。
どうやら、怪我をした同僚(女性)の保証問題で、話し合いがつかず、暴動になった…みたい。
彼はすでに離婚していて、その同僚が、今の恋人らしい。
彼には、ひとり娘がいた。
彼女は、寄宿舎で乗馬の授業を受けていたが、父親のことで同級生たちから嫌がらせを受け、
そいつに馬乗りになって、馬糞を口に押し込む。
すげえ、ブチ切れ方が、父親とおんなじ。
穏やかに見える母親もまた、いちいち文句をたれる悪い癖があるようで、
両方の要素をダイレクトに受け継いだ娘が、物語を面倒な方向に誘導します。
怪物化したヤバい雨雲が迫る中、親子バトルもまた、一気にヒートアップ。
罵り合いながら、ひたすら逃げ続ける彼らに、感情移入している余地はない。
生きるか死ぬか、いちかばちかの、地獄の入り口へようこそ。
しかしまあ、さすがフランス、ロクな奴が出てきません。
ひとりひとりは、決して悪い人間ではなさそうだけど、
イライラがたまってしまうと、牙をむいてしまう。
ああ、よくあることだなあ、と感心してばかりはいられない。
予期せぬ事態は、突然、訪れるもの。
追いつめられて、どこまで冷静でいられるか。
俺なんか、超慌て者だから、彼らを笑えないし、見下すこともできない。
自分だったら、どうしただろう。
そういう視点で、災害に対しての行動を考えながら、彼らと一緒に逃げましょう。
「ディープインパクト」もそうだったけど、災害映画は、
人を押しのけてでも助かろうとする場面がたくさん出てくる。
愛だの友情だの、お題目のようなシロモノは、いざとなると、全部吹き飛んでしまう。
俺は、そういう景色を、たくさん見てきた。
非常事態になれば、普段優しい人も、びっくりするくらい、凶暴になる。
主人公家族たちは、血も涙もない奴らに見えるけど、
命と直結した、類いまれな行動力は、大したものである。
いつも偉そうにしている奴が、無能になったり、
大人しい者が、信じられない力を発揮したりする。
そういう、リミットが外れた、超人的な行動もまた、
ディザスタームービーの醍醐味なのだ。
雨は、水。
水は、上から下に流れる。
しかし、下からも、それはやって来る。
ジワジワと、浸食される屋根。
蒸気が立ち込める、ぬかるみ。
水道の水は、飲めない。飲んだら、死ぬ。
さあ、どうする?
どうやって、生き延びる?
考えているヒマはないぞ。
急げ!
走れ!
本能に従って、行動せよ。
…とにかく何でもいいから、生き残るべし!