映画 「ドッグマン」
生きることは、痛みに耐え続けることである。
何だろう、この気持ち。
映画を見てからもう2日経つんですが、
いまだに、体の芯が熱い状態が続いています。
リュック・ベッソン監督・脚本最新作。いよっ、待ってました!
能登半島地震の被害で、ずっと営業を停止していた、
イオンシネマ新潟西が復活してくれたことも、二重に嬉しい。
さあ、ドッグマン。ドッグマンって一体、何でしょうね。
びっくりしますよ~ (淀川さん風)
冒頭、深夜にパトカーに停車させられた、謎の怪しい車。
運転席に乗っていたは、女装した男。しかも、メイクがぐちゃぐちゃの状態。
免許証は? と聞かれ、慌てて出て来たから、持ってこなかったわ、と。
不審に思った警官が荷台を開けると、無数のわんこがびっしり、静かに乗っていた。
映画は、警察に拘束された主人公が、取り調べを受けるのを軸に、
彼の今までの過去が描かれていくスタイル。
なぜ彼は、女装して、わんこをたくさん車に乗せて走っていたのだろう。
実は俺、この映画に、勝手に先入観を持っていました。
わんこたちを自由に操る、ゲイの物語だろう、と。
大変失礼しました。お恥ずかしい限りです。
彼は、いたってノーマルで、普通の少年と変わりなかった。
しかし、彼の家庭環境がひどかったことが、彼の人生に影を落とすことに。
特に、父親と兄が凶悪で、彼は、始終、なぶりものにされている状態であった。
ある日、ついに彼が殺されそうになった時、彼の命を救ったのは…?
本作は、絶体絶命の状態に追い込まれた者が、
這い上がって、ギリギリのところで戦い続ける姿を描いています。
彼の境遇は気の毒だけど、かわいそう、と単純に思うなかれ。
彼は、自分のできる限りの知恵と努力と勇気で、困難と外敵に立ち向かうのだ。
自分の持てる力を最大限に発揮するためには、協力者が必要。
それが、わんこたちなのです。
どうやって、彼がわんこたちと絆を結んでいくかは、映画をご覧あれ。
「落下の解剖学」にも、「枯れ葉」にも、わんこが重要な役割で登場していた。
そして本作こそは、わんこ映画の決定版。
PG12だけど、子供たちにもガンガン見せてあげたい。
特に、現役でいじめを受けている人は、この映画で魂を燃やして欲しい。
音楽はもちろん、エリック・セラ。
ベッソンの、光と音のアートな映像美を、彼の音楽が彩ります。
挿入曲の選曲がこれまた絶妙で、ビンビンにナイス。
「ゴッドファーザー愛のテーマ」が切なく流れ、
ユーリズミックスの「スウィートドリームス」は、職探しのテーマ(笑)。
そして、潜入シーンで流れる、マイルスデイビスの「SO WHAT」が圧巻。
名曲の数々が、ドラマチックな名場面とともに、全身を興奮に誘います。
映画に出てくる家族構成は、父親、母親、兄、そして主人公が弟という、4人家族。
たまたまですが、俺の家族構成と全く同じ。
で、父親が虐待の主犯で、母親は優しいけど言いなり。
兄は小心者で、弟をいじめて楽しんで、すぐに親に告げ口する卑怯者…
この構図は、俺が味わった環境と、全く同じなんですわ。
家族で一番弱い立場である自分には、発言権もなく、一方的に虐げられるだけ。
そういう桑畑少年の魂を救ったのが、映画の世界だったわけです。
(何度も同じ話しちゃってすいません)
彼には、救いがない。味方もいない。
友達もいなければ、未来の希望もない。
そんな彼に寄り添ってくれる、唯一の仲間が、わんこたちであった。
彼は、生き地獄から抜け出すことができたけど、
身体に障害が残り、車椅子の人生を送ることになります。
しかし、彼は、全く行動できない人間ではない。
そして、彼を助けてくれる、わんこたちがいる。
そしてさらに、職場で出会った仲間たちが、彼を認めてくれている。
次々と、彼に襲い掛かる、闇の無法者たち。
彼は、彼のやり方で、ひとり、またひとりと倒していく。
この生き方は、ずっとは続けられない。
そんなことは、わかっている。
ただ、今は、今だけは… 静かな時間を、少しでも長く味わっていたい。
悲痛な心の叫びが、痛ぶられ続けられた魂が、遠吠えになって、闇夜にしみわたる。
ジョーカーも、キャットウーマンも、地獄からの絶叫で、新しい自分に生まれ変わった。
我が名は、ドッグマン。
誰が呼んだか、ドッグマン。
流れ星銀のような、プロわんこ集団を率いる、キングオブ・野良わんこ。
生きることは、痛みに耐え続けること。
悪者たちをじっと睨めば、正義の傷が疼きまくる。
人には、牙がない。
だから、牙を持つ者が、彼の友となり、共に戦うのだ。
敵が来たぞ。
みんな、配置につけ。
3、2、1、OK、レッツGO。
…ウォォォォォォォォォォ~ン! (WAR)