映画 「ミッシング」 | 映画熱

映画 「ミッシング」

どうしてこんなことになってしまったのか、誰にもわからないまま、時間だけが過ぎていく。

 

 

 

「ミッシング」といえば、久保田利伸の名曲ですが、

 

「missing」は、「欠けている、紛失した、見あたらない、行方不明」という意味。

 

「行方不明者」は「missinng person」という表記になるらしい。

 

(アドバンストフェイバリット英和辞典より)

 

 

監督は、吉田恵補。 主演は、石原さとみ。

 

この組み合わせで、1本の映画が誕生。すげえ、これは見ないと。

 

いやいや、見ないでいられるか。 見なければ、俺はきっと、前に進めない。

 

 

 

 

幼い娘が、行方不明になってしまう。

 

母親は、必死でビラ配りをして、毎日、悲痛な思いで探し続ける。

 

警察は、あてにならない。夫とは、温度差がある。

 

ローカルTV局の取材を積極手に受けるも、なかなか情報が集まらない。

 

ネットでは、誹謗中傷で炎上の嵐。やめられないエゴサーチ…

 

疲労とイライラが募り、正気と狂気のはざまで、次第に、心が崩壊していく…

 

 

 

監督・脚本は、吉田恵補。「神は見返りを求める」を撮った男。

 

主演は、石原さとみ。 包帯少女から、看護師を経て外科医 になり、シン・ゴジラを倒した女。

 

両者が出会った可能性が高いのは、「BUNGO」かな、と容易に想像できます。

 

吉田監督は、梶井基次郎の「檸檬」を撮っていて、

 

石原さとみは、宮沢賢治の「注文の多い料理店」に出演していたので。

 

 

彼女は、創価学会を信仰しているのかな?

 

ウィキペディアの情報によると、それらしき学校を卒業しているらしいけど、

 

本人の意志なのか、親の影響なのかは、わかりません。

 

俺としてはどちらでもいいんですが、

 

宗教というものに触れた人間は、人間の見方が、確実に変わりますから。

 

 

少なくとも本作は、女優・石原さとみの、勝負作と言っていいでしょう。

 

本気度マックスの、渾身の演技を、目に焼きつけておきましょうか。

 

 

 

夫を演じるのは、ゴジラ俳優・青木崇高。 神木隆之介を後ろから殴った男。

 

不器用だけど、優しいダンナさんでした。ちくしょう、なんていい奴なんだろう。

 

 

事件を取材するローカルTV局のディレクターを演じるのは、中村倫也。

 

彼もまた、不器用な男なんですが、丁寧に繊細に、主人公家族を支えてくれています。…たぶん。

 

 

 

常軌を逸した不幸に出くわすと、人は、誰でも混乱してしまうもの。

 

それがすぐに解決しても、しばらくは、神経が疲労してしまうもの。

 

しかし、その苦しみが長く続くと、どうなってしまうのか。

 

 

極度の不安と緊張が、無限の恐怖となり、昼夜を問わず、襲い掛かってくる。

 

のしかかってくる重圧と、情け容赦のない罵倒は、精神を追い詰めていく。

 

神も仏もないものか。あるとしたら、何故、自分にこんな仕打ちをするのか。

 

 

苦悩の塊りとなった悲痛な心は、どこへ向かうのか。

 

観客は、固唾を飲んで、見守るしかないのです。

 

 

 

吉田監督の映画は、「神は見返りを求める」しか見ていないので、

 

俺は彼の作品を語れるレベルではないのかもしれませんが、

 

本作と共通するメッセージは、何かがあるような気がします。

 

 

彼は、塚本晋也監督の映画で証明技師を務めていた経歴がある、いわば、愛弟子的な存在。

 

俺の勝手なイメージですが、「やんわりと鋭い切り口」で、人の心を真正面から捉えるスタイル。

 

その、対象から目を逸らさない姿勢が、しっかりと伝わっているように感じました。

 

 

 

 

俺にも娘がいるので、もし我が子が突然いなくなったら…と思うだけで、戦慄を覚えます。

 

一緒に出掛けて、はぐれた時がありましたが、見つけるまでは、想像を絶する恐怖でした。

 

あの、数分の時間が、何時間にも感じられたものです。

 

今現在、娘は、病気で苦しんでいますが、大人に成長して、立派に働いています。

 

俺は、親としてはダメな方ですが、育ってくれてありがたいと思っております。

 

あの時、見つけることができてよかった。

 

もしあのまま、見つからなかったら、どうなっていただろう。

 

 

 

 

さがしても見つからない まいごの子

 

とんぼを追いかけて いったのかしら

 

かくtれんぼが大好き 泣き虫の甘えんぼう

 

返事して お願いだから 消えてしまった 小さな子

 

どこかしら

 

おひさまが沈むのに 帰らない

 

もどってきて お願いだから

 

 

(「となりのトトロ」挿入歌「まいご」より)

 

 

 

父親の俺でもこんなんだから、

 

母親の悲痛な気持ちは、どれほどのものだろう。

 

お腹を痛めて生んだ子が、最愛の。かけがえのないたからものが、

 

どこかで、おなかをすかせているんじゃないだろうか、

 

ひとりぼっちで泣いているんじゃないだろうか、って考えるだけで、

 

気が狂いそうになるくらい、苦しくてたまらなくて、耐えきれないはず。

 

 

 

その、無間地獄を、一緒に体感できる、教材となる貴重な映画です。

 

だから、観客も、目を背けずに、しっかりと見ましょう。

 

いなくなった娘さんのご両親と一緒に、無事を祈りましょう。

 

 

幼いお子様がいらっしゃる方は、帰った時に、しっかり抱きしめてあげて下さいね。

 

 

 

どうか、帰って来ますように。

 

帰ってくるまで、信じて待ってるからね。

 

だって、あなたの親は、わたしだから。

 

 

…わたしがあきらめない限り、あなたは、きっと生きていてくれるはずだから。