2023年映画熱ランキング その2 邦画編 | 映画熱

2023年映画熱ランキング その2 邦画編

【邦画編】

 

 

 

1.ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー

 

 

2023年においては、この映画に出会えたことが、すこぶる大きかった。

 

新潟の映画館では、4月に1作目を上映してから、すかさず2を公開してくれたので、

 

シリーズの存在を全く知らなかった俺にとって、ラッキーなプログラムでした。

 

この、高石あかりと伊澤沙織のコンビ、最強ですね!

 

映画「ある用務員」に登場する、女子高生殺し屋のスピンオフなんですが、

 

これが、けっこう面白い。

 

脱力系で、ふだんはダラダラしているんですが、殺しの才能とセンスは、抜群。

 

その、動と静が、見事なコントラストで、こっちも楽しくなっちゃう。

 

こんなに明るい殺し屋映画は、今まで見たことがなかったような気がします。

 

お互い、自分にないスキルを持っているので、いがみ合って協力し合って、

 

グダグダなのに、ダメダメなのに、カッコいいんですなあ。

 

主題歌「じゃないんだよ」が、これまたいい曲で、

 

これを歌っているのが、新しい学校のリーダーズ。

 

パンフにオマケとしてCDが封入されていたので、早い段階で聞きまくり。

 

今では、スナックでいい年したおっさんが、この歌を歌いまくっております。

 

1もいいんですが、個人的には2の方が好み。

 

将棋の場面は、爆笑でしたわ~

 

 

 

 

2.春に散る

 

 

今まで見たボクシング映画の中で、一番面白かったように思います。

 

横浜流星は、いい俳優ですね。

 

トレーナーが佐藤浩市で、仲間に片岡鶴太郎、哀川翔がいる。

 

橋本環奈の抑えた演技も、すごくよかった。

 

何よりも、ボクシングのシーンが、臨場感があって、メチャクチャ迫力があった。

 

まさに、殴り合う男の美学。

 

これを見た9月は、ジムに通うのも力が入ったものです。(もうやめたけど)

 

 

 

3.怪物

 

 

これは、ニクい映画でした。

 

少年がかわええ。 かわいすぎる。 ええい、ちくしょう。

 

思わず、見入ってしまいました。

 

誰にも理解されない二人が、仲良くなったことで、生きている世界が輝き出す。

 

瑞々しい、子供の感受性が、汚れた世界を浄化していくようだ。

 

彼らが、生き生きと遊ぶ姿は、はかなく、美しい。

 

今を生きる大人たちが、是枝監督のような優しい目線で、子供たちを見てあげて欲しい。

 

そこに、かつて存在した、自分たちの純粋な魂を見るであろうから。

 

 

 

4.仕掛人 藤枝梅安

 

 

シブい。

 

まさに、大人の時代劇でありました。

 

前後編二部作を合わせて、1本の映画と呼んでいいでしょう。

 

梅安を演じるのは、豊川悦司。おお、NIGHTHEADの兄ちゃんが、仕掛人になった。

 

いざとなったら、サイコキネシスで倒せそうですが、ここは、鍼をしっかり使います。

 

片岡愛之助とのコンビは、なかなかよいですね。

 

ふたりで酒を酌み交わすシーンが多いから、映画を見た後は、ぬる燗で一杯やりました。

 

そして、菅野美穂のかわいいこと!

 

こんないじらしい女に惚れられたら、男は絶対、守りたくなるってもんです。

 

天海祐希は、三味線屋勇次の映画にも出ていましたねえ。今回も、ワケありの女。

 

で、椎名桔平が、深みのある演技で、観客を振り回します。

 

ああ、俺も、あの鍼で、気持ちよくあの世に送ってもらいたい。

 

 

 

5.PERFECT DAYS

 

 

年末に見たばっかりなんですが、あまりにも面白かったので、ランクイン。

 

公衆トイレの清掃員をしている役所広司が、ライトバンで、現場に向かう。

 

その時に、カセットテープを車の中で流すんです。

 

アニマルズの「朝日のあたる家」で、俺は鳥肌が立っちゃって、

 

金延幸子の「青い魚」で、ほっこりしちゃって、

 

何だかこの映画、音楽のセンスが絶妙なんですわ。

 

アナログレコードではなく、ミュージックカセット。

 

つまり、セル用に最初から録音された商品なんです。これはなつかしい。

 

俺が10代の頃は、レコードが2500円だったら、カセットは2800円くらいでした。

 

カセットは、鍼を落とさなくていいから傷の心配はないけど、

 

巻き込んだり切れたりしたら、分解して直さないといけない緊張感もあったなあ。

 

カーステに入れる時に、若いおねーちゃんが向きを間違えたのを教えるところが可笑しかった。

 

セルのカセットは、俺の手元にも何本か残っているから、今度、おそるおそる聞いてみよう。

 

ヴィム・ヴェンダース監督の繊細な演出は、今も健在ですね。

 

 

 

6.アンダーカレント

 

 

恋愛映画の魔術師、今泉力哉監督の最新作。

 

映画館で見つけたチラシが、一目でビル・エヴァンスのジャケットだとわかり、

 

もうこれは行くしかない、と心に決めました。

 

銭湯を営む女を、真木よう子がみずみずしく演じております。

 

そこへ現れる謎の青年を、永山瑛太が演じる。

 

二人とも、独特の雰囲気を持った役者なので、駆け引きがスリリングで面白い。

 

まさに、アンダーカレントのように、心の深い闇の世界へ、観客は誘われていく。

 

果たして、お互いがたどり着いたのは、どんな精神世界なんでしょう。

 

人間って、めんどうくさいけど、そこが、味わい深いというものかと。

 

 

 

 

7.658km 陽子の旅

 

 

またしても、菊地凛子がヒドい目に遭います。

 

本作では、外出できなくなった女、陽子を演じています。

 

故郷にいる父親(オダギリジョー)が、突然亡くなったという知らせを受けて、

 

叔父さん(竹原ピストル)が、車で一緒に行こう、と。

 

しかし、サービスエリアでトラブルが起きて、陽子は置き去りにされてしまう!

 

えらいこっちゃ~ 荷物も携帯も車の中。所持金は、ほんのわずか。

 

仕方なく彼女は、ヒッチハイクをしようと、知らない人に声をかける…

 

うひゃあ、その精神状態で、彼女は生き残ることができるのか?

 

ヒヤヒヤしながら、時には、ああ、危ない!と手に汗を握りながら、応援しまくりました。

 

相手に悪気がなくても、被害に遭う時がある。

 

人を見たら、泥棒と思え。うっかり気を許したら、何もかも奪われてしまうぞ。

 

生きる厳しさを学びながら、陽子は、少しずつ、前に進んでいくのです。

 

 

 

8.ケイコ 目を澄ませて

 

 

耳が聞こえない実在のボクサー、ケイコを演じるのは、岸井ゆきの。

 

彼女、相当本格的なトレーニングをしたのか、なかなかいい動きをしています。

 

彼女が生きる世界において、ボクシングは、自分を表現する大切な武器。

 

ジムのトレーナーは、三浦友和。くたびれた初老の男を、しみじみと演じています。

 

彼は、「PARFECTDAYS」でも、失意の男を演じていました。

 

「春に散る」とは、全く違うアプローチが、この映画にはある。

 

ケイコは、人との慣れ合いを好みません。

 

嫌なことは嫌だとはっきり言い、それで相手が不機嫌になっても、構わない。

 

彼女の行動を見ていると、どうしてそうなったかが、時々、垣間見える。

 

この娘は、一筋縄ではいかないぞ。だからこそ、ストイックに生きられるのかも。

 

試合で、卑怯なことをされる場面がある。

 

その時の、彼女の怒りは、ハンパない。

 

しかし、その後の、対戦相手の意外な態度を目にした彼女は、

 

何ともいえない、複雑な表情をする…

 

ここ、すごく重要なので、よく見てあげて下さい。目を澄ませて。

 

 

 

9.ほかげ

 

 

火影、と書きます。火が作り出す影、という意味。

 

塚本晋也監督が放つ、戦場三部作の最終章、だそうで。

 

戦後まもない頃、家族を失った女性がひとりで、居酒屋の跡地で、体を売って生きていた。

 

生活する、というより、何とか食いつないでいる、とりあえず生き延びている、という状況。

 

そこに、客として現れた青年、盗んだ食物を持って来る少年が出入りして、

 

色んなことが、静かに展開していく。

 

むせかえるような、暑い空気と、生き物の体臭が漂ってくるような、生々しさ。

 

息づかい、ため息、衣擦れ、暗がりを這い回るような、何ともいえない雰囲気。

 

男は、男であろうとし、女は、女であろうとする。

 

少年は、大人たちの姿を目の当たりにして、何かを学んでいく。

 

雑踏の中に消えていく彼の背中を、観客は、固唾を飲んで見送ることしかできない。

 

人間が、人間であろうとして、もがき続ける生き様を描いた、珠玉の1本。

 

 

 

10.リバー、流れないでよ

 

 

最後に紹介するのは、ヨーロッパ企画の、能天気なSF映画。

 

ある老舗旅館で中居として働く、年頃の女の子が主人公。

 

彼女はある日、時間が戻っていることに気づく。

 

あれっ、3分前に逆戻りしてる…?

 

おかしいなあ、と思いながら、しばらくすると、また、3分前に。

 

見覚えのある景色が、延々と繰り返される、異常な状況において、

 

彼女は、旅館の従業員や宿泊客と一緒に、謎を解き明かそうとする…

 

しかし、3分なんて、あっという間だから、何もできないままに、次のターンが。

 

ドタバタしながら、一歩ずつ、少しずつ、真相を解き明かしていく物語。

 

バカバカしいけど、面白い。

 

これもまた、イヤな現実を一時忘れることができる、トリップ映画と言えるでしょう。

 

だまされたと思って、このチープで不思議な世界を、覗いてみて下さい。

 

時間が、当たり前に流れるって、ありがたいことなんですね、うんうん。