U-NOTE Ⅱ 「失敗と罪悪感と、ほっこりと」
心療内科の先生と相談して、休むのは2日間だけにして、
金曜と土曜は、仕事に行きました。
その代わり、日曜と月曜の休みは、ちゃんと取るように、と。
金曜の朝は、戦々恐々…
前の会社でのトラウマがよみがえり、
『…明日から、もう来なくていいよ。』と言われるか、
「戦力外通告」とか、色んなことが頭をよぎりました。
それでも、重い体と心を引きずって、何とか、出勤。
特に、厳しい言葉は、かけられませんでした。
俺はひたすら、ご迷惑おかけしました、と言うしかありません。
金曜も、土曜も、何とか、職場にい続けるのが、精一杯。
相変わらず、失敗しています。
注意され、悔しいやら、罪悪感やら…
で、よくなかったのが、
ここ数か月ほど、休憩時間と昼休みを、まともに取っていなかったこと。
先日の日曜日なんかは、昼休みが、15分。
車でコンビニに走って、パンを2個買い、
1個をムシャムシャ食べた後、2個目を咀嚼しながら、車で走って戻る。
疲労とストレスと、失敗による罪悪感が、悪循環していく。
で、重症の豚を見落として、また失敗して、落ち込んで…
いつの間にか、そんなことを繰り返していたんですね。
これでは、力が湧いてこようはずもありません。
根性で、なにくそと無限にがんばれた若い頃とは、回復力が違います。
げっそりして、口数も少なくなり、誰とも会話をしなくなっていく…
俺の場合、こんな風に、悪化していくのです。
じわじわ、と。
休んでしまったのは、申し訳なかったのですが、
あのまま、無理して仕事していたら、もう、倒れてしまっていたでしょう。
その状態を、体が覚えていて、ブレーキをかけてくれたんだと思います。
家族も、心配してくれたので、2日間はちゃんと休み、
その後、2日間何とか勤務したことを、労ってもらって、この日月は、休みました。
で、土曜の夜に、ちょっとしたことがありました。
帰りにスーパーで買い物を頼まれたので、売り場をトボトボ歩いていると、
若いお母さんと、幼い女の子が、総菜コーナーの前にいました。
近くには、カートがあります。
俺の目指す方向がそっちなので、何気に歩いて行くと、
女の子が突然、カートに手をかけ、猛ダッシュ。
一瞬遅れて気がついたお母さんは、慌てて女の子を抑えようとします。
しかし、届かない。
女の子は、無邪気にきゃっきゃ言いながら、どんどん加速。
お母さんは、総菜を持ったまま、叫びながら走る。
このまま行くと、商品が陳列された棚に、激突してしまう。
で、女の子が突進する先に、たまたま俺がいたんですね。
豚を出荷する時の要領で、俺は、カートを反射的に抑えました。
無理矢理ガーンと止めるのではなく、やんわりと。
少しずつ減速させて、止まるか止まらないかのタイミングで、
お母さんの手が、女の子の肩に届きました。
…セーフ。
こんな時、危ないでしょ、とか、ちゃんと見てなきゃダメだよ、とか、
野暮なことは、俺は言いません。
穏やかに微笑んで、元気でいいじゃん、みたいな表情で、
ありがとうございました、と言うお母さんに軽く会釈だけして、立ち去りました。
(実際、自然に微笑むことができたかどうかは、自分ではわかりませんが)
小さな、小さな出来事でしたが、
たまたま、俺がその場所にいたことで、親子のトラブルを回避できたのは、事実です。
それだけで、
俺は、
今日、がんばって出勤してよかった、と思いました。
残業もして、この時間にここに立っていたことが、意味のあることに感じられました。
だから、土曜の夜は、少しだけ、気分が軽くなったのです。
不安も、恐怖も、重圧も、なくなりはしませんが、
それでも、俺という存在が、何かの役に立っていることを実感すると、
もう少し、がんばって生きようという力が湧いてくるものです。
自分の頭の中で、悪循環がグルグル。
自分の心の中で、罪悪感がスパイラル。
健全な思考ができる人には絶対にわからない、
想像を絶する苦しさなのです。
危うく、闇の中に引きずり込まれるところでしたが、
人に、感謝されることで、救われるのです。
そして、自分が、
とっさにそういう行為をできたことが、
まだ、俺は完全にダメにはなっていない、と思わせてくれるのです。
全く役に立たない人間など、いない。
頭ではわかっているつもりでも、
ある状況下に長く置かれると、おかしくなってしまう。
薬を飲んで、泥のように眠り、
時々起きて、静かな音楽を聴いたり、本を少し読んだり、
夜中にコンビニまで、タバコ買いに散歩したり、
バーに少しだけ、顔を出したり。
自分の気分が、少しでも和らぐように、ゆったりと、時間を過ごす。
どうせまた、明日から怒られて仕事するんだけど、
今はまだ、しばらくは、平穏な時間が過ごせるから。
俺は、強いか弱いかといえば、弱い人間です。
俺は、有能か無能かといえば、無能な部類に入る人間です。
だけど、なかなか、しぶとい。
俺の持ち味は、粘り強さ。
だけど、それにも、限界というものがあります。
この病気になって、それを、嫌というほど、味わいました。
明日、出勤できるように、今夜は、薬の量を調整します。
無様でもいいから、行って来ようと思います。
今の俺に、できること。
それがあるうちは、簡単には逃げたくありませんから。
元気が出てきたら、映画の記事を、再開します。
(今、書きかけのストックが、何本かありますので)
今の俺は、ブレーキを握ったまま、自転車をこいでいるようなもの。
もっと楽に、自由に動けるはずなのに、
失敗に対する恐怖と、罪悪感が、それを許しません。
だから、心も体も、ガッチガチ。
それなのに、女の子のカートを、やんわり、止めることができた。
実に、不思議なことです。
俺は、弱い者いじめと、八つ当たりが嫌いで、
仕事のストレスは、家庭に持ち込まない主義です。
仕事の問題は、職場で解決すべき問題だから。
上司の性格うんぬんや、指導方法うんぬんは、上司の問題だから。
俺の問題と、彼の問題は、根本が違う。
まずは、俺が自分の努力で、仕事の腕を磨いて、
「使える人材」にならなければならない。
権利を主張する前に、義務を果たせ。
努力は、実らないことも多いけど、ムダではない。
数々の失敗は、今の俺にとって、何かを教えてくれる。
明日の夜は、少しでも、いい顔をして、帰って来たい。
そのために、今日の穏やかな時間を、大切にしたい。
色々考えると、怖いけど、
逃げずに、がんばります。