映画 「罪と悪」
よく、話してくれた。
今年の3本目は、高良健吾主演の、男度が高そうな映画を選びました。
地震の被害で段差が痛々しい新潟バイパスを通って、ユナイテッドシネマへ。
監督は、齋藤勇起。オリジナル脚本で、堂々のデビュー。
出演は、高良健吾、石田卓也、大東俊介の3人が、主要キャスト。
同世代だから、同級生役としても、まず無理はない。
ベテラン共演陣は、椎名桔平、村上淳、佐藤浩市。すげえ豪華!
皆さん、齋藤監督だからこそ、集まってくれたんでしょうね。
舞台は、福井県の、小さな街。
冒頭、しばらくの間、中学生の少年たちの物語が続きます。
サッカー部で友達になった4人。
それぞれに、長所と短所があり、家庭の事情があり、役割があり…
ある日、そんな彼らに、忌まわしい出来事が起こる。
親友の死をきっかけに、それぞれの思いが暴走して、殺人事件になってしまう。
それから年月が経ち、彼らは大人になり、それぞれの生活を営む。
しかし、あの日の出来事は、いつまでも、心に深い傷となって残るのであった…
高良健吾は、建設業を営み、ワケありの若者を雇って、更生させている実業家。
骨格が美しい。眼光が鋭い。そして、色気がある。素晴らしい!
ヤクザの村上淳と向き合っても、一歩も引かない、堂々とした男に成長しています。
石田卓也は、父親と同じ警察官の道に進み、刑事としての人生を生きている。
大東俊介は、父親の稼業を継ぎ、農業を営んでいる。
ある事件が起き、彼らは、戦慄する。
これって、あの時と同じなんじゃないか…?
高良健吾は、「軽蔑」「ノルウェイの森」で、名前を覚えました。
「蛇にピアス」「横道世之介」「南極料理人」は、コミカルで面白かったけど、
俺的には、シリアスで寡黙な役柄の方が、カッコいいと思います。
芥川龍之介や、三島由紀夫を演じた時の、文豪の雰囲気もよかったなあ。
石田卓也は、「夜のピクニック」で初めて見た俳優。
大東俊介は、TVドラマ「雲切仁左衛門」「光る君へ」で、最近覚えたばかり。
二人とも、「リアル鬼ごっこ」で共演していましたよね。
あの映画で共演した谷村美月は、「お兄ちゃんの花火」で、高良君の妹でした。
石田君は本作でも、容疑者を追いかけて、走る走る走る!
彼はもともと陸上の選手だったらしく、走り方が若々しい。
「太陽にほえろ!」じゃないんだから、こんなに長回しせんでも笑
でもね、佐藤浩市さん世代にはウケるんじゃないかなあ、って。
で、椎名桔平は、警察のワル。うん、すっげえわかりやすい。
悪そうですねえ~ ヤクザの村上淳と同様、楽しそうである。
ここに、ワンシーンだけ、佐藤浩市が登場するんですねえ。
おお、大物感たっぷりで、余裕の風格。
「春に散る」の時もそうだったけど、役柄を楽しんでいる姿が、心地いい。
おっ そういえば、高良君の役名はハル、でしたな。(字は忘れたけど)
どうでもいい話ですが、勝矢!
くそう、うまそうにバーガー食いやがって。
映画を見た後に、マック行っちゃったじゃねえか、どうしてくれる!
(俺は、ピクルス大好きだから、君のジョークにはツッコみ入れるぜ)
とにかく、シリアスな映画だからこそ、ちょっとした場面で、笑えるんですね。
(俺、伝票とジッポライターで噴き出しちゃいました)
思春期ってのは、色々あるもんです。
才能が開花する時期でもあるけど、一歩間違えば、犯罪をしでかす危険性を秘めている。
そこが、怖いんですね。
この映画は、PG12ですが、希望する小学生には見せてあげて欲しいと思います。
俺も、小中学生の頃に、おぞましい葛藤に苦しめられた人間の一人なので。
子供は黙ってろ、と言う奴は、
子供が大人になっても、絶対、同じことを言う。
ガキは引っ込んでろ、って。
だから、どこかで、戦わなければならなくなる。
「七人の侍」で、こんな台詞があります。
『…子供はよく働くぞ。ちゃんと大人扱いしてあげればな。』
勝四郎は、泣きながら、大人のサムライになっていくんですね。
「孤狼の血レベル2」の松坂桃李と同様に、石田君の役柄を、俺は愛したい。
血気盛んな若者たちよ、この映画に学ぶべし。
俺は、生まれたこと自体が、親不孝でした。
自分が生まれた素性を呪い、諸悪の根源を排除したい衝動にかられ、
何度も何度も本気で、祖父を、父親を、兄を殺そうと思いました。
夜中に金属バットを握って、奴らの寝床を襲おうと試みたもんです。
でも… できなかった。 そして、高校を卒業して、逃げるように上京。
今、自分が結婚して、娘がいるということが、不思議に思えて仕方がありません。
生まれない方がよかった人間は、確実にいるのです。
(聖書でも、堂々と言ってるしね)
しかしながら、生まれたからには、生きねばならぬ。
数々のひどい職場を渡り歩いて、病気になったり怪我したりしたけど、
祖父や父親や兄から受けた仕打ちに比べれば、まだましだったのかも。
あの地獄よりは、この地獄の方が…
でもやっぱり、地獄は地獄。
この世の地獄は、あの世の地獄。
刺せば監獄、刺されば地獄。←竜二
つらくて、苦しくて、
神も仏もないものか、と思っていたけど、
今はこうして、つかの間の平穏な時間を過ごしております。
だから俺は、今のうちに、映画を楽しむのだ。文句あるか!
大人になるとわかるけど、悪い報告は、早い方がいい。
しかし、少年には、恥ずかしいという気持ちが、先に立ってしまう。
武士は、恥を知ることから、礼節を学ぶんだし、
女子も、恥じらいがあるからこそ、人の気持ちを理解できるレディになれるというもの。
一時の恥、という言葉がある。
くれぐれも、悪いことは早く誰かに知らせて、最善の対応を取ることが大事。
その時に、報告すべき人を間違えないように、注意しないといけないんですね。
ああ、世の中って、面倒くさいことだらけ。
映画の世界だって、単純なようだけど、深読みすれば、複雑である。
人生は、映画みたいにうまくいかない、なんてよく言うけど、
何もかもうまくいなない映画を見れば、人生の方がまし、って思えることもあるのです。
この映画は、挑戦していると思います。
くたびれたプロの大人と、ピュアで威勢のいい若造の対立は、見ていて気持ちがいい。
自分がなめた辛酸を、すすらねばならなかった泥水を、後世に残すんじゃねえ。
こんなひどいことは、自分の代で、終わりにしたい。
これが終わっても、次には、新たな悪い何かが出てくることであろう。
それは、次の世代ががんばって、なくしたらいい。
自分ができることは精一杯やる。後は、好きにしたらいい。
できるだけ、足枷を残さないように、この世を去るつもりだから。
そうやって、未来を語っていくのが、今を生きる大人の務め、ってやつじゃないのか。
俺の娘も、毎日悩みながら仕事をがんばっています。
俺は何もしてやれないけど、時折、話を聞いています。
話したい時は、自分から言ってくるから、基本、あまり構わない方がいいみたい。
石田卓也が、椎名桔平に突っかかっている場面が、俺は好きです。
きっと、このワルも、内心、うれしいんじゃないかな、って。
子供の、かけひき。
大人の、駆け引き。
まるで違うけど、根っこは同じ。
「コンバット!」のサンダース軍曹が、部下に言う台詞があります。
その部下は、自分の非を、ずっと報告できなかった。
時間が経って、やっと軍曹に、自分のせいでこうなりました、と言います。
その彼をじっと見て、サンダースはこう言うんですね。
『…よく、話してくれた。』と。
俺は、こんな上司に仕えたい、と本気で思いました。
だから、自分の部下には、こういう姿勢で接するように努力しています。
(今の俺の後輩はHSPなので、手強いけど)
知りたい、という欲望がある。
知らない方が幸せなこともあるだろうし、
触れてはいけない領域が、たしかにある。
解いてはいけない、でも、気になったまま、一生を終える。
墓場まで持っていく、秘密。
拷問されても、口を割らない男の固い意志。
生きている間は、戦いの連続。
だからこそ、戦わなくていい時間は、静かに過ごしたい。
映画で、食事したりくつろいでいる時間がやたらに出るのが、印象に残る。
この、安らぎのひとときにいる中で、男は、戦うための準備をしているのだ。
その時が来るまで。
戦いのゴングが鳴るまで。
決着をつけないといけない瞬間が来るまで。
もう少し、この休息を、味わっていたい。
逃げて逃げて、追われて逃げて、立ち止まって。
逃げるように追いかけて、追いつかなくて…
それでも、走っている間は、忘れられるから。
自分なりに、がんばってもがんばっても、ダメなことって、ある。
これを何とかしないと、先に進めないことって、確かに、ある。
よく、話してくれた。
それで、充分だ。
なかなか、勇気のいることだったろう。
もし君が、同じような状況になったら、
俺よりも、もっとうまく立ち回れるだろう。
君は、俺と違って、優秀だからな。
だから、俺みたいになるんじゃねえぞ。
…しっかり、自分の人生を生きろ。